悩みとは

 ふと未来に思いを馳せてみると、就職先が決まらなくて流浪している自分だとか、はたまた孤独にカップラーメンをすすっている自分の姿なんかが想像されて、なんだか気持ちが少しばかり萎れた。人っていうのは考えない方がいいことの方が多いのかも知れない。

 そもそも僕という人間はむしろ強固なくらい自信が無いことでお馴染みの人間であり、そんな僕が未来を描こうというのがそもそもの間違いだったのかも知れない。そんなことを言われたって、僕自身に多少の未来が許されているのは一応事実なんだし、一瞬くらい夢見たっていいじゃないか。

 そう独りごちながら畳に横になる。

 大学生の夕暮れは、孤独だ。

 そんなキャッチフレーズを呟いてみるけれど、イマイチこんな六畳一間じゃカッコもつかないや。

 自身の持ち方なんてとうの昔に忘れてしまった。というか物心ついた時から自信なんて無かった。

 チャイムがけたたましく鳴り、僕は全身全霊で驚いて、慌てて玄関へ向かった。どうしよう、どうしよう、なんだろう。通販は頼んでいないし。

 ドアを開けたら同年代っぽい女性がはにかみながら「隣に越してきました」と挨拶をしてくれた。優しい笑顔だった。

 なんか、それを見たら、色々な事がどうでもよくなったりした。


(2020年8月9日 カクヨム初出)


—――――


登場人物紹介

 僕(20歳)

  現金な青年。

  いつも何か悩んでいるけれど、大体浅い。


 女性(23歳)

  この後主人公をねずみ講に勧誘する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る