第15話 葛藤
今まで一日に何度かシイナちゃんの姿が見えないときがあった。女の子なんだからいっぱいお風呂入りたいんだなぁ、なんて思ってスルーしていたし、トイレに入って行くときもそこをタップするなんて発想は流石にしなかった。
ごくりと生唾を飲みこんで体重を記入するか悩む。入浴シーンや裸を見ようとした男が悩むのか? と思われそうだが排泄行為を覗くというのはかなりハードルが高い。
正直、そういう趣味は全くない。……だけど、のぞき見という行為は嫌いじゃない……ッ!!
「おーい、ペース速くなってるぞ。あんま無理すんなよ? 」
流石に全部を見ることは出来ないだろう。それをやったら間違いなく全年齢ではなくなってしまう。──だが、下着は見れる!!
あれからシイナちゃんはなぜか着替えを浴室でしてしまい、裸はおろか下着すら全く見れていない。下着が見れるのはごく稀にチラリズムするときか、ご褒美を与えるときだけである。
──俺はシイナちゃんが着てる下着が見たい!!
「ちょ、早い早い!! どうした優斗!? 」
「すごい、100回転くらいはしてる」
だが落ち着け俺。これはひょっとした罠ではないのか?
「お、回転数落ちてきた」
「アップダウンが激しい。意外と体力がある」
意気揚々とアンロックしてドアを開けたが最後、覗いているのがばれて好感度急降下。なんてわりとお約束な展開ではないか?
そう考えると、アンロックするのはためらわれる。
しかし、だ。
シイナちゃんは俺の存在に気付いていない。それはつまり覗いたとてばれたりしないのではないか。
では、これは罠ではなく純粋なご褒美……? そうだ、そうに決まっている! 大体、罠なんてあるわけないんだ!!
「うおぉぉ!? さっきより速っ!? 」
「いい加減マシーン壊れそう」
俺はトイレのドアをタップして今の体重を記入する。すると、選択肢が消えて白い文字の新しい選択肢が現れた。
《ドアの中に視点を移動させますか? 》 《はい》 《いいえ》
ドクンドクンと脈打つのが聞こえる。ここで《はい》を押せばシイナちゃんのトイレシーンが……ッ!!
「死なば諸共!! 」
「いきなりどうしたこいつ」
「大丈夫、さっきより回転数が落ちてるからなんだかんだ疲れてるんだよ」
俺は外野の声を無視して《ハイ》をタップした。
──そこに、シイナちゃんはいた。
視点は今までと違い、完全に上から見下ろす形になっている。思っていたとおり、大事なところは謎の光で見れなくなっているが太ももがきわどい所まで見れた!! ……しかし。
「なんだかなぁ」
こう、いまいち興奮しない。そりゃ下着も少しは見れるけど、小さくしか見れないからなんだか肩すかしな気分である。
これが-5キロで4つしかないドアのご褒美だと思うと、なんだかがっかりである。
いや、女の子のトイレ覗いといてがっかりってどうなんだと自分でもどうかとは思うけど……ん?
ふと、シイナちゃんの上部を見てみると、視点変更するときに使用する選択肢が《AB》から《上下》に変わっていた。
……だよね、これだけじゃないよねぇ!! さっすがわかってるぅ!
「また早くなった。もうこいつわからん」
「元気」
俺は心の中で一人ツッコミをしながら選択肢の《下》をタップする。すると、シイナちゃんの真正面からの視点に切り替わり、今度はシイナちゃんの全身が画面に収まった。
──これだ。俺はこれを求めていたんだ。
真上からでは分からないシイナちゃんの表情がはっきり見える。それどころか、足下には下着が……しっかりと見えていた。
もちろん、大事な所は隠されているがそんなものは気にならない。俺はシイナちゃんの少しずつ変わる表情に目を奪われていた。
悩ましげに眉を潜めていたと思ったら、次の瞬間には深く深呼吸して少しだけ穏やかな表情になっている。最近はおやつにプリンが出たときぐらいにしか表情が変わらなかったあのシイナちゃんが……と、若干感動すら覚えた。
あとパンツ。自分があげたパンツを履いてるってやばい位興奮する。トイレが覗けるおかげで、毎日どんな下着を付けてるか確認出来るのはかなりエロい。
それから俺は、シイナちゃんがトイレから出るまでずっとトイレを覗いていた。
「あいついつまで漕いでるんだろうな? 」
「あと5分待ってもやめなかったら止めてあげよう」
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