第13話 許嫁とクラス委員長①
「ふぅ〜〜〜〜〜」
力が抜けたのか、高坂さんはその場にゆっくりと腰を下ろした。
「ごめん。俺が巻き込んだせいであんな芝居までさせて」
「別に
「そうだね……ん?もしかして、学校でべったりくっつく気でいたの?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
どうかしたの?じゃなくて。
問題大ありでしょ、それ。
ずっと教室の中では気づいていない振りをしていたが、クラスのみんなは俺と高坂さんを鋭い目つきで見ていた。許嫁ってだけでそれ以上の関係じゃないのに。
そんなことも知らずに、クラスの男たちは俺をぐちぐち言っている。
恐らく、わざと俺に聞こえるくらいの声の大きさで喋っていたのだろう。見事に全て聞こえていたよ。
まあ、これ以上俺の評価を下げるわけにはいかない。
「いや、だって高坂さんさっき言ってなかった?許嫁の関係は嘘ってことにして、俺たちだけの秘密にしようって」
「それはそれ、これはこれだよ」
「いやいや、全く意味が分からないんだけど。それにクラスには香織だっているしさ」
「あ、そっかー、あの子いるのかー。じゃあ学校では我慢しようかなー」
よかった。これでクラスでの俺の評価はもう下がらないだろう……。
そう信じたい。
「あ、そろそろ昼休み終わっちゃうね。クラスに戻ろっか」
「本当だ。いつの間に……」
しかし、今日は始業式の次の日なため、まだ授業はない。
午前中も、自己紹介や学年集会などで、あっという間に時間は過ぎた。そして、午後はクラスでの役割分担をして終わりという事になっている。
過去の話になるが一年生の頃は、じゃんけんで負けた俺はクラス委員長をやる羽目になった。
クラス委員長をじゃんけんで決めていいものなのかは分からないが、仕事がとても大変で、面倒くさかった事を覚えている。
もう一生クラス委員長なんてやりたくない。
「……加賀くんはやりたい係とかあったりする?」
屋上から教室に向かっている途中、高坂さんがこれから行われようとしている役割分担について話題を振ってきた。
遠回しに一緒の係になろうと誘っているのだろうか。
もし本当にそうだったら、可愛すぎて尊死しちゃうかもしれない。
「んー、今のところはまだ」
「そっか」
俺の答えにホッと胸を撫で下ろした高坂さん。
本当に俺と一緒の係になりたいのか?
もういっそのこと俺から誘っちゃうか?
いや、ダメだ。
クラスには香織がいる。許嫁の関係が嘘って事にした以上、俺と高坂さんが同じ係になるなど、ほぼ不可能だ。
……あれ?
確か、クラス委員長は男女一人ずつで担う係だ。
でもクラス委員長はもうしたくないし、高坂さんとなったら楽しいだろうけど、そしたらまた香織と問題が起きるし。
ジレンマだ……。
「じゃあさ!」
隣を並行していた高坂さんが、急に俺の目の前に現れた。
「私と一緒にクラス委員長やらない?」
「いや、でも……」
「じゃあ決まりね!」
「ええええ!?」
いやいや、いくら何でも強引すぎませんか!?
「何?私と一緒に係やるの嫌なの?」
「別に嫌って訳じゃないけどさ」
「けど?」
「ほら、香織いるじゃん……」
「大丈夫だよ。私に考えがあるから安心して」
※※※
教室に入ってから、高坂さんは俺の方を見向きもしてくれない。
しかも、高坂さんの考えとやらは一切教えてくれず、ただ一緒にクラス委員長をやるという事だけ決まっている。
まあ、いいか。願ったり叶ったりだ。
「皆さ〜ん!これからクラスの役割分担を始めるので、席に着いてくださ〜い!」
この人が担任の先生。
んー、誰だっけ?
いや、昨日途中で学校抜け出しちゃったせいで知らないだけであって、決して忘れている訳ではないからね。
朝のホームルームも違う先生だった気がするし、そもそもまだ昨日の説教とかもされていない。
色々と嫌な予感がする……。
「ではまず、クラス委員長を決めましょうか。立候補したい人はいますか?」
「はい!!!!」
高坂さんは、先生が言い終わる前に大きな声を上げて挙手をした。
「
「俺もやりたい!」
それを見たクラスの男共は、続々と必死に手を挙げ始める。
やはり高坂さんはすごい人気だな。
手を挙げたクラスの男は、俺を含めず計十二人。
「さっき約束もしちゃったし、一応手挙げとくか」
これで手を挙げた男は、計十三人となる。
「男の子随分多いですね。女の子は……、高坂茉優さん一人ですね。ではクラス委員長の女の子は高坂さんにお願いします」
「任せてください!」
「では、あとは男の子の方を決めますか。じゃあ、じゃんけんで決めましょう」
「先生!お願いがあります!」
そう言ったのは俺の隣の席の人物、つまり高坂さんだ。
まさか……、名指しして強引にでも俺をクラス委員長にさせる気か?
この高坂さんの発言に驚いたのは、俺一人だけではなかった。
「なんでしょう、高坂さん」
「私に決めさせてもらってもいいでしょうか。これから一緒にやっていく人は、やっぱり一緒に行動しやすい人がいいので」
「なるほど。立候補する男の子たちはそれでもいいですか?」
立候補した男全員は一度俺に視線を向けたが、茉優さんのお願いならば!と了承する。
それを見た高坂さんは自分の席から立ち上がり、ニコッと可愛らしい笑顔を俺に向けて言った。
「
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