第3話 亜栖羽の友達


              ☆☆☆その①☆☆☆


 海に行くのは、八月の三日に決定。

 なので八月一日に早速、育郎は亜栖羽と待ち合わせて、水着を選ぶ事になった。

 電車で繁華街に向かい、駅前で待ち合わせ。

「き、緊張するなぁ…」

 なぜかというと、昨日の夜『オジサン 実は相談が…』というメールを貰っていたからである。

 亜栖羽のアリバイに強力してくれる友達が、予定していた区民プールの機器の不具合で一週間の臨時休業をしてしまったらしく、折角なので亜栖羽の彼氏を見たいと一緒の海水浴を申し出ているとの事。

 ついでに、今日の水着選びも一緒に来たい、と申し出ているとの話だった。

 亜栖羽の友達だから、亜栖羽が良ければ一緒に行く事は困らないけど。

「初めて会う女の子だし…。うん、亜栖羽ちゃんが恥ずかしくない、大人の男としての余裕を見せなくては…!」

 というわけで、水色のシャツに白いサマージャケットという、ネットを参考に、暑苦しくない爽やか系の私服で纏めて来た青年だ。

 似合っているかどうかなんて、育郎の感性では確かめられるスキルも無いし、そんな余裕もまだ無し。

「あと三十分か…亜栖羽ちゃんの友達って、どんな女の子たちのなのかな…」

 友達は二人来ると言っていた。

 思い出してみるに、追試の時に一緒の写メで写っていた女の子たちだろうか。

「…そういえば、どんな女の子たちだっけ…?」

 亜栖羽しか見えていない育郎は、一緒に写っている女の子たちの印象も「可愛い感じだったような気がする」くらいに、とても薄い。

「たしか…」

 スマフォに保存してある恋人の膨大な量の写真から、追試の時の写真を探して、あらためて確認してみる。

「…ああそうだ。うん、やっぱり三人とも、可愛い感じだ」

 類は友を呼ぶとは、この事か。

 育郎にとって、亜栖羽がダントツに愛おしくて可愛いけれど、友達三人も美人で可愛いと思う。

 しかし。

「みんな追試だったんだよね」

 そう思うと、それはそれでやっぱり可愛いと感じる。

 追試にもめげず、明るく笑って楽しそうな感じは、青春と少女をよく表しているなあ。

 眩しいなあ。

 とか、二十九歳の男はしみじみ。

 この三人の中の二人が、亜栖羽と一緒にやってくる友達なのだろう。

 とか推理しつつ、写真の亜栖羽に見惚れていたら、少し離れた場所から声が聞こえた。

「あ、オジサ~ン♪ おまたせしました~♪」

「あ、亜栖羽ちゃん…え…?」


              ☆☆☆その②☆☆☆


 声に振り向くと、亜栖羽と、二人の少女が小走りで駆けてくる。

 友達の二人は、写真の追試メンバーではなかった。

 亜栖羽は良く似合っているパンク姿で、袖なしの上着に短いタンクトップで、頭には右サイドの花飾りと、鍔の大きい帽子をトッピング。

 ショートパンツから伸びる腿は艶々で健康的で、カラーのイメージは革っぽい黒だ。

「うんうん、可愛いバイ菌さんみたいで いいなぁ…」

 思わず目が♡になる。

 右隣りの少女は、茶色のシートカットが清潔な、ツリ目で元気で健康的な印象の、小麦色な女の子。

 亜栖羽よりもわずかに背が高くて、グレー系のパーカーにジーンズのホットパンツが、スポーツ少女の印象を与えていた。

 左隣の少女は、黒髪のポニーテールを揺らす眼鏡の女の子で、白い肌と眼鏡の雰囲気で、成績上位者っぽい印象。

 三人の中では一番小柄で、白い日傘と白いワンピースという、まさにお嬢様っぽい清楚ではかなげな印象だった。

 三人が目の前に到着をすると、それぞれが挨拶をくれる。

「オジサン、お早うございます~♪」

「お、お早う、亜栖羽ちゃん。えっと…」

 初めて会う二人の少女に、ちゃんと挨拶を決めようと、緊張しながらもハキハキと声を張る育郎だ。

「は、初めまして! あ、あ、亜栖羽ちゃんと、その…おっおっお付き合いをさせて戴いておりますっ、福生育郎ですっ!」

「「ぇえっ、ブッサイクローっ!?」」

 案の定、いつもの聞き間違いをされてしまった。

「ですよね…えっと」

「オジサンの名前は、福生育郎さん! 福生市のフッサに、育てるに郎! 聞き間違えちゃダメだよ~☆」

 と、過去を棚に上げる亜栖羽であった。

 そして育郎は、ショートカットの女の子に、何だか見覚えがある気がした。

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