キミと冷蔵庫

「……は?」

「ちょ……」

 冷蔵庫を開けたら、彼女が何か言いたげにごろりと転がり出てきた。

「冷えっ冷えだな」

「そりゃ……冷蔵庫にいたんだもん……」

「風呂、入っとくか? 布団がいい?」

「……なんで動揺しないのよあんたは」

「まぁまぁ」

「まぁまぁじゃねぇ」

「……布団」

 彼女を抱き上げて布団に運んで、毛布をかけてやる。

 こういう時、彼女が小柄で良かったなって思う。

 だって、なんか男らしさをアピールしやすいじゃないですか。これは内緒の話なんだけどね。

 毛布にくるまった彼女は、ガタガタと歯を鳴らしながら俺をにらんでくる。

「ぜんっぜん驚かない!」

「だってそりゃー、もう慣れてるし」

「しどい!」

 この間は土間、この間は押入れ、その前は洗濯機…と来ればあー、次は冷蔵庫かなぁという予想はつく。

「まぁまぁ、サプライズしたい気持ちはありがたく受け取っておくから」

「何よそれ~…あんた何やっても驚かない、つまんない!」

「別にいいんじゃない?」

「よくないよ!」

「いいんだよ」

 俺は後ろから彼女を抱っこする。

 彼女の肩が小さく跳ねた。俺は気にしないで続ける。

「だって」

「……だって?」

「怖くはないし驚かないけど、可愛いとは思ってるし。そういうとこ」

「~~~~~~っ!」

 彼女は俺の方を向いてポカポカ胸を叩いてきた。

「ちくしょー今度は絶対驚かせてやる~!」

「はいはい」

「許さん!」

「可愛い」

 噛み合わないけれど楽しい、イマイチ頓珍漢な会話。

 幸せだなぁ。

 最後にひとつ、ぎゅっと強く彼女を抱きしめて、その日はお開き。

 願わくば、こんな日々が続きますように。


(2020年5月28日 超短編小説会投稿 再録)


―――――


登場人物紹介

 俺(23歳)

  会社員。クールぶっているけれど彼女に甘々。

  一つのことに夢中になると周りが見えなくなるタイプ。

  彼女とは大学の先輩後輩の仲。


 彼女(21歳)

  大学生。サプライズやいたずらが大好き。あと彼のことが大好き。

  サプライズに対して真面目で、後は適当な性格。

  家事や料理は修行中。いいお嫁さんになるのが夢。

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