30話 拓馬たろうとコラボ!

 お母さんこと、九津々海ちゃんとのコラボが終わり数日が経った現在、同期や先輩方からのチャットは黙秘権を行使既読スルーしていた。

 何故なら、聞いてくることが―――


イズモ:ねえねえ、使ったのかな!?

アリア:ほらほらほら、お姉さんに教えて

メメ:誰にも言わないので私には教えてください

かかえ:わたしは?


 などと個別のチャットで送ってくるから返事なんて出来ないよ!

 イズモやアリア、メメは……うん……あったりなかったりするけど、かかえ先輩などは人気VTuberなので同人誌やファンアートが描かれており、その……黙秘しとく。


 それ以外の出来事だと、同期達も先輩方とコラボを行っていた。

 花咲メメは2期生である黒神フェン先輩とゲームコラボで対決。

 メメは、ようやく買えたswi〇chで人気のレーシングゲームをフェン先輩と遊び、始めは苦戦して最下位を取りフェン先輩が先輩風を吹かせながらレクチャーをし、最終的には上手くなったメメちゃんに分からせられたまけた


フェン『モォオオオオ!なんで私より上手くなっているのよ!』

メメ『フェン先輩がぁ、可愛らしい牛さんになってしまいました。私が上手になれたのもぉ、フェン先輩のおかげです。良かったらまたぁ、遊んでくれませんか?』

フェン『ふっ、フン!メメがそこまで言うなら仕方ないわね。また私の華麗なるテクニックを見せてあげるわ!』


 と交流を深めていた。


 アリアも1期生の霧江きりこ先輩と歌コラボをしており、大きな反響を呼んだ。

 きりこ先輩も歌が上手で、その2人がオフコラボで行った歌枠。

 ハモリや生放送ならではの合いの手など、聞いているだけで楽しい気持ちになる枠だった。


 もちろん、イズモも負けず劣らずのコラボをしていた。

 1期生の九坂かかえ先輩、塔道あきり先輩、2期生の執仕ベル先輩、夢現ミルマール先輩、犬崎チロ先輩と大人数コラボを行った。

 コラボ内容は、Vワールドてぇてぇクイズ!という題名でVワールドのライバーに関するクイズ大会。

 

イズモ『第1問!3期生のシロネが初めて言った下着の色は何?』


 イズモのお題に対して、回答者達が答えを書き始めて行き、一斉にオープンするという流れ。なぜか僕のお題が1番多かったけど、何でだろうね?


 全員被らないように日程を組んでおり、ついに僕の2度目の番がやって来た。

 コラボの告知ツイートをした時は、予想以上に


振上シロネ@Vワールド3期生 @shirone_huruue 1時間前

 『コラボ告知』

 解禁コラボ2回目は、大先輩である拓馬たろう先輩と雑談コラボをします!

 雑談枠を予定してるので、良かったら質問をマシュマロに投げてください。


 @192  ↺1102  ♡1450



九坂かかえ@シロネちゃんとコラボしたい! @kakae_kokozaka 1時間前

Replying to @shirone_huruue

 ねえねえねえねえねえねえねえ私ともコラボしよう!

 というか先にコラボするたろうが許せない!オコだよオコ!


 @82  ↺820  ♡901



拓馬たろう@俺は無実だ @tarou_takuma 1時間前

Replying to @kakae_kokozaka

 まってくれ、俺は悪くない無実だ!


 @299  ↺920  ♡998



 僕が告知ツイートを行うと、Vワールドの面々やリスナーから拓馬先輩ギルティみたいなリプが届いた。

 そして気が付けば告知ツイートなのにプチバズりを起こし、リツイート5千いいね8千まで伸びていき(炎)たろう(炎)がトレンド3位に。

 これぞ拓馬先輩のVワールドを有名にした伝統芸。まさか自分がそれに関われるなんてちょっと嬉しいよね。Twitterの名前に@で告知などをするのが一般的だが、弄りネタに乗っかって来るとは流石としか言えない。


「僕もコラボが面白くなるように頑張るぞ!」


 先輩の勇姿を見て、僕はライバーの1人として決意を新たにした。




『《振上シロネ/Vワールド3期生》先輩と初コラボ!《拓馬たろう》』

30,971人が待機中  ↑2725  ↓29


「うわぁ……凄い人が待ってる……」


 本番前の軽い打ち合わせをする前に待機所を覗いたら過去最大の人数が待機していた。

 低評価も多く、これは男女コラボなので致し方ない。

 詳しくは分からないが、アンチやいたずらによる低評価は付くものだが、男性ライバーなら女性ファンが、女性ライバーなら男性ファンが過剰に反応して押す時があったりするとか。

 それでも今までが凄く少なく、今回もVTuber全体で見たら少ない方だ。

 初めての通話で緊張しているのを紛らわせようと思って覗いてみたけど、あまり効果なかった。むしろ余計に緊張してきたよ!


