第8話 策士、策に溺れる?
今から10キロ痩せて入浴中のシイナちゃんをのぞき見るなんて不可能である。また、嘘を付けば重たいペナルティーがあるから絶対避けるべき。 ならば今回は諦めてダイエットに励む? ふふ、そんなのはスマートじゃあない。
ではどうするか? ──答えはもう出ている。
「浴室に入って覗けないならば、|ここで裸になってもらえば良いのだ!! 」
俺はドヤ顔をしながら先ほどもらったばかりのご褒美を使用する。そう、今さっき手に入れた-1キロのご褒美、【パジャマと下着】だ。
今回の支給方法はベッドと同じく床からせり上がってきた。いつもならシイナちゃんを無駄に警戒させてしまうが、今は入浴中のためまったく問題ない。むしろシイナちゃんのいる浴室の方に支給されなくて良かった。
「これで準備は万全だ……あとはシイナちゃんの湯上がりを待つだけ」
くっくっくっ……と悪役のような笑みを浮かべながら俺はそのときを正座してわくわくしながら待機する。
あれから30分が経過した。2分で正座をやめた俺はスマホをクッションに立てかけながら深夜アニメを見ていた。
「今期もなかなか豊作だな、やっぱファンタジー系は素晴らしい……ってシイナちゃん出てきてるじゃん!」
慌ててスマホを手に取りシイナちゃんに視点を合わせる。幸いにも、出てきたばかりなようでパジャマを遠巻きから警戒している。──身体にタオルを巻き付けただけの状態で!!
これには策士の俺も予想していなかった。しかし少し考えればすぐ分かること。お風呂でさっぱりした後、1週間も着用した服や下着なんて着たくないだろう。おそらく、身体洗うついでに一緒に洗ったと見るのが妥当な線だろう。──なんという僥倖!!
俺はごくりと生唾を飲み込みながら何度もスクショを撮っていく。いつもより輝いて見える金髪は湿り気をおびて頬に張り付いている。それを少し鬱陶しそうに掻き上げた様なんてまじでエロい。
それに加え、タオルの生地が薄めらしく、ぴったり身体にくっついておっぱいとか尻の形をよく浮き立たせてくれている。
「シイナちゃん、巨乳じゃないけど……いいね……お尻もえっちだ……」
突然のご褒美タイムに俺は思考が鈍り始める。さっきからおっぱいとお尻に向かって連打して限界までズームしてスクショを撮りまくっている。
だがそれも仕方ない。だってシイナちゃん薄めのワンピースなのにずっと毛布被ってるからボディーラインなんてまったく分からなかったんだから!!
つんっと上を向いているお椀型でとても柔らかそうなおっぱいと、タオルを持ち上げて太ももにきわどいラインを作り出しているお尻をニヤけながら眺めているとシイナちゃんが無地で淡いブルーの下着と白地にピンクの水玉模様のパジャマを手に取っていた。
「おお!? い、いつの間に警戒ターンが終わったんだ!? 」
俺は慌ててスクショする準備をする。そう、タオルの上からボディーラインを見るのも大変素敵ではあるが、俺は裸が見たいのだ。それがたとえ謎の光や湯気に邪魔をされたとしても!!
手に取ったという事は気に入ってくれたのだろう。ならば後は着替えるだけ。俺はその時を息を殺して待つ。もしかしたら一瞬だけ表示してすぐ着替え終わってしまう可能性だってあるのだから。
まるで厳しい大自然の中、たった一枚の写真を撮るためだけに何ヶ月も粘り続けるカメラマンのように神経を研ぎ澄ます。
──そしてその時は来た。シイナちゃんが動いた!!
「うおぉぉぉぉぉぉ!! ……あれ? 」
下着とパジャマを手にしたシイナちゃんは、実に嬉しそうに笑いながら浴室に入っていった。
「……どぉぉぉぉぉぉぉぉぉしてだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 」
俺の魂からの叫び声は母を叩き起こしてしまったらしく、1週間おやつ抜きにされた。
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