14話 変化
あれから次の日。
ピョコン!
「ミャッ!……驚いたぁ……えっと、マネ子さんから……?」
配信用のサムネを作っていたら、マネ子さんからチャットが飛んできた。
こちらから連絡したのは初配信や記念枠の相談ぐらいで、向こうから調子を伺う連絡などが偶にくる程度。
ついこの間連絡を取ったばかりだから、なにかの業務連絡かな?
マネ子:コラボのお誘いが沢山来ております。
マネ子:よろしければお話をしながらどうするか決めたいので、ご都合がよろしければ今からでも通話行けますか?
「えっ?ええっ、えええええぇぇええええええ!たったたた沢山ってどういう事!!!!!」
書いてある内容に驚愕。
わっ訳が分からないよ……とっとりあえず返信しなきゃ。
シロネ:はい、だいじょうぶでs
「あぁ……手が震えて誤字で送っちゃったよ…………」
マネ子:それでは今から通話を掛けますね
トゥルルルルルルルル
「もっもしもし……」
マネ子『もしもし、お疲れ様です。津田です』
「はっはい、お疲れ様です。あの、名前は良いんですか?」
マネ子『今は私とシロネさんしか居ませんので。流石に配信上で呼んだりするときはマネ子でお願いします』
「わっ分かりました!」
あぁぁぁぁ緊張するううう!
今までチャットでのやり取りで、通話は初打ち合わせ以来。それも初めての2人っきり。
大丈夫って送っちゃったけど、全然大丈夫じゃなかったよ!!!
同期達と話をしたりしてコミュ障がマシになったかと思ったけど、このコミュ障はお風呂場のカビ並に取れないらしい。やっぱり年季が違いますよ、年季が!
「………………ゴクリッ」
何から話せば良いのかな。
同期との会話を参考にしようと思ったけど、全部向こうからアクションがあったから全然参考にならない!
マネ子『とりあえずは会話が出来そうで良かったです。チャットでは何度かお伺いはしましたが、VTuber活動はどうですか?困り事などありましたら相談に乗りますよ』
「とっ特には……さっ最近だと、平日の午後4時なのに予想以上に人が多かったり、スっスパチャで同期とリスナーから攻め立てられるぐらいしかないので、今の所……」
マネ子『なにか不思議な単語が混じっていたような気もしますが、大丈夫なのでしたら良かったです。それではチャットの件でお話をさせていただきますね』
そう言って説明を受けたのは以下の通り。
Vワールド内と外部からのコラボのお誘いが、どちらも企業側に来ている。
どうやら、僕がかかえ先輩の猛烈アタックを拒否していたのを観ていたようで、第三者を交えて様子を見ているようだ。
僕自身がTwitterのダイレクトメッセージを解放していなかったりするので、外部の人は企業に連絡を取るしか方法がない。
Vワールドの先輩方は、直接声を掛けると逃げられそうなので運営に相談を持ち掛けている現状のようだ。
マネ子『内部だと、かかえさんを筆頭に2期生からもご相談を受けています。外部だと、あなたの推しである九津々海さんを含め数人からお問い合わせがあります』
「うぅぅぅ……なっなんで、こんなに……」
マネ子『小動物的で反応も良い。それも注目度も高いのでコラボ相手として持って来いなのでしょう。ちなみに同期のイズモさん達からも、どうしたら誘い易いかご相談を受けております』
「ミャア!?まさかの所から……」
既にコラボしてるのに!!!
一体何回コラボさせる気なんだ…………。
とりあえず九津々海ちゃんは、もう仕方がないとして―――――
「くっ九津々海ちゃん以外拒否で……」
マネ子『あら、全員じゃないんですね。なぜ彼女だけ?』
「そっその、言質……じゃなくて先約で、既にやることになっていて……」
ここでやらなかったり、1番目じゃなかったらスネられそうだからね……。
マネ子『いつのまに……意外な交友関係があるのですね』
「はっはい……僕も意外でした………」
なんせ初期から推していたライバーが母親なんて、予想外以外のなにものでもない。
マネ子『本人が意外ってどういう事なんですかね。とりあえず分かりました。九津々海さんへ了承のお返事を出しておきます』
「おっお願いします」
マネ子『あと、同じVワールド所属の人とはコラボしてもらいますから、そのつもりで』
「ミッミャアアアアアアアアア!?」
まさかの裏切り行為!
この世は神も仏も居ないのか……がっくし。
振り返り出来なかった配信から数日、ちょっとした好奇心から
何それ怖い……。よって配信はお休み!