 ピョコン!


「ミャア!?」


 唐突になる通知音。

 慌てて確認すると拓馬先輩からチャット。


たろう:通話大丈夫か?

シロネ:だいじょうぶです!


 先輩を待たせてしまったと焦りすぐさま返信。

 すると程なくして通話が掛かってきた。


たろう『もしもし、振上ふるうえか?」


「ひゃい!……あう」


 緊張のあまり噛んじゃった!

 色々やらかしているけど、やっぱり恥ずかしい。


たろう『まあなんだ、先輩相手で緊張するかと思うが、同じVワールドの仲間として気楽に接してくれ』


「あっありがとうございます。さっ、さすが拓馬先輩です……」


 リスナーやVTuberから燃やされても、それをネタとして受け止めて昇華させてきた強者つわもの。余裕や懐の深さが垣間見える。


たろう『なぜだろう。すごい勘違いをされている気がする……まあそれは置いといて、振上はなんで俺を指名したんだ?』


「……そのぉ……Vワールドで唯一の男ライバーで大変なのに、その中でもみんなの笑顔の為に頑張っている姿が逞しくて凄いって尊敬しているんです。……あと女性ライバーの先輩方は更に緊張しちゃって…………」


たろう『嬉しいけど、絶対に後半が本音だろ!?』


「ミャア!?そそそそそそそんなことにゃいですよ……」


たろう『はぁ……そんなことだろうとは思っていた。とりあえず、今日はよろしく頼む振上。あと俺の事はたろうでいいぞ』


「ええ!?」


 確かに1期生や2期生の方々はたろう、たろう先輩と呼んでいる。

 こちらから急に名前で呼ぶのは馴れ馴れしすぎると思い苗字呼びさせて貰っていた。


「じゃっじゃあ、たったろう先輩で……」


 まさか先輩方と同じように下の名前で呼ぶことになるなんて。

 会話して間もないけど、ちょっと仲良くなれた感あっていいよね。


「僕だけじゃあ不公平なので、たろう先輩もシロネって読んでください」


たろう『……確かにそうだな。シロネ、よろしく頼む。あと、そろそろ時間じゃないか?』


「あっ、ほんとだ。それじゃあ開始しますね」


コメント:おっ始まった!

コメント:こんミャア!(フライング)

コメント:はじまった!

【¥38,888 (炎)たろう(炎)】

コメント:初手で赤スパで燃やされてて草

コメント:燃やすのはえーよ


「ミャッ!そんな高額なスパチャ芸しなくていいからね!?」


コメント:悲鳴たすかる

コメント:悲鳴たすかる

コメント:悲鳴助かる

【¥1,000 悲鳴代】

【¥388 助かる】

コメント:やっぱり悲鳴がなきゃ始まらない!

【¥5,000 息子の治療代】

コメント:息子にもよぅ効く

コメント:↑それ以上はやめるんだ!


たろう『お前ら、あまり下ネタをこの枠で出すんじゃないぞ』


「あっ……たろう先輩……出ちゃった……」


 本当なら僕が挨拶して、それからお呼びして会話に入ってもらう流れだったけれど、我慢が出来なかったようだ。


たろう『シロネ!その言い方ワザとか!?』


コメント:は?

コメント:出ちゃった(意味深

コメント:たろう先輩?

コメント:シロネって名前で呼び捨て?

コメント:いつからだ?

コメント:名前で呼び合ってたな・・・?

コメント:いったいナニを出したんですかねぇ?


