33話 コラボに向けて
あの通話が終わってから更に数日後、僕はコラボに向けて準備をしていた。
相手は誰か? もちろん同期3人。
使ったかどうかの問いかけに関しては謝られたし、友人同士の悪ふざけっぽくて少し楽しかったから、そこまで気にしていない。確かに恥ずかしかったけど、恥ずかしかったけど、恥ずかしかったけど!
むしろ僕が加減が分からず、ガン無視してしまったので反省。前世を含めて、VTuberになるまでボッチだったので、僕からアクションを起こすというのは至難の業で、実は嬉しかったりして……えへへへ。
3人の強引とも思えるアプローチは、小学校の時の
振上シロネ@Vワールド3期生 @shirone_huruue 10分前
今度大好きな同期3人とコラボします!
@194 ↺1002 ♡2999
音町アリア@Vワールド3期生 @aria_otomati 9分前
Replying to @shirone_huruue
私も大好きだよ!
@57 ↺609 ♡986
世闇イズモ@Vワールド3期生 @izumo_yoyami 8分前
Replying to @shirone_huruue
アリアちゃんに負けたけど超超超大好きだよぉぉぉ!!!!!(チュッチュッチュ
@72 ↺430 ♡871
音町アリア@Vワールド3期生 @aria_otomati 9分前
Replying to @shirone_huruue @izumo_yoyami
負け惜しみはいけない
@28 ↺289 ♡329
花咲メメ@Vワールド3期生 @meme_hanashaki 8分前
Replying to @shirone_huruue
なぜか争っている人達がいますけど、気にしなくていいですからね。
私も大好きですよ♡
コラボ前に買い物へ行きましょう!
@109 ↺890 ♡1207
振上シロネ@Vワールド3期生 @shirone_huruue 5分前
Replying to @aria_otomati @izumo_yoyami @meme_hanashaki
僕の方がもっともっと大好きだよ!
@49 ↺592 ♡871
再び、こうやって気兼ねなく接することが出来て嬉しい。
それにしても、何気ない軽い告知なのにすごい反響で驚く。リプを覗いてみると、僕たち3期生の不仲説が出てたりして、心配させていたようだ。不仲ではないけど、内容が内容なだけに説明が出来ないので大丈夫ということをアピールしていこうと思う。
九坂かかえ@シロネちゃんとコラボしたい! @kakae_kokozaka 1分前
Replying to @shirone_huruue
私とのコラボはまだ???????
「ミ゛ャ゛ヤ゛!?」
まだソレつけてたの!?
Vワールド関係の人からリプが来たから確認してみれば、かかえ先輩から。
というかいつまで狙われているのだろう……って、そりゃあコラボするまでだよね。
「うぅぅぅぅ、九坂先輩とコラボかぁ……」
九坂先輩のことが、とても嫌という訳ではない。むしろ尊敬しているし、好きなライバーさんだ。
ならなぜ、コラボを断っているのか。それは、ただ単純に緊張しすぎてまともにコラボできる気がしないからだ。
「何話したら良いのか分からないし、変な事言って嫌われたら嫌だし、緊張のあまり失言しないか不安で一杯になるよぉ……」
要は面識の無い相手にどう接したらいいのか分からない、という理由もあるし、
僕はグルグルする頭で、どうしたらいいのだろうと画面を見詰めた。
世闇イズモside
私は今、同期のアリアとメメでディスコ通話をしていた。
内容は、次回やる3期生コラボに関して。
「この間の事もあるし、日ごろの感謝も込めて何かプレゼントしたいよねぇ」
アリア『そうだねぇーーーといっても何が良いのか』
メメ『悩む時間も含めてぇ、今回は直ぐにコラボしないで期間あけましたからね』
メメの言う通り、今回は突発でも早急でもない長めに期間を開けてコラボ予定を組んだ。むしろ今までが強引過ぎという……。
3期生ミーティングが終わった後も、シロネとは連絡を取り合って今までの強引なアプローチは自分達がシロネと仲良くなりたい一心だったことを伝えたら、むしろそれぐらいが丁度よかったよありがとう、なんて言葉を貰ってしまった。
私たちの為に切抜き動画を投稿したり、サムネを描いてくれたりと、とても感謝してもし足りないでいる。というか、シロネ良い子過ぎない?
そんな優しい白猫ちゃんに対して、私たちは何か恩返しが出来ないかと、頭を悩ませていた。
「やっぱり、ライバーならではの物が良いよね……」
モヤッとした方向性だけは決まっており、具体的な内容にたどり着けない。
そんなところに、ポツリとメメが質問を投げかけた。
メメ『そういえばぁ、このままいけば私たちも10万人に届きそうですけどぉ、新衣装に関して何か考えてますか?』
「新衣装かぁー。まだ先だから考えてないよ」
他の企業は分からないが、YouTubeチャンネルの登録者数10万人を突破すると、Vワールドの親会社であるワンダースペースより、無料で1つの新衣装を用意して貰える。それ以降は実費で用意しなければならないが、ありがたい話だ。
アリア『という事は、シロネの所には既に話が行ってるのかな?』
「どうだろう。Vワールドで見たら私たちの上昇ペースは速いし、シロネは歴代の中で最速だからね。運営も予想外で対応しきれてないかも」
メメ『新衣装ってぇ、どれぐらいで出来るんでしょう?』
そんなメメの問いに答えられる者は此処には居ない。しかし、答えられる者と連絡は取れる。
「ちょっとマネ子さんに聞いてみる!」
早速ディスコで個人チャットを送ると、直ぐに返事が返ってきた。
「はや!? もう返って来たよ……なになに、最長で1ヵ月程と考えて貰えれば大丈夫です。ただし、割増料金で早めに仕上げることもできます……だってさ」
その後にも料金に関して書かれており、1を聞けば2、3とその後に質問されるであろう事を事前に応えてくれている。マネ子さん、ぐう優秀!
