二章 オオカミ少年と誠の侍 その2
ドランケンの町にある唯一の学校には秘密の花園がある。と言っても本当に秘密というわけではなく、誰も近寄らないだけの話だ。少年バルナバは一人でお昼のサンドウィッチを食べていた。
「君はやっぱ一人がいいんだね。」
共生マムルのウルフィがコロコロ転がりやってきて放った一言だ。バルナベは一切驚かずに応答した。
「一人は楽なんだ。気を遣う必要も話す必要も聴く必要もナッシング。孤独とは自分だけの自由な世界を創れる楽園だ。」
「そんな強がり言っちゃって〜、寂しくないの?」
ウルフィはニヤニヤしながら挑発した。バルナベは変わらない声量でまた口を開ける。
「お前学校来るな言うたよな〜。ついに破ったな約束。目玉抉り出すぞ。」
「ぎゃあああ、ごめんってバル君、バルちゃん、バルナバさん!」
ウルフィは慌てて少し引き下がった。
「どうしても見たかったんだよ、学校。」
「まあ、俺は約束は破られるものだと思うタチだから、まあ許そう。」
バルナベはそう言うと、ガブリと食べ物を噛んだ。
「俺の孤独を許さない者は不思議といるもんだ。……来たなおじゃま虫。お前ちょっと隠れてろ。」
バルナバの指示通りにウルフィは隠れると、バルナバと同じ歳くらいの二人の少年がやってきた。
「あんこらあんこら、アーン? バルナバ〜。ひでえじゃねーか。この将来一流ハンター兼色男のサイモン・クロスを置いてお弁当とはいい度胸だな。」
同級生のサイモンは少し喧嘩腰に歩いてきた。
「全くだよ、バル君。クロっちゃんは不機嫌になると面倒くさいんだぞ。」
「面倒くさいってなんだよ、ステパノ。俺ちゃん、キレそう。」
「まあキレても、クロっちゃん爽やかだもんな。」
薄赤色の短髪の少年ステパノは、そう言うとバルナバに顔を向けた。
「お前もお前よ。たまには自分から群れようぜ。」
「やだ。めんどい。……いや、何でお前ら勝手に近くに座るん?」
「「いただきまーす。」」
「目には目。歯には歯。自由には自由か。……それも粋だな。」
それから三人の少年はそれから他愛のない会話を続けた。ふとサイモンはステパノにオファーを出す。
「お前、俺と一緒に聖騎士団入れよ。お前の方が重宝されると思うぞ。悔しいが。」
「いやあ、僕は規律とかそういうの向いてないと思うよ。フリーの冒険者になって勇者の称号を得たいな。あの赤間 一誠みたいに、怪人や悪人から弱きを守るんだ。」
ステパノは若干空を仰ぐと、サイモンはうれしそうに彼の肩を叩いた。
「おいおい、目指す頂きを見据える気持ちはは鰻登りかよ。こんな夢も希望もない腐った町から英雄が生まれた暁には天がひっくり返るかもな。」
そうサイモンは評価すると、ステパノと一緒にバルナバの方を向いた。
「お前はどうなんだ、バルナバ? 将来の夢、つまりやりたいこととかないん?」
「……世界征服。ついでに独裁政治からの世界恐慌。後世界の破壊かな。」
このバルナバの発言に、ステパノとサイモンは背筋を凍らせた。
「……冗談だ。大人がよく使うブラックジョークだ。」
「「笑えねーよ! ブラックペッパーより砂糖くれ!」」
バルナバの二人の友人はツッコミを入れると、ステパノは頭を掻いた。
「お前な〜。いつか裏ギルドとかの一員もしくは手綱引いてそうで怖いよ。敵同士になるかもするじゃん?」
「ステパノ…お前は俺がお前にとっての悪になったら、俺を斬れるんか?」
バルナバはそう聞くと、ステパノは即答する。
「お前を斬りたいわけないだろう。だがいざとなったら、覚悟は決めるさ。」
ステパノの答えにバルナバは優しい笑みを浮かべて、そうか…っと言った。途中でサイモンが割り込む。
「おいおい、なんだこの空気。バルナバ、お前が怪人になったら俺は迷いなく全力でお前を狩るぜ。それが狩人が獲物にできる最大の礼儀よ。」
「わかってる。言わなくてもあんたは顔に書いているもんな。」
性格や信念が違う三人の少年たちの会話の時間は、彼らにとっていつまでも続いてかのように思え、不思議な空間だ。
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