たろう『シロ友たち、落ち着くんだ。これには深い意味はないし、決してやましいことはない!』


コメント:ほの・・・

コメント:バチバチバチッ

コメント:ステンバーイ


たろう『お前ら早速燃やそうとするな!?』


「はい、という事で今回コラボ解禁から2回目のお相手はVワールド1期生の拓馬たろう先輩にお越しいただきました」


たろう『今その流れだったか!?』


「事前に募集していたマシュマロを読んで行きたいと思います」


たろう『おいいいいい!?』


「あれ……違いました?ごめんなさい……」


 たろう先輩の結構必死な叫び声が響く。

 もしかして、何か間違えちゃったかな……?


コメント:たろう、シロネちゃんを悲しませるとは

コメント:これはギルティ

コメント:(炎)


たろう『すまないシロネ!これはツッコミだからそこまで気にするな。むしろ扱いになれた感じだったぞ!』


「ほんとですか?一応今までのたろう先輩に対する対応を、九坂先輩とかのアーカイブでおさらいしてきたんですよ!」


たろう『諸悪の根源は、やっぱりあいつらか!』


九坂かかえ✓:なんだと!シロネちゃんと先にコラボするなんて(炎)たろう(炎)


たろう『ちょっおまっ!?』


コメント:(炎)たろう(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

コメント:まってました!(炎)たろう(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

コメント:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】


「ミ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!?」


 かかえ先輩から始まり、一気に流れ始める赤スパチャ。

 こっこれは、たろう先輩のところで流れるスパチャ芸の

 燃え盛る炎のごとく真っ赤に染め上がるチャット欄。そして中のチャットには(炎)たろう(炎)の文字で統一。何かしらでたろう先輩が燃えた際に流れるようになった。

 

 でも、なにか燃えるようなこと……あったかな?

 イズモやアリアやメメみたいな女性ライバー相手なら発言などで燃やされるのは分かるけど、僕相手ではないと思うんだよね。たぶん、たろう先輩のコラボという事で盛り上がっているのかな。


たろう『不思議そうに顔を傾げてる……もしや天然……比較的まともな相手だと安心していたが……判断を誤ったか……?』


「あるぇ?」


コメント:天然じゃなかったら下着の色とか答えないでしょ

コメント:ある意味天然では

コメント:何をいまさら

コメント:あるぇ可愛い

コメント:可愛いから許した

コメント:たろうは許されない

コメント:(炎)たろう(炎)


たろう『……よし、この流れはいつもの事だから次いこう。マシュマロ読み!』


「分かりました。お互いの所に来た今日のコラボに関するマシュマロを読んで行くよ!1つ目はコレ」


『(炎)(炎)(炎)(炎)(炎)

 (炎)(炎)(炎)(炎)(炎)

 (炎)(炎)たろう(炎)(炎)

 (炎)(炎)(炎)(炎)(炎)

 (炎)(炎)(炎)(炎)(炎)』


「似たようなのが、3桁程来てました」


たろう『焼きクソマロ過ぎでは!?』


「でも、マシュマロじゃなくて焼けるのはたろう先輩なんですよね。焼きマシュマロじゃなくて、焼きたろう?」


たろう『無駄にゴロ良いな!』


【¥10,000 焼きたろう1つください】


たろう『焼いている本人が買うのか……それも高いな』


「今日だけでこんなにスパチャが……たろう先輩、これは後ほどお渡しします……」


 このを行ったのは、たろう先輩のリスナーだから、それを頂くのは何だか申し訳ない。


たろう『それは大丈夫だ。投げたヤツらも分かっていてスパチャしているだろうからそのままでいいんだぞ』


コメント:せやで

コメント:シロネちゃんいい子

コメント:いいこ

コメント:ただしエチチ猫娘


「エチチでもないし猫娘でもないが!?」


たろう『おっ、丁度いい。こっちにはこんなのが届いてたぞ』


『こんミャア!

 シロ友なのですが、未だに自分を猫だと認めずに語尾にニャアと付けてくれません。先輩として教育をお願いします!』


たろう『このマシュマロに似たようなのが50以上来てたな』


「ミャアアア!来過ぎでは!?あと僕は猫じゃないです!」


 シロ友のみんな送り過ぎぃぃぃいい!

 

たろう『悲鳴が猫っぽいから諦めてもろて』


「たろう先輩にも裏切られた!?」


コメント:はよ語尾にニャアをつけるんだ

コメント:はよはよ

コメント:猫と自覚して

【シロ友有識者¥20,000 今月の教育費】

コメント:もう既に猫

【シロネ悲鳴中毒者 ¥10,000 語尾をつけるんだニャア】

コメント:↑お前が付けるのか

コメント:草

コメント:教育されたシロ友ニキいて草


「ミャ!?きょ、教育費高ひぃ……」


たろう『少しぐらいならいいんじゃないか?リスナーも求めてるようだし』


 言ったら負けな気がするけど、先輩にまで後押しされたらVTuberとして言わないとダメな気がする。でも負けた気がする!

