024 新たな神託
#024 新たな神託
俺は王宮に呼ばれていた。リリアーナさんも一緒だ。
なんでも新たな神託が下されたとかで、関係のある俺とリリアーナさんも呼ばれたのだ。
王様専用応接室に入るとすでに王様と宰相様、そして聖女様がいた。加護の確認の時に少しあっただけだが相変わらず人形みたいな美人だな。
「よく来てくれたジン。今回の神託はお主にも関わってくるので来てもらった。聖女殿、先ほどの話をもう一度してもらってもよろしいか」
「はい。
神託によりますと、勇者の役割は魔王の止めだけだそうです。魔王を倒す事自体はこの世界の人間でも可能ですが、それをすると魔王は復活するとか。それを防ぐために勇者の止めが必要だそうです。
極端な話、死にかけた魔王の前に連れて行って最後の一撃を入れるだけで良いそうです」
ぶっちゃけたな。女神様。
「また、勇者自身が剣を持ってさえいれば他人が動かしても問題ないそうです。
さらに言えば勇者の意識がなくても構わないそうです」
さらにぶっちゃけたな。つまり生きてさえいれば良いって事か。
「つまり、戦争自体は自分たちだけでも対応できると?」
「というか、自分たちで対応する必要があるかと。勇者の力は今後伸びますが、それでも大陸一程度の力。最初から力は与えられてはいますが、伸び代はこの世界の人間と同じです。最初から力がある分、多少は強くなるでしょうけど」
女神様、俺たちが奴隷術を使うとか言ってた話聞いたわけじゃないよね?
「ふむ。なら今の勇者達の待遇を続ける意味はないな。
テンパ、勇者達は今のまま牢につないでおけ。公的な集まりでは影武者に任せる。魔王との決戦までは死なない程度に飼い殺せ」
「承知しました」
「それで、先日の勇者の蛮行に関してですが、教皇様より書状を預かっております。ご確認ください」
そう言って胸元から取り出した書状を陛下に渡す。
どっから出した?!聖女様の服って胸に格納場所があるの?!
陛下は微妙にホカホカしてる書状を微妙な目で見ながらペーパーカッターで封を開けて中を読む。
難しい顔をしているが何が書いてるんだろうか。
「ジン、頼みがあるのだが」
嫌な予感がするなぁ。
「お主が勇者の助命を嘆願した事にして欲しい」
それで済むのか?
「それは構いませんが、それで通るんですか?」
「良くはないが、勇者を処刑するわけにもいかん。お主が間に入ったとなれば多少は格好もつく。しばらく再教育のために謹慎してるという事にすれば、公的な場に連れ出さずに済む。その間に影武者を用意する」
「わかりました。何か嘆願書でも書けば良いんですか?」
「いや、聞かれたときにそうだと答えてくれる程度で構わん。口裏さえ合ってれば問題ない」
「わかりました。お引き受けします」
「すまんな。お主にばかり迷惑をかけて」
「お気になさらず。ただ、実際には罰を与えるんですよね?」
「もちろんだ。物理的な説教をする予定だ」
「なら良いです。口裏くらいいくらでも合わせます。ああ、俺がカツアゲされかけた分の説教を上乗せしておいてください」
「了解した。
それと聖女殿、ジンに何か話が合ったのではないか?」
「そうでした。
女神様からの神託に、ジン様を奥殿に招くように言われました。奥殿は最も女神様のお力が満ち溢れている場所。何か力がたまわれるかもしれませね」
聖女様、こないだは加護がないからと興味を失ってたのに、神託で指名された途端に見る目が変わるのはやめて欲しい。人間不信になるよ?
「わかりました。いつが良いですか?」
「出来れば早急に。女神様をお待たせするわけにはいきません」
「じゃあ、この後でも構いませんか?」
「もちろんです。私の乗ってきた馬車で向かいましょう」
「私はどうしましょうか?」
リリアーナさんは最初の召喚に関係したから呼ばれたんだけど、今回の神託には関係なかったし、女神様からも呼ばれてない。微妙に居心地が悪そうだ。
「ついてこられても構いませんが、奥殿にはご案内できません。告解室でもご利用になられますか?」
告解室というのは自分の罪を神に懺悔する場所だ。別にだからと言って罪が許されるわけじゃないが、人に話すというのは自分の罪の意識を軽くしてくれる。
告解室で話された内容はたとえ教会内でも記録に残ることはないので安心して喋れる。
「いえ、それでしたら私はお母様とお会いしてから帰りますわ」
「そうですか、ではジン様は一緒においでください。陛下、失礼します」
「うむ、良い結果だと良いな」
俺は別に神託のスキルとか持ってないんだけどね。まあ前に奥殿で加護を確認した時には女神様に会えたからまた会いたいって事かな?
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