第3話 幼馴染
あたしには小学校の頃からずっと一緒にいる一人の男の子がいる。
その子の外見は特別かっこいいわけでもなく、勉強に関しても学年で中間層に位置していて、運動も出来る方だとは言い難い。
そんなどこにでもいるような男の子だ。
でもそんな彼は、あたしとどこか似ている気がした。どこが似てるの?と聞かれると困るけど、一目見たあの時からそう感じていたのだ。
あたし、
あの時のあたしは、周りが見えていない上に鈍臭くて運動会の時に誰かの足に引っかかって転び、足を怪我してしまったのだ。座って泣いていると慶哉は現れた。
「転んだの?大丈夫?」
「うん……」
「この怪我じゃ歩けなさそうだね、乗ってよ」
そう言った慶哉は背中を向けて座った。
「うん、ありがとう加賀くん」
この時はまだちゃんと喋ったことがなかったのに優しくしてくれたのだ。
もうこの時には慶哉のことを好きになっていたのかもしれない。所謂一目惚れだ。
その時からずっと慶哉と一緒に居たのに。慶哉にはあたししか居ないと思っていたのに。
それなのに……。
「あの泥棒猫……!!!」
あたしは見てしまった。慶哉と慶哉の許嫁と言い張る女、
許せない。許せない。許せない。
……あの泥棒猫、どうやって排除しようかな。
泥棒猫を排除するための色々な案が頭に浮かんで来る中、ポケットに入っていた携帯が鳴っていることに気付いた。
「……もしもし」
『お、やっと出たな香織。どうだ?慶哉は見つかったか?』
電話を掛けてきた主は
慶哉と高坂茉優が教室を出て行ったっきり戻ってこなかったため、あたしと明琉は学校が終わってから、手分けして探し回っていた。
明琉とは、中学生になった時に慶哉が仲良くしていた男だ。だからあたしも明琉に近づくことにした。
正直に言えば、明琉には微塵も興味がない。ただ、もっと慶哉と一緒にいたかったから近づいただけだ。
「うん、見つけたよ。」
『そーか!で、どーだ?』
「……何が?」
『高坂さんと一緒に居るだろ?慶哉のやつ』
明琉がそう言った瞬間、あたしは電話を切った。
今あたしが聞いて一番イライラすることを簡単に言うなんて本当に有り得ない。
明琉に対して色々な悪口をブツブツと言っていると、慶哉と高坂茉優が歩き始めていることに気付く。
「こんなの尾行するしかないでしょ」
折角見つけたのに、ここであの二人を放ってあたしだけ帰るわけにはいかない。
絶対あの泥棒猫の尻尾を掴んでやる。
慶哉はあたしのものなんだから─────。
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