第14話 許嫁とクラス委員長②

加賀慶哉かがけいやくん。これからよろしくお願いしますね」


 高坂こうさかさんは、一緒にクラス委員長をやりたい人を俺に指名した。

 その事実にクラスの男子諸君は、一切俺に対してブーイングをせずに、ある一点の方向に視線を向けていた。


 視線の方向には、物静かな様子で挙手をしている香織かおりの姿があった。


「あら、どうしたの?西宮にしみやさん」

「先生。やっぱりあたしもクラス委員長に立候補していいです

「ええ!?今からですか!?」


「私は構いませんよ。多数決でも採りましょうか」


 香織の突然の発言に一切動揺もせず、先生ではなく、もうクラス委員長に決まったはずの高坂さんが了承した。

 でも、どうして香織が急に立候補したんだ?

 香織の考えがよく分からない。


「ちょっと高坂さん、それはいくら何でも……」


 高坂さんは、再び俺に向けてニコッと可愛らしい笑顔を向けて、俺に何かを伝えようとしている。


「加賀くんは私に票入れてくれるよね。入れなきゃどうなるか分かってるよね」


 こんな感じだろうか。

 もうこんなにも可愛らしい笑顔で、脅さないで欲しい。

 怖いから。本当に。


「分かった!分かったから!」


 はぁ、女子って怖いなぁ。


「では、高坂さんの言う通り多数決を採ります。皆さんは周りが見えないように伏せて下さい」


 この多数決、どうなるか分からないな。

 香織も高坂さんも人気は絶大。

 どちらが勝ってもおかしくない。


「早速始めましょうか」



※※※



 多数決の結果、高坂さんは二十票、香織は十八票を獲得し、高坂さんがクラス委員長に決まった。

 そのため、高坂さんに名指しされた俺も、結局クラス委員長に決まった。


「クラス委員長になった加賀くんと高坂さんには、話したい事があるので、この役割分担が終わったら職員室に来てください」


 話したい事?何かやる事でもあるのか?

 少し面倒くさいけど、高坂さんと一緒なら楽しくなるかもな。


 それからは、揉め事もなく係は決まっていき、案外楽にクラスの役割分担は終わった。


「じゃあ加賀くん、職員室行こっか」

「そうだね。でも、先生からの話って何だと思う?」

「んー、これからクラスの皆が仲良くやっていけるように話し合いとか!」


 小学生か!と思わせるような発言だったが、それは一理あるな。

 あの女の先生、すごく優しそうだったし。

 そう思いたいけど、絶対昨日の事だよな。

 はぁ、行きたくなくなってきた。



 職員室に着くと、先生は俺と高坂さんに向かって手招くように隅にある部屋に誘導した。


「先生、何ですか?話って」

「本当は聞かずとも分かっているのでは?」


 やっぱり昨日の事か。


「すいませんでした!昨日の事は全部俺のせいなので、叱るなら俺だけにしてください!」

「ちょ、ちょっと加賀くん!?」


 昨日から決めていたことだ。

 俺たちは、昨日の始業式をサボった。怒られないわけがない。


 ここは男の俺が全責任を負ってでも、高坂さんを守らなくては!


「違うんです!私がいけないんです!叱るなら私だけにしてください!」

「お、おい!?」


 折角男の俺が全責任を負おうとしたのに、どうして高坂さんが俺の事守ろうとするの!?


「あ、えーと、二人の仲が良いのは十分分かりましたから、取り敢えず座ってください」

「は、はい」


 仲が良い?のだろうか。俺の記憶では、昨日初めて話した気がするのだが。


「それで先生、話とは一体」

「実を言えば、貴方たちの言っていた、昨日の事も次いでに話を聞こうと思っていたのですが、本題は違います」


 あ、結局最後には怒られるのね。

 まぁ、覚悟の上で来たわけだし、問題はない。


「では、早速本題に入りますが、新学年になるとすぐに、校外学習があるのは知っていますか?」

「ええ、一年の時にも行きましたし」

「実は、今年度の二年生は、横浜にあるレジャー施設に決まったのですが……」


 横浜か、行った事ないから楽しみだな。


「男女二人ずつのグループで行動しなければいけない決まりになったのです」

「なるほど。先生が言いたい事、分かりました。男子たちが高坂さんと香織の取り合い、ですね」

「その通りです」


 この場合は、俺が高坂さんや香織と行動すれば解決しそうだが、それでは間違いなく他の男子たちから反感を買う。


 どうしたものか……。


「私は大丈夫です。加賀くんと一緒に行動するので」

「やっぱり、貴方たちは本当に仲が良いんですね。それなら、高坂さんは問題ないですね。問題は……」

「いや、問題ありますよ?二人とも問題大ありですよ?」

「ま、まあ、そこで加賀くんは高坂さんとも西宮さんとも仲が良いみたいだし、一緒のグループになってもらいたいのだけど」


 それが出来れば、苦労はしないんだよな。


「先生!」

「え、どうしたんですか?高坂さん」

「西宮さんはまた別の人に頼みませんか?私、西宮さんとはあまり仲が良くないので」


 確かに、この二人を一緒のグループにすると、喧嘩が絶えないかもしれない。

 何でかは知らないが。


「そうですか。では、他の人に頼んでみますね。今日はありがとうございました。もう帰っていいですよ」


 あれ、説教は?

 あ、忘れてるのか。よし、思い出す前に帰ろ。


 そういえば、今月末に校外学習があるんだよな。

 楽しみだな。

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