第22話 大地と空
「……で、あの人は誰なんだ? 新しい浮気相手か? 」
「お前ほんとぶっ殺すよ? ただのいとこだよ……昨日久しぶりに遊びに来て無理矢理付いてきたんだ……」
「無理矢理のわりに山中はすごく楽しそうなんだけど? 」
「小さな時からこっち来るたびに遊んでたからな、仲良いんだよ」
「なるほど……」
つまりこれは山中に大地のいとこを押しつけて、俺と大地で遊べば……問題ないな!
「来ちゃったもんは仕方ないし、このまま行くか……」
「悪いな……」
俺は軽いため息をついた後、大地を解放して二人の元に戻っていく。
「お、戻ってきた戻ってきた。こそこそ話は終わったかいやろーども? 」
「まあな」
「そうかそうか! で、そこの男の子は誰かな? 」
艶やかな黒髪を肩口で切り揃え、耳元のイヤリングや目元の泣きぼくろが特徴的な女の人が身体と首を傾けながら俺の顔をのぞき込んできた。この人、ぐいぐい来るな……。
「あー、俺の親友の優斗だ。今日の主役だな」
「お前何言ってんの? 」
「ほ-、優斗君ね! 私はそこにいる大地のお姉さん! 空ねえって呼んでね! 」
「あ、は、はい」
「だめだよ空ねえ。優斗は人見知りするからぐいぐい行ったら怯えちゃう」
「おお? そうなのかい?」
「あはは……」
山中が気を遣って空ねえという人物を引き剥がしてくれた。悪い人ではなさそうだけどいきなりはちょっときつい!
「あと、きっと空ねえさんのダイナミックボディでドキドキ」
「おー、いかんいかん! 最近大地の視線も感じる位だからね! 気を付けないと! 」
「は? 」
「ちょ、おま! 空ねえ適当いってんじゃねえよ!? 」
「気にするな、男は皆そんなもんだよ! 」
「大地、話がある」
「瑞希!? 」
ほらこれだ。三人とも昔からの付き合いで俺と大地は高校からの知り合い。勝てるわっきゃねえ!!
まあ、解ってたから気にはしないけど、この状況は結構つらい。スマホでシイナちゃんに癒やされようとしても一人つまらなそうにスマホを弄ると三人に悪いし……こういう時は愛想笑いして終わるのを待つしか無い。ああ、俺にコミュ力があれば……。
一通り騒ぎ終わってようやく落ち着いた三人。大地が愛想笑いしている俺にようやく気付いて声をかけてきた。
「悪い優斗……じゃあ、行こうか」
「お、おう。気にするな」
「ごめんね井上」
「なはは、ごめんね優斗君! 大地をからかうの楽しくて! 」
「あ、あはは。大丈夫ですよ」
のけ者にした罪悪感からか、三人とも謝ってきた。いいんだよ、無理に混ざってもつらいだけだし!
「お詫びにー……えい! 」
そう言って、空さんは俺の腕を取って抱きついてきた。え、いきなりどうしたのこの人?
「何してるんだよ、空ねえ……」
「大胆、空ねえ」
「むふふ、サービスは思いっきりやった方が受けがいいんだよ? 」
……などどこの女性は供述しており。俺は強制的に腕に胸を押しつけられている。
いやね、そりゃすげえ柔らかいし良い匂いするけども。俺と空さんはさっき会って自己紹介したばかりである。いきなりこんな事されても戸惑うだけだし、そんなサービスに屈したりはしない。
「やめろよ空ねえ。優斗が嫌がってるだろ」
「んー? そうなの? 優斗君、やめた方がいい? 」
「あはは……」
「拒否しない。男は皆おっぱい星人……」
ごめん山中。まだこの人の事よく知らないから苦手だし、どうしたらいいか解らない。でもおっぱいは柔らかい。この事実は変わらないんだ。
「ぬふふ、じゃあこのままレッツゴー! 」
「おおお!? 」
俺はぐいぐいと空さんに引っ張られ、アミューズメントパークに向かって歩きはじめた。なんだこの無理矢理な感じ! 嫌いじゃない!
俺は足をもつれさせて転ばないように、空さんの歩幅に四苦八苦しながら合わせていた。
──だからだろう、大地と空さんが目配せをしているのに気付かなかったのは。
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