第一章②
「
ミリアはカウンターの上で頭を
救いがあるとすれば、
もう転生してしまった後なのだから、これからもこの世界で生きていくしかない。
それならば、前世のように、目立たず、でしゃばらず、出る
ミリアのピンクブロンドとピンクの目は少々
しょせん一代限りの男爵の娘である。父親限りで爵位はなくなるし、家業と財産は弟が継ぐのだ。娘と結婚するほどの
当然令嬢教育など受けているはずもなく、貴族としての振る舞いは最低限身につけた程度。パーティやお茶会を
自分でも悲しくなるが、ミリアには貴族の女性としての
平民としての魅力も……あるのかは
こんな人間なのだから、今でこそ
「王子サマは、真実の愛を〜とでも言うんだろうけど」
ため息混じりに
実際、王太子は最後の婚約破棄イベントでそう言う。
運命の人。
そんなものは存在しない。そうでなくとも好きになるし、幸せになれるだろう。
十六歳の娘が
何よりも重要なのは、真実の愛なんてものがあろうとなかろうと、ミリアは王太子のことをこれっぽっちも
フラグを回収しまくっておいて申し訳ないが、王太子は現状、ただの
「だいたい、イケメンって苦手なんだよね……」
落差が目立つから隣に並びたくない。じっと見つめられると、ときめくよりも先に、
あえて
ミリアにとって、イケメンというステータスは大した意味を持っていなかった。
加えて、財力にも興味はない。今だってちょっと
権力なんてもっとどうでもいい。身に余る力を手に入れたところで
それよりは、
考えれば考えるほど、
いや、エドワードはミリアのことが好きなのだから、エドワードだけは幸せになれるのかもしれない。
はぁ、と小さくため息をついた時、カランとドアベルが鳴った。
入ってきたのは客ではなく、十二歳の弟、エルリックだった。ミリアと同じピンクブロンドの
「姉さん、店番代わるよ。父さんが呼んでる」
「父さんが?」
理由には見当がついた。
「姉さん」
エルリックが近づいてきて、ミリアの両手を取った。
「昨日は全然話せなかったけど、学園での生活はどうだった? 困っていることはない? 一年早く生まれていたら僕も
「大丈夫。昨日ぐっすり
「僕が代わってあげたい」
エルリックはぎゅっと
なんていい子なのだろうか。こんなにまっすぐ育ってくれてお姉ちゃんは
感激したミリアはエルリックを
これから大きくなってごつくなって
「ありがとう。お姉ちゃん、
「無理しないで」
そっと背中にエルリックの手が回り、きゅっと力がこもった。
髪の色はミリアと同じだが、ふわふわとしたくせ毛のミリアと違い、エルリックはさらさらストレートだ。
その
「行ってくるよ」
「気をつけてね」
手を振り合って店から出る。
「帰ってきたばっかりなのに、人使い
店から
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