5話 私のセーブポイントで

 ゲームなどで『セーブポイント』という場所がある。

 万が一、敵にやられたりゲームを中断するときに、その場所などから再開できるシステムだ。


「いやぁ、今年は本当に参りましたよ」

 そう語るのは、私が月一で通っている喫茶店のマスターだ。

「そうですねぇ」

 私は頷く。

「さて、今月は何を飲みますか?」

 マスターが聞く。

 この店は飲むコーヒーの豆が選べる。

 豆は多種多様だ。

「なにか、面白いのはありますか?」

「面白いもの……ですか?」

 この風変りの注文に店主は戸惑いながら(本当に変な客ですいません)大きな瓶並ぶ棚からある種類を指した。

「これ、面白いですよ」

「じゃあ、これをアイスで」

「え? アイスですか?」

「駄目ですか?」

「駄目じゃないですけどね……飲むと理由が分かりますよ」


 数分後、出来た。

 見た目は普通のアイスコーヒーだ。

 一口飲む。

「!?」

 あまり敏感ではない舌の持ち主でも分かる。

「うっす!」

「でしょう?」

「ここまでだとコーヒーとも呼べないような……」

「コーヒー風味のお茶と言っても騙されるでしょうね」

「逆に言えば、コーヒーが苦手な人にはいいかも……子供とか」

「確かに」


 池波先生は京都の名店『イノダ』のコーヒーを絶賛していたが、このコーヒーを飲んだら多分驚く。


 そんな妄想を内心しながら私は自分の情報を整理して再び現実世界に戻る。

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