第13話 魔眼、開眼!
私はジッとフランツを見た。彼は私に一体何をしていたのか。私、とっても気になります。
そんな私の熱い視線に根負けしたのか、フランツがポツリポツリと話し出した。
「実は私の目は、片方が魔眼になっているのですよ。そして私の魔眼は魔力の流れを見ることができ、その流れによって、どんな魔法を使ったのかがある程度分かるのです」
魔眼、確かにそんな設定があったわね。ゲームの中ではアイテムとしてだったけど。
魔眼を使うとモンスターの情報が開示されるのよね。そのお陰で弱点を突いたり、危険な攻撃の対処方法を考えたりすることができるのよね。
意外と便利だったのよね、アレ。私も魔眼を使えないかしら? こう、目を、グワッ! とね。あら、私にもできそうだわ。
「い、イザベラ、その目の色、どうしたの!?」
私の正面に座っていたルークが早くも私の目の変化に気がついたようである。どうやら魔眼を使うと目の色が変わるようである。フランツのオッドアイは魔眼のせいだったのか。
「え? どうしたのって、魔眼?」
私は首をひねりながら答えた。魔眼のつもりだが本当に魔眼になっているのかは分からない。ルークの隣に座るフランツも大きく目を見開いてこちらを見ている。多分、魔眼だと思う。
おおお、段々と魔眼の視界に慣れてくると、空気の中に違う色が混じって見えてきた。
これが魔力。見える、私にも魔力が見えるぞ、フランツ!
「ま、まさか、イザベラお嬢様!?」
「うーん、お兄様は水色。氷属性が得意なのね。フランツは緑色だから風属性ね」
このへんはゲームの魔法のシンボルと同じ色みたいね。赤色が火属性、黄色が土属性。あとは、白色が光属性で、黒色が闇属性ね。
でも、ゲームにはさらにその上位属性があるのよね。選ばれし者だけがなれるっていうやつよ。
「イザベラお嬢様、今すぐお止め下さい!」
「えー、何でよ。フランツも使ってるじゃない」
「イザベラ」
「ハイ」
お母様の凍える吹雪のような声が聞こえた。私は即座に魔眼を止めた。怖い。氷の美姫とか社交界では言われてるみたいだけど、私からすれば冬将軍だわ。ううん、違うわ。大魔神ね。
「イザベラ、何か不謹慎なことを考えていない?」
「滅相もございません」
まさか、思考を読まれている……だと……!? お母様は人の心を読んでいるかのように鋭い指摘をすることが多々あったが、もしかして思考を読む魔法に熟達しているのでは?
何その魔法、私も欲しいわ! それがあれば、攻略対象の好感度も丸わかり。ヒロインがどの攻略対象を攻略しようとしているのかも丸わかりなのに。
「イザベラお嬢様、一体どうやったのですか? 先天的に魔眼を持っていなければ使えないはずなのですが」
うーん、どうしよう。ここは素直に答えて、お母様のご機嫌を取っておくのが無難かも知れない。
「こう、目に魔力を集中して、グワッと」
「……そんなことで、できるはずはないのですが」
疑惑の瞳をこちらに向けてきた。失礼なヤツだ。本当なのに。
「うーん、僕にはとてもできない。イザベラはすごいね」
「そうかしら?」
ルークも魔力を目に集めているみたいだが、その目の色が変わることはなかった。
さすがは公式チートのイザベラね。何でもできちゃうわ、きっと。
「イザベラ、今日は大人しくしておくこと。良いわね?」
ノーとは言わさないとばかりに、お母様が圧をかけてきた。ヤベえ。
「い、イエスマム!」
私は敬礼をして答えた。そのキレイな敬礼を見て、お母様はため息をこぼした。
「あああ、どうしてこんな風に育ってしまったのかしら……」
し、失礼だな、お母様! これでも精一杯、悪役令嬢として頑張ったんだぞ。残念な子を見るような目でお母様に見られたことは、少なからずショックだった。イザベラショーック!
馬車がガタンと音を立てて止まった。どうやらお城に着いたようである。
公爵家の馬車には防犯のため、窓には分厚いカーテンが下げられている。そのため、外の様子は全く見えない。
外を見ることができればお城に近づいているかどうかも分かったのに。本当につまらない馬車移動だった。まあ防犯のため仕方がないのかも知れないが。
「クリスティアナ、イザベラ! よく来たね」
馬車の扉が開かれると、お父様が駆け込んで来た。名前を呼ばれなかったルークはアウトオブ眼中のようである。ちょっとかわいそう。グレなければいいけど……。
いや、ちょっとまった。お父様とルークの仲が険悪になって、ルークが闇落ちする可能性がほんのちょっぴり存在するような気がするわ。これはチャンス! 光明が見えたわ。それならば、このまま二人の関係がこじれるように動けばいいだけである。もしかして私、天才なのでは?
「あなた、お仕事はいいのかしら?」
「大丈夫だ、問題ない。すべて優秀な部下に任せてきたよ」
「あなた要らないんじゃない?」
身も蓋もない言い方である。事実かも知れないが。でもきっと、お父様にも何か役割があるのよ。例えば、失敗の責任を取って没落するとか。あらやだ、ありそう。
「そ、そんなことはないぞ。ほら、今からイザベラにお城を案内してあげよう。さあ、おいで」
私は差し出されたお父様の手を取って馬車を降りた。すぐに反対の手をルークがつかむ。
これはルークはお父様をライバル視しているな。重畳、重畳。実にイイ感じである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。