第一章 状況は最悪です
第一章①
冬休み初日の夜に実家に帰ってきたミリアは、翌日、家業の店の一つで店番をしていた。使える物は
奥まった所にあるこの店は新人教育用の
「なんでこんなことになったんだろう」
客がいないのをいいことに、ミリアはカウンターに
日本人。三十一歳。女性。
そこそこの
若干引きこもり気味ではありつつも、ごくごく
それが何の因果か、
死んだ時の
そのため、生まれ変わったのだという実感はないのだが、今世の幼い
それに、明らかに前世の自分が
独りの方が気楽だとか、引きこもっている方が好きだとか、料理が苦手だとか、読書が好きだとか、身分制度への
そして何よりも、前世でプレイした乙女ゲームの記憶の
前世のミリアは乙女ゲームに親しんでいたわけではない。
悪役令嬢もののライトノベルは数多く読んでいたが、乙女ゲームを実際にプレイしたのは、この世界が
悪役
彼女は自分のコレクションの中から、初心者向けの、難易度の低いものを選んでくれた。
さらに「ヒロインも攻略対象も死なないから安心して」と言われた。中にはストーカー化した攻略対象に滅多
乙女ゲーム『白薔薇を君へ』はよくある貴族の学園ものだ。
ヒロインは
攻略対象は、王太子、
王太子ルートは王道中の王道だ。
ヒロインの貴族らしからぬ
この王太子ルートが
……のだが、自力で攻略することがどうしてもできず、結局攻略サイトに
その後は隠しキャラも攻略できるようになるのだが、逆ハールート攻略で満足したため、「乙女ゲームは向いていなかった」というコメントと共に、さっさと友人に
その記憶は──自覚していないながらも──ミリアに受け継がれていたのだろう。
学園で過ごした二年半、王太子ルートの全てのイベントを、攻略情報通りの
というか、残りの半年のイベントは、階段から突き落とされるのと、卒業パーティくらいしかない。多少ミスってエドワードの好感度を下げても、
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