概要
中学三年生の優斗は、夏休みの前日に二週間前から学校を休んでいる幼馴染の家に課題を届けに行く。
彼女の部屋に案内された優斗は、彼女の右腕が鱗に覆われているのを知り驚くが、彼女に寄り添うことを決めた。
鱗は徐々に彼女の身体を侵食し、彼女は人間ではないものに変化しようとしていた。
姿形が変わっても、変わらない愛の物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!トリケラトプスで何が悪い!? 海を目指して突き進めっ!
ラストの余韻がとにかく最高!
二人が海を目指す様子が、鮮明なイメージとなって浮かびます。
明けゆく空、まだ涼しい空気。
住宅地に響く振動。
道行く人は、あまりの出来事にぽかんと見上げていて。
遠くからはサイレンが響いている。
それでも二人はひたすら真っ直ぐに、海を目指すのです。
***
主人公は中学三年生の少年。
しばらく学校を休んでいた幼馴染の家へ、夏休みの課題を届けに行きます。
そして知ることになる衝撃の事実。
幼馴染の腕には、謎のうろこが現れていました。
うろこは日を追うごとにじわじわと広がり、やがて……。
不安を抱える少女と、それに寄り添う主人公。
そんな二人のやり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!変わるものを愛するということ。
言うのは簡単だけど難しいことだなと感じます。
ついこの間まで普通に話していた女の子が、人じゃない姿になってしまったら。この物語に出てくる家族のように、戸惑い、忌避し、嫌悪するのは珍しいことではないと思います。変わってしまうことでその変質を受け入れられないというのは、人間として否定できないことです。
だからこそ、最初は驚きながらもあーちゃんを否定せず、受け入れ、変わらず愛するといったゆうくんの愛がひときわに輝くのだと思います。本人が否定している「変わっていく自分自身」を受け入れてくれる人がいるということ。そのやわらかいあたたかさがとても愛おしいものに思えました。 - ★★★ Excellent!!!姿形に囚われない愛のカタチ——人を想うこと。好きな人を想い続けること
爽やかな風の薫りを感じるような夏の日。好きな幼馴染の子。冒頭は、そんな青春の一頁を飾る何気ない恋愛ストーリーかと思いました。
だが、読み進めるうちに違和感を覚えます。あなたは自分の想い人が、どんな姿になろうとも愛することができますか?
正直、自分には自信がないです。それは、そうなってみないと判断できないから、というのが回答なのですが。愛というのは育むもの。恋とは違い、積み重ねて来たものが愛なのだと私は認識しています。主人公と幼馴染のカットバックにはそれが詰め込まれていて、不覚にも涙しそうになりました。
どんな姿になっても、彼女を愛する主人公は、結局海に行けたのでしょうか。先が気…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たかが、トリケラ
この小説は、ありきたりな恋愛小説だ。
普通に幼馴染を好きになって、彼女の抱える問題を二人で乗り越えようとして、愛を深めていく。育まれた愛は周囲には理解されないが、それ自体もよくある話と言えるだろう。話の流れも特に大きなどんでん返しがあるわけではない。
そう、読後に去来する、この胸を締め付けられるような切なさも、恋愛小説によくあるものだ。
人間の持つ強靭な愛に気づかせてくれるものだ。
誰かを心から愛すことの美しさを感じさせてくれるものだ。
読んだ人々の中で化石となってしまった純粋な気持ちを掘り起こしてくれるものだ。
だから、敢えて、こういわせてもらいたい。
本作は、ただの、至極の…続きを読む