物語が面白いのはもちろんスズヤ ケイさんの作品の雰囲気が本当に好き
ひたりひたりと静かにやってくる―― 驚かせるような恐怖ではなく、ゆっくり水かさが増していくような、静かな怖さのある作品です。一話完結で読みやすく、どのエピソードも独特な物語でじわじわと迫ってきます。連載中のレビューなので続きを楽しみにしています。
ホラー作品を漁っている時にこの作品に出会い、キャッチコピーに惹かれて読んでみると、一気に心を掴まれました。ある一人の飄々とした語り部がこちらへ綴る不思議な怪異譚、都市伝説または民間伝承、思わず背筋が冷えそうな雰囲気が伝ってきます。しかし今作で注目する点は不思議を投げっぱなしにしている点です、明確な恐怖に襲われるわけではない、しかし不思議は起きている。正体が分からないもどかしさ、結局ソレは何だったのか? 読者に向けられる冷たくもあり生温くもある不気味な風、是非ともこの読後感を皆様にも体験して欲しいです。
心得るべきことがある。古い集落では、ごあいさつと禁忌事項の確認は必須だ。手土産もって、座敷にあがって、ひっそりと口伝されることばに耳を傾けよう。この作品では、そうした口伝を語り聞かせてもらう一話完結の短編が連続してつづられている。読み進めると、リンクするエピソードに気付くのも楽しい。そうして、聞き手と読み手たるあなたの感覚をもまたリンクさせ、座敷の空気と背筋を這いのぼるゾクゾク感を、どうぞご堪能あれ。
淡々と語られる奇妙で不思議な話たち。家、土地、地域……そしてインターネット。人のすむ場所にまつわる話は、すこし怖かったり、あるいはほっこりしたり。このゆったりとした語りをもっと読みたいと思わせる一作です。
もっと見る