「ねえねえ、どうせなら私たちからシロネちゃんに新衣装をプレゼントしない?」
メメ『つまりはぁ、運営からとは別で、折半で新衣装をプレゼントすると』
「オウイェス!」
アリア『いいねぇ、それ! でも、今から頼んで間に合うの?』
「ちょっと待ってね……うん、割増料金なら行けるって! あと、分割支払いも大丈夫だってさ……もしかしてバレてる?」
メメ『マネ子さん凄いですねぇ……』
アリア『これが敏腕マネージャーというヤツ……!?』
「まっ、まあマネ子さんの優秀さは置いといて、シロネちゃんの新衣装がどんなのが良いか考えよう!」
アリア『ハイハイハイ! アイドル衣装が良いと思う』
メメ『私はぁ、カジュアルな普段着っぽいのがいいです』
「どれも捨てがたい! でも私としては―――――」
と、シロネに新衣装をプレゼントするべく、私たちは夜通しで話し合いを行った。
くぅぅぅぅ、着せたい衣装が多すぐるぅ……!
マネ子side
「ふふ……ほんと仲が良いって素晴らしいですね……3期生てぇてぇ」
私、
「やっぱり同期の絆って……良いですね…………フゥ」
それを間近で感じる為に、この業務に就いたといっても過言ではない。
この会社に勤めている大多数がVTuberが大好きでこの職に就いている。なので、このマネージャーという立ち位置に就きたい者は多く、新規ライバーが入る際には過酷な争奪戦となる。今回は運良く私が勝ちとれたが、前回、前々回は悔し涙を飲んだことは忘れられない思い出である。
「でも、今1番推しているライバーは私の担当である3期生全員ですけどね」
現在ノリに乗っているといっても過言ではない勢いで登録者数を伸ばしている。
このまま行けば、15万人突破して3D配信も夢ではない。でもその前に
「……振上さんはそろそろなんですが、本人から連絡がないですね。一応事前に説明しておいたのですが」
ライバーになる際の説明で、10万人、15万人突破した際に行われる事は説明してあるのだけれど、もしかして忘れている可能性が……?
まだ10万人突破していないとは言え、準備は早いに越したことはない。
「私たちからしても、予想以上の伸びですからねぇ……本人が忘れている可能性はありますか……1度聞いてみる必要がありそうですね」
再びディスコードを開き、振上さん宛てに個人チャット―――所謂、個チャを送る。すると数分後、返信が来た。
マネ子:お疲れ様です。もうそろそろ10万人突破ですが、新衣装はどうなさいますか?
シロネ:忘れてましたごめんなさい!
「ふふふっ、画面の前で驚いて慌てているのが想像できます」
「楽しそうですね、津田さん」
「ん?」
画面に向かい合っていると、後ろの方から声を掛けられたので振り向いた。
そこには先輩の
「沖田さん、こんな遅くまでお疲れ様です」
「それは津田さんも同じでしょ。ほら、お疲れ様」
そう言って、沖田さんはカップのカフェオレを手渡してきた。
湯気と共に独特の甘い香りが漂ってくる。
「ここでカフェオレを入れてくるなんて、流石ですね」
カフェオレは大好きだけれど、コーヒーが飲めない所為で偶に勘違いされてコーヒーを頂いてしまう時がある。その時は、頑張って飲むけど……とても辛い。
「これぐらい覚えてられないと1期生と2期生のマネージャーなんて出来ないわよ」
「ふふふ、確かにそうですね」
ライバーとは良くも悪くも一癖二癖もある人が多い。しかし、だからこそ輝ける。
猪突猛進で色々と迂闊な発言が多い1期生だと九坂かかえを筆頭に、2期生のクソザコ黒神フェンやヤンデレ圧な犬崎チロ、喋るセンシティブ夢現ミルマールなどの面々が
「それで、今もっともノリに乗っている3期生のマネージャー
などと冗談交じりで尋ねて来た。
大方の予想は付いているだろうに、心配して声を掛けてくる辺り頼れる先輩だ。
「ウチの振上さんが10万人突破に伴う新衣装の発注や案件など、進めないといけないことがあるので」
「
「……そういう沖田さんだって、同じじゃないですか」
自分が担当するライバーを愛して推さないマネージャーなんて居るのだろうか? 否、居るはずがない(真顔
ついこの間の休日には、2人で夜遅くまで
「そんなの当たり前じゃない! というか、いつになったら
「……んーーー」
沖田さんの言うアレとは、ウチの振上シロネに対する九坂かかえからのコラボ依頼の件。一部例外を除き、基本スタンスとして強制はしないので本人が許可しない限り無理なのだ。
「むしろ、良くたろうさんとコラボしたわよね」
「本人曰く、恥ずかしさが比較的無い相手だから、だそうです」
「ほぉーーーん……なぁーーーるほど」
意味深に頷く彼女に、私も内心で苦笑した。
「まあ、今回は
「お手柔らかにお願いしますね」
「私より、あの子に言って頂戴」
いつの間にか振上さんにとって重要なことが決定し、私は沖田さんと雑談をしながら、準備を進めていくのであった。
当日はとても濃厚なシロネニウムが放出されそうだ。
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