第13話 恋人ほしい
「よし、じゃあまずは準備運動するぞー」
『おー』
そういってジムの一角にあるストレッチエリアにて、床に敷かれたマットの上で各々適当に柔軟とか準備運動をする。そんな中、俺は屈伸運動しながら周りを改めて見る。
土日だからか割と人が多い。男が多いかと思っていたがそんな事はなく、女の人もそれなりに多かった。……しっかし。
「なあなあ、大地」
「なんだよ、柔軟手伝えってか? 」
「いや、そうじゃなくてだな……」
俺は二の腕の筋を伸ばしながらススッ……と大地に近づいて話しかける。大地は頭に手を置いて首筋を伸ばしているがそんな事お構いなしにこっそり耳打ちする。
(なあ、女の子のトレーニングウェアってエロくないか? )
(お前……まさか)
(いや、山中の事じゃなくて。今ランニングマシーンで走ってる人とか)
一瞬、ヤバいくらい睨まれたけどすぐに否定する。
まあ、確かに山中の黒いスパッツと淡い黄色のウェア姿もなかなかエロい。身体にぴったりフィットしているため健康的な肢体がくっきりはっきり分かる。それに柔軟するたびに揺れるポニーテールは120点を上げたい。
だけどいくら何でも友達の彼女をエロい目で見れたりはしない。俺が今エロい目で見てるのは、俺たちの斜め後ろに置いてあるランニングマシーンで走っているお姉さんである。
(ふ、気付くのがおせえよ。俺なんてジム入ってからずっと見てるぜ? )
(気持ちは分かるけど最低だなお前)
俺たちは小声で話しながら準備運動しつつお姉さんをのぞき見る。
顔は見れないが、服装がめっちゃエロい。……なんなんだあれ! ハーフパンツにスポーツブラみたいなウェア!! へそと太ももが丸出しでもう本当にやばい! もうほとんど下着姿じゃん!
(あれはヤバいな……)
(おう、めっちゃエロい……)
「ガン見しすぎ。さすがに失礼」
『!? 』
慌てて振り返ると、そこには少し眉を八の字にした山中の姿が。
「ここにはみんな運動しに来てるんだからあんまりじろじろ見たらだめ。気にする人もいるから」
「そ、そうだよな! こ、これから気を付けるわ! 」
「そ、そうだそ優斗! あんまりじろじろ見たら失礼になるからな! 」
「て、てめぇ大地!! 」
こいつ、俺に全部なすり付けて自分は逃げやがった。……だが、『鬼』はそんな甘くなかった。
「何言ってるの、大地? 大地もだよ」
「ひぃっ! 」
逃げようとした大地の背後を素早く取った山中は大地のお腹に手を回して抱きしめて逃げられなくしていた。
「……大地、しっかり柔軟してないね」
「へ? 」
「私が手伝ってあげる」
びくびく怯える大地になんだか妖艶な笑みを浮かべる山中。……これから大地に凄惨なお仕置きが始まるのは目に見えて明らかだった。
(南無……)
「俺に向かって合掌するのはやめろ!! 」
「あいたた! 」
「力んじゃだめ。あとちゃんと呼吸は続けて」
「んなこと言ったってなあ」
「ほら、いくよ? 」
「いてててて」
……俺は何を見せられているのだろう。
てっきりアニメとかでもあるような痛そうな柔軟が始まるかと思ったらそうではなかった。ただのバカップルがいちゃつきながら柔軟してるだけだ。
つかなんなんあれ? 股割りしてる大地の背中を山中が『全身』を使って押している。……背中にのしかかってるからアレ絶対おっぱい当たってる。いや当たってるってレベルじゃなくて潰れてる。ずっり、ほんとずっり!!
「うー……股関節いてぇ」
「ちゃんと毎日柔軟しないからそうなる。これからはちゃんとお風呂上がりにしてね? 」
「へいへい。……どした優斗」
「うっせばーかばーか。お前なんて股間割れちまえ」
「意味分からんぞ」
とりあえず、三人とも柔軟と準備運動は終わったからこれから本格的に筋トレが始まる!
俺は期待を胸にドキドキしながら筋トレマシーンに向かっていった。
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