028 教会の対応
#028 教会の対応
「ジン様、聖女様から呼び出しです」
朝早くに起こされたと思ったらクレアから報告があった。どうやら聖女様が呼んでいるらしい。昨日も陛下が教会も何かしようとしてるって言ってたからその関係かな?
まあともかく聖女様を待たせるわけにもいかない。朝食くらい食べさせて欲しい。
なんか昨日もこうやって馬車を抜いていったような気がするなぁ。事故らなきゃ良いけど。
教会の紋章の書かれた馬車で教会に連れていかれ、かなり上の階に上がっていった。流石に聖女様の部屋は上階にあるんだな。話くらい下の階にある応接室とかで良いだろうに。
部屋に通されると王宮の応接室よりも立派なんじゃないかと思うほどきらびやかな部屋だった。多分応接室だとは思うんだけど、壁際にはきんぴかなツボが置いてあったりして目がチカチカする。
部屋で待っていたのは初老のお爺さんと聖女様だった。
「聖女様、昨日はありがとうございました」
お爺さんの方は知らないので聖女様に声をかけた。こう言う時ってどっちから声をかけるのが礼儀だっけか?
「いえ、女神様のご意思です。全てに優先されます」
なんか女神様命って感じだったし、聖女様ならこう言うかもね。
「聖女様、わしを紹介してはくれんか」
お爺さんだ。俺の方から自己紹介したほうがいいのかな?
「初めまして、異世界人の神崎仁です。ジンとお呼びください」
「おお、ジン殿、わしは教会の教皇をしておるマクスウェルと申す。マックスと呼んでくだされ」
こんな部屋にいるんだから偉いんだろうと思ってたけど、教会のトップだったよ。マックスなんて愛称で呼べるわけないじゃん。
「教皇様、お会いできて嬉しいです」
握手を求められたので応じる。
「ふむ、剣は使われないようですな?」
ん?俺に剣術なんて期待されても困るよ?
「一応型だけは習いましたが、多分その辺のゴロツキの方が強いです」
「では魔法は?」
「習ってすらいないです」
「むぅ、それでは実はジン殿が勇者だったと言う案は採用できんな」
ちょっとちょっと、そんな話してたわけ?確かにあのヤンキー、いや勇者達は不適格だとは思うけどさ。力を与えられたのはあの三人だよ?俺には一欠片ももらってないからね!
「ジン殿が実は強かったとかだったらよかったのじゃが」
「教皇様、本題に入りませんと」
「おお、そうじゃった。ジン殿、貴殿を聖者の列に叙しようと思っておる。受け取ってもらえるな?」
「いえ、受け取りませんけど?」
「うむ、そう言ってくれると・・・うん?」
「受け取りませんよ?」
「なぜじゃ?生活の面倒は教会が見るし、貴殿は年に一度くらい演説でもしてくれるだけで構わんのだぞ?」
「いえ、ですから生活の面倒も結構です。
陛下からも叙爵の話をいただきましたがお断りしました。聖者の話もお断りします」
「なら何かないか?聖者がダメなら司教の位とかはどうじゃ?年棒が金貨百枚ほどあるぞ?」
「いえ、だから要りませんって。なんでそんなに俺に位を与えたがるんですか。一度女神様とあっただけじゃないですか。今後も会えるとは限らないんですよ?」
「しかし1度あった事は2度あると言うしな。
ふむ、奥殿に行って確認するのが早いな。女神様の神像が光らなかったら取り下げよう」
どうやらどうしても女神様と関わりを持ちたいらしい。いや、教会なら当然か。今までは一方的に神託が降っていただけなのを、こっちから要望を伝えれるかもしれないのだ。それだけでも金銭に変えがたい魅力だろう。
「はあ、確認は一度だけですよ。光らなかったら諦めてくださいよ」
もう敬語使ってるのも疲れてきたな。
グリッドさんは光らないようにも出来るって言ってたからな。多分大丈夫だろう。
奥殿に入った途端に女神像が光りました・・・。
「おお、祈る前に光るとはな。やはりジン殿には聖者の列に加わっていただかんと・・・」
俺は急いで祈りのポーズをとった。
「ようこそジン様。昨日ぶりですね。会いにきてくれて嬉しいです」
「リスモット様?神像が光りましたけど何かしましたか?」
「ええ、ジン様が神像に近づくのを感じたのでお誘いする意味で光らせました」
あれがお誘い・・・正直やめて欲しかった。会ってからなら光らないように頼めたのにフライイングとか勘弁して・・・。
「それで今日はどう言ったお話しでしょうか?あ、ただ会いにきてくれたとかでも構いませんよ?世界はうまく回ってますからね。私が手を入れるような案件はありませんし」
「あれ、魔王はいいんですか?」
「別に構いませんよ?ただ支配者が人間から魔族に変わるだけですから世界の存続とは関係ありませんし。
人間の信者は守りたいとは思いましたので勇者の召喚を神託しましたけど、最悪負けても私に罰があるわけでもありませんので」
え、女神様って世界の神だよね?あ、もしかして魔族も生物だから一緒的な?
「えっと、リスモット様?リスモット様は人間の神じゃないんですか?」
「いえ、違いますよ。私はこの世界を管理する神ではありますが、人間を優遇すると言う意味での神ではありません」
なるほど。あくまでこの世界の管理者という立場か。
「でも加護は与えてますよね?」
「ええ、でも魔族にも与えてますよ?」
え、まじで。これって教会に知られたらまずいんじゃ・・・。
「それって教会に言ってもいい話ですか?」
「別に構いませんが、人間社会は混乱するでしょうね。可否で言えば可ですが、オススメはしません」
俺知らない方がいい話を結構聞いてるよな。間違って話しちゃいそうで怖い。
「それじゃあ、お茶でもしましょうか。昨日は創造神様がホストでしたので私は発言を許されてませんでしたし」
そう言ってテーブルとお茶を出してくれる。やっぱり女神パワーで出してるんだろうな。
「あんまり時間はないんですけど」
「大丈夫です。ここと人間界とでは時間の流れが違いますから。今は遅くしてるのでここで1時間過ごしても人間界では1秒くらいですよ」
そんなに差が出来るのか。そう言えば昨夜の話も結構長かったけど指摘されなかったな。
リスモット様は結構気さくな方で、つい長く話をしてしまった。魔王の裏話とか聞きたくなかったけど。
「ジン殿、決まりですな。聖者の列に・・・」
「お断りします」
「いや、でも光ったら聖者になるという話では・・・」
「そんな事言ってません。光らなかったら諦めてくださいとしか言ってません。
それとも無理やり聖者にされそうですって泣きついた方がいいですか?」
「いや、無理は言っちゃいかんな。うん。本人の意思が大事じゃ。聖女様もそれで良いな?」
「はいわかりました。でもいつでも仰ってくださいね。聖者の名簿は空けておきますので」
もう来たくなくなってきたな。リスモット様との話は楽しかったんだけどな。
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