 ならこっちで―――


「うぅぅぅ……みっみんな、これでいいかミャア……?ほんとモノ好きさんミャア」


コメント:かわいい

コメント:かわいい

コメント:くぁわよ

コメント:これを待ってた

コメント:助かる

コメント:たろうGJ

【$500.00 Oh…:)】

コメント:たろう、今回は燃やさないでおこう

【九坂かかえ¥1,000 たろうよくやった!】

コメント:切抜き待ったな

【世闇イズモ¥3,000 偶にやって!!!】

コメント:海外ニキも昇天

コメント:かかえちゃんwww

コメント:イズモちゃんまでw

コメント:ついに雌猫墜ち


「だっだれが雌猫墜ちじゃい!もうお終い!」


たろう『確かにこれは可愛いな。これからもニャアを付けてみたらどうだ?』


「たろう先輩まで!?つっ次のマシュマロ読みましゅ!」


『こんミャア 本日配信のお供(パンツ)は何色ですか?』


たろう『俺は黒のボクサーパンツだぁあああ!シロネは答えなくていいぞ!』


「え……?」


たろう『俺だけが言うからシロネは言わなくていいぞ。むしろ言わないでくれ』


コメント:なぜ止める

コメント:助からない

コメント:助からない

コメント:たろうリスナーは助かる

コメント:火種を感じたか

コメント:直接聞いてたら燃やされてたな


「でも、僕はよく答えてるから今更な気が?」


たろう『確かにそうなんだが、ここに男である俺が居る時に応えるのはマズイというか……な?』


 確かに、僕も女性の赤裸々な話を聞かされたら気恥ずかしいというか、気まずい思いをすると思う。


「でも、たろう先輩は気になりません?」


たろう『そのキラーパスはやめろぉぉぉおお!?』


コメント:渾身のキラーパスw

コメント:どっちに応えても燃えるw

コメント:漢たろう、さぁどっち!


たろう『ちくしょーーーどう転んでもアウトなやつ!男で気にならないヤツなんているか!?』


「ですよね!ちなみに今日は水色のトランクスです」


たろう『なっなぜ今日に限って?』


「たろう先輩相手ならそこまで気張らなくてもいいかなって……やっぱりショーツの方が良かったですか?」


たろう『……いや、どちらでもアリだが、ショーツの方がって何言わせてるんだ!?』


「らしいですよたろう先輩のリスナーさんたち。次、たろう先輩とやる時は穿いて来た方が良いのかな?」


たろう『誰も穿いてこいとは言ってないぞ!?』


「でも穿いてきたら?」


たろう『うれし……って言わせるなよ!!!』


コメント:草

コメント:たろう・・・

コメント:気持ちは分かる

コメント:何気なく答えてるの笑うわ

コメント:さすがVワールド

コメント:もうどっちがセクハラなのか分かんねーな

コメント:とりあえず男のほうがギルティ

コメント:なるほど

コメント:なる

コメント:だよな


たろう『待て待て待てぇえええい!今のは無罪、むーーざーーいーーだぁーーー!』


九坂かかえ✓:(炎)たろう(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

世闇イズモ✓:(炎)たろう先輩(炎)

音町アリア✓:(炎)たろう先輩(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

花咲メメ✓:(炎)たろう先輩(炎)

霧江きりこ✓:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

コメント:(炎)たろう(炎)

黒神フェン✓:(炎)たろう(炎)

塔道あきり✓:(炎)たろう(炎)

執仕ベル✓:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

コメント:(炎)たろう(炎)

コメント:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

犬崎チロ✓:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】

夢現ミルマール✓:(炎)たろう(炎)

【¥10,000 (炎)たろう(炎)】


 無罪を主張するたろう先輩に対して、みんなが(炎)たろう(炎)ギルティを叩きつけた。


たろう『クソォ!もういっその事、焼き尽くせぇええええ!!!』


 ヤケクソになったたろう先輩の発言をきっかけに、更に赤スパ炎上が加速して注目を浴びるのであった。

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