代わりに同期や先輩の生放送に入り浸っていた。
『《花咲メメ/Vワールド》つよつよ侍に私はなる《SEKIOU》』
メメ『うんしょ、ここを、こうしてぇ、あっ……やられちゃった』
コメント:負けちゃったか
コメント:ここまで来たのに惜しい
コメント:俺なら切れ散らかすわ
コメント:よく切れないな
メメ『それじゃあ、もう1回ぃ、行きますか♪』
コメント:そしてこの笑顔である
コメント:ヒェ
コメント:良い笑顔
コメント:もう5時間経ってるのに全然衰えない
コメント:今日も耐久か
SEKIOUという難しく鬼畜ゲーとして名高い人気のゲーム。
結構難易度が高く、その難しさに怒るユーザーも多い中、メメは楽しそうに終始ニッコニコでボス戦をリトライし続けている。
キャラと声が可愛らしいのにやっているゲームが高難易度で、そのギャップが受けている。
メメ『この攻撃は、こうしてぇ、ここで、こうでぇ、あっ必殺ゲージ溜まったから一気に削れば……いけた!いけましたよぉ、リスナーさん』
コメント:88888
コメント:ようやく!
コメント:おめでとう!
コメント:おめ!
コメント:おめおめ
振上シロネ✓:おめでとう!
コメント:おめ
コメント:シロネちゃんいたのかw
コメント:シロネちゃんw
コメント:よう観とる
コメント:草
メメ『んん?あれぇ、シロネちゃん居たんですか?もっと早くコメントしてくれたら良かったのに』
つい嬉しくてコメントしちゃった。
これは仕方がないよね、うん。推しが頑張ってたら応援してあげるのは当たり前だからね!
メメ『それで次のコラボぉ、いつにしますか?』
コメント:お誘い草
コメント:次の獲物『シロネ』
コメント:ヒェ
コメント:ヒェ
コメント:ヒェ
振上シロネ✓:ヒエェ・・・・・・
コメント:シロネちゃん強く生きて
コメント:がんば
コメント:がんばれ♡がんばれ♡
よし、ここは
メメ『あれぇ、コメントがないですね。逃げられちゃいました』
コメント:逃げられたw
コメント:捕食される前に逃げれて良かった
メメ『別にぃ、食べませんよ~……美味しそうだけど』
コメント:ヒェェ
コメント:美味しそうw
コメント:シロネちゃん逃げてw
僕は放送後、面白そうな部分の切抜き、字幕や効果音など付けた動画をTwitterに投稿した。主に僕を捕食云々の辺りを。
そしたら意外と伸びてプチバズり。
僕は嬉しくなり更に同期達の切抜き動画の投稿を始めた。
『《音町アリア/Vワールド》たまに歌ったり雑談したり《雑談枠/歌枠》』
アリア『~~~~~♪アハハハ、アカペラだけどこの曲は歌うと気持ち良いよねぇー』
リスナーからリクエストを聞きながら、著作権などでオケを流すのが難しい曲などアカペラで歌いあげている。
歌っている姿はほんとカッコ良くて、話し出すと可愛らしい。ほんとスパチャ投げさせて欲しい!
コメント:88888888
コメント:888
コメント:8888888
振上シロネ✓:88888888
コメント:88888888
コメント:888888
コメント:8888888
コメント:あれシロネちゃん居る
コメント:888888
コメント:シロネちゃんいるw
アリア『えっ!どこどこどこぉ?……いた!シロネやっほーーー!』
コメント:ほんと嬉しそう
コメント:仲良し
コメント:てぇてぇ
コメント:またオフコラボして
アリア『あっいいね!またオフコラボしようしよう、ねえ何時やる?』
振上シロネ✓:来世で
コメント:草
コメント:来世w
コメント:草
コメント:草草草
コメント:草
アリア『なんで!……もうこれだからコミュ障猫は。これは強制凸で決行するしかないね』
振上シロネ✓:ひぇ
コメント:www
コメント:いいぞぉ~
コメント:ガンガンいこうぜ!
コメント:これは逃げるな
アリア『シロネには後でLINE送ってコラボを取り付けたいと思います。シロネは私の事大好きだからいけるいける』
コメント:自信満々で草
コメント:まあ推しですしお寿司
コメント:これが推した弱み
なんでみんな僕がコメントする度にコラボを持ち掛けてくるの?(震え
僕はそそくさと
最初の目的である、視聴者として見た時の面白場面とカッコ良かったところを切り抜いた動画を投稿した。
『《世闇イズモ/Vワールド》コッコッココココ私はニワトリ《いたずらニワトリがやって来た!》』
イズモ『コッココココ~~~♪あっこの椅子動かせるぞ、えいえい♪アハハハハおじさん転んじゃった!』
コメント:いたずら悪魔
コメント:これにはおじさんもおこ
コメント:最近のニワトリは力あるな
イズモ『グワッグワッグワ~♪グワッグワッグワ~♪』
コメント:それはアヒルw
コメント:最近のニワトリはそう鳴くのか
コメント:↑そんなわけ・・・ある?
コメント:マジ?
コメント:草
コメント:リスナーニキ困惑しすぎぃぃいい!
イズモ『え、知らないの?魔界のニワトリはグワッグワッとも鳴くんだよ』
コメント:流石魔界
コメント:平然と嘘を付く
コメント:流石悪魔娘
ノリノリで楽しそうにゲームをプレイする姿は、花咲メメとは違う魅力がある。
ユニークなトークとゲームが好きっていうのが伝わってくる姿勢は観ていて飽きない。
なにより良い声でハイテンションなゲーム実況って、観ているこっちも楽しくなってくる。
イズモ『おっ白い猫がおるやんけ!にゃーにゃーにゃーん、あっ近づいたらシロネちゃんみたく逃げちゃった』
コメント:猫助かる
コメント:にゃー可愛い
コメント:ゲーム内でも逃げるシロネw
コメント:どこでもシロネちゃんは逃げる
イズモ『あ~あ、またシロネちゃんとコラボしたいな。最近誘っても断られちゃうし、嫌われたかな……』
振上シロネ✓:嫌ってないよ!
ハッ……!?
気が付けば、イズモの言葉にだれよりも早くチャットを打ち込んでた……もしやこれは悪魔娘の
イズモ『ああああああああ!シロネちゃんだッ!!!みんな囲め囲めーーーーッ!』
そして誰よりも早く僕のコメントに反応してきた。
コメント:同期の放送には必ずいるのかな?
コメント:こっちにも猫がおるやんけ!
コメント:捕獲だ!
コメント:逮捕だ!
振上シロネ✓:!?
コメント:ジリジリ行くんだ!
コメント:カバディカバディカバディカバディカバディ
コメント:1人違う事してて草
イズモ『シロネちゃん好きだああああああああ!』
「ミ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛!?」
えっえっえぇっええぇぇエぇぇえエエエエ!?
告白?まさかの告白なの!?
イズモ『シロネ!シロネ!シロネ!シロネぇぇえええうわぁあああああ!個人ボイスとっても可愛かったよ!まるで目の前にシロネが居る様に思えて素晴らしかった!甘えん坊な一面や健気なところも良かった!隣に居たら抱きしめてギュウギュウしてナデナデしたいお!猫耳をコリコリしてうなじをクンカクンカしたいお!大好きって言われた時は私もって返事しちゃったお!ぎゃあああああああ!なんで目の前にシロネが居ないの!?ボイスのシロネは現実じゃない?にゃあああああああああああああん!ちくしょーーー!現実なんてやめてやる!あれ、目の前にシロネたんが目の間にいる!私に語り掛けてくれている!やったーーーー!』
コメント:某構文っぽくて草
コメント:これはガチ恋勢ですわ
コメント:これはシロネキマッてますわ
コメント:もう草
コメント:ただのオタクやんけ!
コメント:オタク悪魔
コメント:シロネちゃんが構ってくれないから壊れたな
なっなんだ、ただのルイス
もう……すっごくドキドキしちゃったじゃないか……イズモのばか。
とりあえず、ココを切り抜いて投稿しとこ。
世闇イズモside
「ふぅ……あぶなかった。勢い余って告白しちゃったけど、どうにか誤魔化せたかな……」
配信後、私は独りで呟く。
最近通話も出来ず、チャットのみでやり取りしていて寂しさを感じていた所に、あの個人ボイス。
まるで私に語り掛けてくれているようでドキッとさせられて、大好きって言われた瞬間、私は堕ちた……もう完全に堕とされたんだよね。
私にとっては、もう愛の告白その物で、あの日以降シロネちゃんの事を考えない日は無かった。いや、その前からだけど。
でも、それ以上に考える時間は増えたのは確か。
だから、今日私の放送に来てコメントしてくれたことで、吐き出せなかった想いが口から出ちゃって、途中から冗談っぽくボイスの感想を言って誤魔化したけど。
「誤魔化せた…………よね?」
分からない。確かめたいけど、今は恥ずかしくて出来そうにない。
「ぬあああああああああああああん!!!!!イテッ」
私は羞恥に悶えて、椅子の上から転げ落ちた。
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