7話-1 塔に上る その一

 ロールプレイングゲーム(RPG)ではよく塔が出てくる。

 現実世界では灯台や見張り台の役割をしていた塔。

 だが、ゲーム内に置いて内部は複雑怪奇で魔物の巣窟であり、かつ、貴重なアイテムがある場所だ。

 

 冬を実感する寒さの中、私は塔に入ろうとしていた。

 無論、塔と言っても現実世界的には平屋建ての建物なのだが、今回のりょうりは若くない私には少し手ごわい、しかも、種類豊富。

 相手にとって不足はない。

 胃のレベルアップ向上のためにも、この修練の場に私は立つ。


 引き戸を開ける。

「いらっしゃいませー」

 店員の声と熱気が出迎えてくれる。

 戸を閉めて(コロナ対策)手をアルコール消毒をして券売機の前に立つ。

 主に八百円からあるが、私は千百円のスペシャルを頼む。

 カウンターに座る。

 店員が水の入ったコップを置いた。

 食券を渡すと「味とかはどうします?」と聞いてくる。

「味濃い、脂多め、麺普通で」

「はい、分かりました」

 数分後、目的の料理が出てきた。

 目の前に現れたモンスター。

 それは、ラーメン。


 好物である。

 しかも、今回のラーメンは私の好きな家系である。

 家系を説明すると(専門家でもないで詳しくはないですが)ラーメンの一種で具が「ほうれん草」「海苔」「叉焼」ぐらいしかないシンプルな姿だ。

 ただし、脂が濃く拒否反応する人もいる。


 箸を取り、「いただきます」

 まずはスープに浸され半分ふやけた海苔を食べる。

 それから、半熟卵を少しだけスープに浸してレンゲで口に入れる。

 ほうれん草で口をリフレッシュさせる。

 さて、本番だ。

 麺をがばっとつらって口に運ぶ。

 熱い。

 一口入れて麺を歯と唇で切り(蓄のう症なので啜ることが苦手)ハフハフしながら喉に通す。

 そこから記憶が飛ぶ。

 

 目の前にはスープだけだ。

 昔なら、これも完食できた。

 が、今は相当無理をしないと飲めない。

 一口、二口飲むが胃が悲鳴を上げる。

 隣のにいちゃんは丼から直にスープを啜って完食をする。

 こういう姿を見ると感心するし、「若いねぇ」と羨ましくなる。

 

 しかし、この店は、塔で言うのなら一階に過ぎない。

『ラーメン』という塔は、まだ上がある。


 店を出て近くのコンビニでお茶を飲んで体力を回復させる。

 次の階は何が出るか?


 今から楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る