050 国境
#050 国境
ようやく国境についた。
「ジン様、ここから先はロザリア王国の騎士団が護衛します。ジン様に関しては隊長だけに伝わってるはずですのでご留意ください」
「わかりました。今までありがとうございました。気をつけて戻ってください」
騎士団の隊長さん(結局名前聞いてないな)が別れの挨拶をしてにきた。騎士は国の軍人扱いなので他国に入るには相応の理由が必要なのだとか。俺が公式に訪問するなら護衛として堂々と入国できるけど、今回は身分を隠しての入国だからダメらしい。
何やら騎士団同士で話が行われた後、向こうの隊長さんが挨拶にきた。
「クロイゼ伯爵、ここからは私どもが護衛を引き継ぎます。道中の安全はお任せください」
「ええ、お願いしますよ。それとジン殿ですが」
「承知しております。最優先でお守りしますが、他の騎士たちには知らせてませんので何かありましたら私に直接仰ってください。出来るだけ対応しますので」
「王都までよろしくお願いします。俺のことは気にしなくて大丈夫です。基本的にクロイゼ伯爵と一緒にいますしね。伯爵を守ってもらえれば自然と俺も安全です」
「承知しました」
隊長さんの名前はアンドラというらしい。やっと名乗ってくれる人に会ったよ。彼は男爵の次男で騎士団の中隊長だとか。
「中隊を全員連れてきました。今回はジン様の護衛もありますからね。念には念んを入れました」
「何の名目で人数を増やしたんですか?」
「クロイゼ伯爵の護衛ですが?」
「えっと、行きもこれほど人数は多かったんですか?」
「いいえ、この半分くらいでしょうか。何故ですか?」
「いえ、俺の事を表に出さずに騎士団の人数を増やせるのかと思いまして」
「一応行軍の訓練も兼ねて、という事にして人数を増やしました。書類上は新人騎士を連れてきてることになっています。実際にはベテランばかりですが」
ああ、書類上は訓練も兼ねてるのか。護衛の訓練ができる機会なんて少ないだろうしね。
護衛って一度失敗したら終わりだから基本的に訓練という形を取れない。だから普通の護衛に追加する形で訓練に変えると。多分普段からそういう訓練の方法を撮ってるのだろう。
で、実際にはちゃんとした実力のある人が来てると。
国が違うと騎士団の運用、というより訓練か、の仕方も違うんだね。
「そちらの女性は?」
「俺のメイド兼護衛です。使用人として扱ってください」
「承知しました」
アンドラ隊長とはこんなもんかな。基本俺と話すことなんて無いからね。
「アンドラ隊長、途中の経路は決まっていますか?」
クロイゼさんが確認をとるけど、来たみちと一緒でいいんじゃ無いの?
「クロイゼ伯爵のご希望通り、サンクマン伯爵領を通ります。先ぶれを出してありますので受け入れも大丈夫かと」
「クロイゼさん、サンクマン伯爵とは?」
「ああ、私の娘の嫁ぎ先なんですよ。久々に娘に会いたくなりましてな」
あれ?国の使者が私用で寄り道してもいいの?護衛も騎士団だけど。
「ジン様、もしくは勇者様が公式に訪問するなら許されません。ですが今回はジン様が私的に訪問ということで多少は融通が効きます。私も交渉毎であちこち飛び回っておりますので、こういう機会でも無い限り会えないんですよ」
なるほど。まあ俺は構わないけどね。クロイゼさんが娘さんに会えるならそれに越したことはないし。俺が役に立つなら構わない。
「ジン様には申し訳ありませんな。旅程が1週間ほど伸びます」
え、寄り道ってそんなに時間かかるの?それって寄り道程度の話じゃないような?
「途中で山を迂回する経路を取るために時間がかかるのですよ。山は魔物だらけで真っ直ぐには道が通せなかったとか。おかげですごい遠回りをする形になります。地図上で見たらすぐなんですけどね」
魔物の山をぐるっと迂回する形になるとか。その伯爵領って魔物の山に隣接してることになるけど大丈夫なのかね。
「サンクマン伯爵の街は大きいので冒険者ギルドがあります。なので魔物の討伐も問題ないのですよ。むしろそれによる収入の方が大きいです。潤ってますよ」
ああ、冒険者ギルドがあるのね。それなら魔物がいても大丈夫か。
それに伯爵だったな。確か伯爵以上は上級貴族にあたるはず。男爵のように街一つとかじゃなくて、広い領地を持ってるだろうし、そりゃお金はありそうだね。
「では王都まで3週間、よろしくお願いしますぞ」
クロイゼさんの一言で話がまとまり、出発することになった。4週間が5週間に。この世界なら誤差か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます