004 巻き込まれ?
#004 巻き込まれ?
ぶつぶつ言っていたリリアーナさんが何か考えをまとめたのか、ビシッとした空気を出して俺の方を向いた。
「な、何でしょう?」
「申し訳ありません!」
いきなり立ち上がって頭を下げてきた。
何が何やら分からない。
「もしカンザキ様に力がないとしたら私どもの召喚魔法に不備があった可能性があります。万が一、そう、億が一誤召喚だった場合はこの命掻っ捌いてでも責任を取らせていただきます!」
頭を下げたまま言うのはやめてほしい。責めれないじゃないか。
それにしても誤召喚ってなんだ?そんな事ありえるのか?
「今回の召喚について報告では魔術師が10名参加しましたが、全員が魔力切れで倒れております。予定では10名で十分な魔力のはずでしたので何か余分に魔力を必要とする出来事が起こった可能性があるのです。
現在計算のやり直しや、参加した魔術師の魔力の測定のやり直しなどを進めていますが、もし、、もしですが、三人のところを四人召喚してしまったと言うのであれば納得がいくのです」
えっと、つまりあの時近くにいたから一緒に召喚されちゃったって事?
「三人のところを四人って、それって大丈夫なんですか?力的な事とか?」
「カンザキ様には力が行ってないようですし大丈夫じゃないでしょうか。もちろんこれから慎重に他のお三方の力を調べますが。
とにかくカンザキ様を神殿に連れて行って司教様に調べてもらってからですね。恐らく聖女様にも話が行って、加護の確認が行われると思います」
「加護ですか。それは重要なものなんですか?」
「はい。この世界で使われる魔法などの力は全て加護があるから使えると言われています。特に強い加護を持つものが強い力を持つ。そう言ったものです。
これまで教会の記録では加護のなかったものはいないはずです。
ただ、カンザキ様は異世界人ですから召喚時に加護が付かなければ加護は持ってないでしょう。それは私共の召喚に不備があり、カンザキ様を不当に召喚してしまった証拠になります。
恐らく陛下からもお叱りを受けるでしょう。少しでも加護を持っておられることを祈ります」
本当に祈らないでください。俺に向かって手を合わせてもご利益ないですよ。
そう言えばさっき万が一誤召喚だった場合は腹を掻っ捌くって言ってたけど冗談だよね?国王に怒られるって言うけど、それだけだよね?
その日はお金の価値や魔王との戦いの歴史なんかを教えてもらった。お金は硬貨が使われていて、銅貨とか銀貨とかがあるらしい。明日全種類の硬貨を見せてくれるときに価値を教えてくれるそうな。
魔王との戦いは半分聞き流した。数千年前にやはり勇者が召喚されて魔王と戦ったが、その剣の一撃で山が吹き飛んだとか、信じられないものばかりだったからだ。
それにその情報のソースが聖書にしかないってのも不審の原因だ。俺の中で聖書=弟子が残した小説で、真実や偶然を誇張して描かれていると言う認識だったからだ。
この世界には実際に女神様の奇跡と言われる回復魔法があり、俺の頭もそれで直されたわけだが、その力を持って女神様の存在立証とされている。
神託なども稀にあり、今回の召喚魔法の術式も神託で授けられたとか。術式とは魔法の設計図だそうで、何をどうする的な事が描かれているらしい。今ではその法則などが失われて、現存する数少ない術式は魔術師ギルドで厳重に管理しているらしい。
そして女神様からの神託にあった召喚術式に間違いはないはずなので、神託を受けた巫女が間違えて記述したか、召喚の間に刻むときに間違えたか、詠唱を間違えたか、つぎ込む魔力量を間違えたか・・・とにかく小さな間違いであればいくつも原因が考えられるそうな。
それだけで人数が変わるほどの影響があるとは思えないが、誤召喚を前提として間違いを探すとすればいくらでも考えられるとのこと。
まあ全ては明日、教会に行って確認してからだ。俺にだって加護?があるかもしれないしね。もしかしたらすごい力とかあるかもしれないし!戦う気は全くないけど、俺TWEEEEは男のロマンだよね!
「それでは明日は朝の9時に出発しますので今日は早くお休みください」
「えっと、リリアーナさん?大事なことを聞いてなかったんですけど、いいですかね?」
リリアーナさんはビクッとして俺の方を見た。何を聞かれるかわかっているのだろう。そしてその回答も。
「俺は元の世界に帰れるんですか?」
「・・・・・・・です」
「はい?」
「分からないです」
「つまり?」
「帰る方法が分からないです。女神様から新たに送還の術式でも神託されない限りは帰れません!」
ちょっとやけになっているようだが、最後まで言い切った。
そうか、帰れないのか。まあ会社には未練は全く、全然、かけらもないが、両親には悪いことをしたかもしれない。ここ十年ほど会ってないが元気にしてるだろうか。
「それは他の三人も知ってるのですか?」
「いえ、聞かれなかったので言いませんでした」
いや、堂々と詐欺しましたみたいなこと言わないでよ。それってどうなのよ。
「私どもも勇者様には何としてでも戦っていただかなくてはいけないのです。帰れないと言う事実が良い方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか分からない現時点では、聞かれないのであれば敢えて言わないという方針になったのです。
もちろん聞かれれば今のカンザキ様のように答えました。ですが、あのお三方が元の世界に戻るのに興味がないのであれば敢えてほじくることもないだろうと言う事です」
まあ俺に対してちゃんと現実を言ってくれたって事は誠意を示してるって事でいいのかな?あのヤンキーたちは後で戻れないって知ったらどう思うんだろうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます