第15話 許嫁と校外学習 班決め編
「そんなわけで、校外学習の班を決めたいと思いま〜す!!」
「っしゃー!」
クラスの男子たちは、四月末にある校外学習を、この上なく楽しみにしている。
なぜなら……
「この校外学習で、絶対お近づきになってみせる!」
そう、このクラスには、高校三大美女と知られている二人がいるのだ。
男子たちの奪い合いが始まっても無理はない。
香織が男子相手だと俺や明琉以外と、親しげに話しているところを見たことがない。
言い寄られているところは、何度も見たことがあるが……。
「まず男女で分かれて、二人でペアを組んで、その後に男女を合わせた四人ペアを作りましょう」
ちなみに俺はというと……
「
教卓近くに立っていた俺に近づいてきたのは、明琉だった。
でも明琉が俺と同じ班になるってことは、香織を任されたのは違う人なのか?
しかし、俺が今まで考えていたことは、予想外の展開となって分かることになる。
「高坂さん、あたしと一緒の班になろうよー」
高坂さんを一緒の班になろうと誘った人物、それは予想外の人物。香織だった。
わざわざ嫌いな高坂さんを班に誘うのは意外だ。
「え〜っと〜、どちら様?」
「は!?絶対分かってて言ってるでしょ!」
「いやー、本当に分からないなー。どっちみち私には先約があるから
「へ、へ〜、それは誰かな?見たところ周りには、誰もいないようだけど」
確かに高坂さんは、香織の言う通り一人でいる。
事前に誰かと約束したのかと思い、クラスを見渡すが、一人で座っている人は誰もいなかった。
「折角遠回しに言ってあげているのに、気づかないか〜」
「は?」
「貴方と同じ班になるのは、絶対に嫌ってこと」
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
これ以上はダメだ。皆の前で喧嘩をさせるのは、さすがに良くない。
手遅れになる前に止めなくては。
隣にいる明琉に視線を送ると、明琉は俺の視線に気づき、なるほど、と頷いた。
「ちょ、ちょっと
「明琉!離してよ!」
俺は高坂さん、明琉は香織の肩を後ろから掴み、動けないように少し力を入れる。
明琉はよく俺の視線だけで気づいたな。
いくら何でも勘が鋭すぎるだろ。
「私は貴方と同じ班になるのは死んでも嫌だわ!」
抵抗をやめ、声を荒らげて叫ぶ高坂さんは、いつも見せる柔らかい雰囲気とは別物の、トゲトゲしい雰囲気を醸し出しいていた。
しかし、どうしてそんなにも香織を嫌うのだろうか。
本当になんで……?全く見当がつかない。
「なっ……!あたしだって嫌に決まってるじゃない!でも、仕方がないじゃない……」
最初は高坂さんに声を荒らげていた香織は、最後の言葉を発する前には
高坂さんは香織の言葉を聞き、何か思いついたのか、顔がニヤケ始めた。
「……ふふ。仕方ないわね、そこまで言うなら一緒の班になってあげてもいいわよ」
一体何を考えてやがるんだ、高坂さんめ。
「釈然としないけど……、まあいいや。よろしく」
「ええ、こちらこそ!」
今の高坂さんの顔は、いつも見せる可愛らしい笑顔。
さっきのトゲトゲしい雰囲気は、一体どこに行ったんだか。
高坂さんと香織の口論は終わり、ようやく運命の女子とのペア決めが始まることになる。
高坂さんと香織の二人と一緒の班になれた男子たちは、大声を上げて泣いて喜ぶことだろう。
だが、クラスの皆は、この校外学習の班決めが仕組まれていることなど、知りやしない。
俺と高坂さんの二人を除いて。
「では、抽選を始めます。まずは男子から引きに来てください」
早速抽選が始まった。
抽選は、専用の箱から紙を取り出して、その紙に書かれている番号の同じ男女が班となる。
まずは男子からだ。
普通は早く引いた方がいいと思うが、敢えて俺は最後尾に向かう。
明琉は、なぜ?と不思議がっていたが、何も言わずについてきた。
そして、気配を消す。俺たちの目の前に立っている男子に気づかれないように。
男子の中で最後の俺たちが引いた後は、キャーキャー叫びながら女子たちが、先生の前に並び始めた。
高坂さんと香織の姿を探すと、最後尾にいることが分かった。
まあ、元々‴最後尾に行け‴と指示を受けていたため、探さなくてもどこにいるか分かっていたが。
そして女子たちも皆、紙を引き終わった。
運命の結果発表。
俺や明琉と一緒の班になる女子は、一体誰になるのか。
クラスの皆は、騒がずに硬直している。
男子たちなんて、手を合わせている。神様にでも願っているのだろうか?ちょっと見ていて面白い。
「……では、一班になった人、手を挙げてください」
ちなみに俺と明琉は三班になった。
一緒の女子は誰かというと……
「次、三班になった人、手を挙げてください」
俺と明琉は手を挙げる。
周りを見ると、手を挙げている女子は、‴ニヤニヤしている高坂さんと香織‴だった。
まあ、知ってたんだけどね。
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