027 王家の対応

#027 王家の対応


「ジン様、教会はどうでしたか?」


どうやら俺だけが教会に呼ばれたので心配させてしまったようだ。


「特に問題はありませんでしたよ。リスモット様に会って召喚に巻き込んだ事を謝られただけです」


「・・・女神様と会った・・・?」


「ええ」


「・・・いえ、聞き間違いに違いありません。神託でなく直接会ったなど・・・」


何やら呟いているが、あまりよく聞き取れない。


「神託を頂いたんですね!聖女様以外に神託が降るなんて快挙ですよ!」


「いえ、直接お話ししたんですが」


「・・・やっぱり聞き間違いじゃなかった・・・女神様と直接お話を・・・どうなってるんでしょうか。やはり異世界人というのは女神様と何か関係が・・・いえ勇者様はそんな事はおっしゃられてませんでしたし・・・」


「リリアーナさん?」


「なんでもありません。ええ、なんでもありませんとも。何にせよ無事でよかったです」


はて何か危険なことでもあっただろうか?


「リリアーナさん、本当に大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」


「いえ、ちょっと寝不足なだけです。心配をおかけしてすいません。今日は早く寝る予定ですので大丈夫です」


本当に大丈夫かな。





その日の夕方に王宮に呼び出された。緊急とのことだった。ちょうど夕食を食べようとしていたところだったのだが、緊急なのですぐに来て欲しいと言われたら行かざるを得ない。

リリアーナさんが同行を申し出てくれたが、彼女は寝不足で顔色が悪かったはず。俺のために無理をさせるわけには行かない。


「じゃあ、ちょっと行ってきますね。午前中も会ったんですけどね。何か伝え忘れたんでしょうか」


「いってらっしゃい。その、何かあったら言ってくださいね」


最近こういうのばっかり言われてるような気がするな。俺ってそんなに何かに困ってるように見えるんだろうか。



迎えの馬車に揺られて王城に到着する。途中なんか他の馬車を追い越してたような気がするが気のせいだろう。急ぎとは言っても街中を馬車で飛ばすなんてことはないはずだ。うん、いくら王家とはいえ交通ルールは守るよね?

あ、この世界交通ルールって法的根拠はなかったんだっけ。まあ良いか。事故らなかったし。



いつもの応接室に通されると、王様と宰相様が待っていた。


「ジン、何度も来てもらってすまない。確認したいことがあってな」


やっぱり朝の話し合いで不備でもあったのだろうか。


「女神様と会ったというのは本当か?」


ありゃ、そっち?


「ええ、召喚に巻き込んだ事を謝られて困りましたが」


「そうか・・・会ったのか・・・」


「ジン殿、本当に女神様だったのですか?」


「ええ、神像と同じ顔してましたし、女神様だと思いますよ。それとも教会の奥殿から邪神とかと会うことってあるんですか?」


「いえ、そういう訳ではありませんが・・・そうですか、会いましたか・・・」


「テンパ、やはりこれは・・・」


「ええ、そうですね」


「ジン、女神様は勇者たちに関しては何かおっしゃられていなかったか?」


ああ、やっぱりそっちの方が気になるよね。今までの前振りだったのか。


「ああ、能力優先で選んだから性格的なのは考慮してなかったって言ってましたね。素質はあるみたいですよ?」


「そうか。聖女様の神託通りか。ならばテンパ、勇者の扱いは朝の取り決め通りに。それと近いうちにジンに爵位を与える。

何か理由を考えておけ」


え、俺に爵位?なんでそんなものを?


「えっと、俺に爵位ですか?俺は数年でこの世界を去る予定ですよ?」


「その数年が問題なのだ。

お主は気づいておらんようだからはっきり言おう。女神様と直接お会いした事のあるものは過去の歴史を見ても一人もおらん。

女神像は女神様から下賜されたものだと言われておる」


え、女神様の顔知ってるから誰かはあってると思ってたんだけど。あれ?


「なのでお主は世界で唯一女神様と直接お話しした人間になる。人類史上初だ。

それだけ女神様に気にされている人間を放置できん。こう言ってはなんだが、爵位という繋がりでも持っておらんと心配でしょうがないのだ」


「ただ謝られてだけですよ?別に気に入られたとかじゃないですし」


「いや、お主はまだ分かってないようだ。

謝るだけなら神託で充分だ。なのに直接会ったという事はそれだけお主を気にしているという事だ。

そして1番の問題はこちらから女神様に言葉を届けれるという事だ」


「え、神託で話してるんじゃないんですか?」


「いや、神託は一方的に降るものでこちらから話が出来るものではない。

お主は人類史上初めて女神様に人間の声を届けたのだ。そして1度あることは2度ある。次に女神様と会ったときにこの国悪口でも言われてみろ。この国が滅ぶぞ」


あれー、そんな感じはしなかったけどな。もっと軽い感じ?


「お主は女神様と直接お会いした事でその存在自体が貴重になったのだ。ただの巻き込まれた異世界人ではなく、女神様とお話しできる、ある意味聖女様よりも貴重な存在なのだ」


おかしいな。グリッドさんはまた来いとか言ってたけどな。リスモット様は違うのかな。


「えっと、爵位は遠慮させていただきます」


「・・・理由を聞かせてもらっても良いか?」


「女神様とお話し出来たのは確かですが、俺が何を言っても女神様は自分で判断すると思うんですよ。俺がこの国の悪口を言ってもただの個人的見解にしかなりませんよ?女神様はちゃんと世界を見てますよ?」


「それでも言われたら気になるだろうし、粗が目についたりするようになる。それが人間というものだ。真に受けるような事がなくても言われたら気になるものだ。

人間と女神様を比べるのは不敬だが、女神様とて気にはなるだろう。

それに爵位を受け取らないとなると、教会からも言ってくるぞ?すでに聖女様が動いておられる。教皇様と話して聖者の列に加えるとかなんとか。爵位を持っていればそれを理由に断れるかもしれんぞ」


「いや、断れるかもしれないと言ってる時点で不確定じゃないですか。俺はどっちも断りますよ」


「なら何か要望はないか?ウィスキーの件といい女神様の件と言い、お主とは何かと繋がりが必要だ。爵位が嫌だというなら金の繋がりでも良い。

ああそうだ、テンパ、ジンの歳費は金貨10枚だったな?百枚に増額だ」


「承知しました。今年に限って言えばウィスキーの件がありますから二百枚も可能です」


「ではそうせよ。ジン、受け取ってもらえるな?」


そこまで言うならもらっておくけど、そんなにもらっても使い道ないんだよね。金貨二百枚って2億円だよね。年間2億円の収入ってどうよ?


「うむ。ではわしの方からは以上だ。何か困って事があったら言ってくるがよい。出来るだけの事はしよう」


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