16話
「なんで……」
言葉が続かなかった。どうして朝霧君がここにいるのか。それに今、確かに彼はこの包帯妖に向かって声をかけていた。
「
「う……うん」
何とか返事をするけど、内心はいまだパニックから
何でここにいるの? さっき通り
だけどそんな私の
「さっきお守りと言っていたが、これのことか。大事なものなら落とすんじゃないぞ」
その口ぶりから察するに、どうやらそのお守りは、やっぱり
出されたそれを受け取ろうとして、だけどそれを持つ包帯妖の姿を改めて見て、また
そんな私を見て落ち着かせようとしたのか、朝霧君が、私の肩にそっと手を置いた。
「だから、一人で大丈夫かって言っただろ。怖いなら無理するな」
その言葉と、服
「大丈夫だから」
そう言って、朝霧君に支えられたまま、私はようやく、包帯妖の手からお守りを受け取ることができた。だけどその直後、そいつが言う。
「そのお守り、持っていても役に立たなそうだな」
その言葉に思わずムッとする。確かにご
だけどもちろん、この包帯妖がそんな
「お前達、あの道を通るのはやめておけ」
そう語る様子からは、私達に
いったいこいつは何がしたいのだろう。
「あなたは、そこの祠の土地神様?」
それを聞いて、包帯妖は大きくため息をついた。
「今となっては、そんな
ハッキリした答えにはなっていないけど、その口ぶりからすると朝霧君の言う通り、
「わしは、元々は流れ者の妖だった。それが色々あってここでは土地神として
低級の妖ども。さっき通り過ぎていった妖達のことを言っているのだろう。
「あいつらもそこまで悪いやつらじゃない。
そう言って私達をじろりと
「あるいは、人間のくせにわしらの姿が見える珍しい者など、実にからかい
なにさ。私だって、何も好きで見ているわけじゃない。そんな理由でからまれるのは
そんな思いはどうやら
「だから、お前達が
その暗示のせいで、みんなはこの狭い脇道に入っていったのか。私をここまで無理やり連れてきたのも、すべてはあの妖達から身を隠すためだったようだ。
「ちょっと待って。それって……」
真相を聞くと、今まで恐ろしいと思っていたこの包帯妖、いや土地神のやっていたことが、 実は全部私達を守るためだったとわかる。
相手が妖だろうと土地神だろうと、今までそういう
だけど今までの
土地神はそこまで話すと、ゆっくりと自分の祠のある方へと歩きだす。
「たぶんあんたらで最後だろう。けどさっさと
祠の前に着いたところで、土地神は
すると、今まで黙っていた朝霧君が口を開いた。
「あなたは、土地神でなく元の妖に戻ろうとは思わないのか?」
確かに。私も妖の考えなんてわからないけれど、力もなく信仰もされない神様なんて、わざわざ続けるだけの
だけどそれを聞いて、土地神が小さく笑ったような気がした。
「今さらそんな
それが本心なのか、それとも何か別の
少し考えた私は、ポケットに手を入れると、持ってきたお
「一応、お
こんなものでも、供えれば一応信仰になるのだろうか。土地神といっても妖とそう変わりはなく、
「ありがとよ」
お供えものを受け取った土地神はそう言うと、朝霧君の方にも目を向けた。口では何も言わない代わりに、
「
朝霧君もそう言って、持ってきていた一口サイズの羊羹を土地神の手の上に置いた。
すると土地神は何を思ったのか、こんなことを聞いてきた。
「お前さん、前にどこかで会ったことあるかね?」
「気のせいだろ」
朝霧君が首を横に振ると、土地神はそうかとだけ答え、それから
「他の人も無事みたいだし、
朝霧君が静かに言う。確かに、みんながいなくなった
つまりそれは…… 改めて朝霧君を見る。彼はさっき、さも当然のように土地神の姿を見て話をしていた。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけれど」
「……ああ」
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