読み終えた時に、タイトルの『遺したもの』という言葉が、改めて鮮明な余韻を残します。若きピアニストが遺したものとは。才能という名の形なき遺産でした。
若くしてこの世を去った天才、彼は様々なストレスを抱え押し潰されて亡くなった。あまりに早い死。では、彼は不幸だったのか?モーツァルトは明らかなる発達障害、日本にも裸の大将がいるし、発達障害やサヴァン症候群と天才の関係の研究も数多くあると聞きます。そして、ここにも。彼はこの天才を世に遺して死んだ。そして、その死がひとりの天才を生むきっかけを作った。彼の死が、彼にとっての最後の仕上げの作業だったのだろう。彼は死を迎えて、実は本当の幸せを手に入れたのかもしれない。幸せの形は、思いもよらないところに転がっている。
36歳の若さで彼は逝った。古典の分野で将来を嘱望された音楽家であった。彼の残したものがいいです。葬式は切ないですね。
ある男性の亡くなった葬儀のシーンが描かれています。人は手放す(旅立つ)時にしか、実感しえない事もあると言うことを体感する作品です。自分がどんなに愛されていたか。それを、息子さんの一心不乱に弾くピアノの描写で表現されています。言葉に出来得ない思いを、作曲した音楽で表現する。想いがじわじわと伝わってくる作品です。
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