とある田舎を舞台に、謎の不良高校生と出会うところから始まる本作。
登場人物に不良が多かったり、ボクシング部が舞台だったりとなんとも血なまぐさいお話になりそうなところを、強烈なキャラのお母ちゃんや牧歌的な自然描写、妙にテンションの高い腐女子たちが和らげてくれている。おかげで、しっかり児童文庫として成立している。
一部だけ切り取るととても子供向けとは思えないほど生々しい描写があるのに、最終的な読後感はコメディ調の楽しい作品となっているのが不思議な魅力。
自然描写の美しさも他の角川つばさ文庫小説賞応募作にはない良さで、カゲロウの羽化や大豆の種まきから収穫までの描き方なんかはリアルに自然と触れている人にしか書けないと感じた。
その上で「本当の強さとは?」というテーマは一貫しているので、大人が読んでもそのメッセージが伝わってきた。
登場するキャラクターたちは皆それぞれが違う種類の強さを持っているんだと思う。