ヴィクトリア朝風の物語世界描写が秀逸でした

あくまで架空世界という体裁ではありますが
19世紀末ヴィクトリア朝ロンドンをモチーフにした精緻な物語世界描写が
映画や海外ドラマで見た光景がまざまざと浮かぶようで
とても印象的な作品だったように思います。
「鍵」を巡っての周辺の人々の思惑や主人公の人のオーラを見る能力云々という下り
その辺りを巡る陰謀というか謎解きというか
ほのめかしが過ぎてやや痒い所に手が届いていない感もありますが
そういった能力を巡る抗争劇云々ではなくあくまで
主人公とアーサーの関係性を主軸に置きたかったのかな、という所で
過去の父親との逸話も含めて、ドラマ描写が細やかかつ丁寧だったように思います。
キャリガン夫妻やチェンバース邸の執事やまさかの再登場の活版屋の親方など
そういった人々が存在感を持って描かれている点も
物語世界を豊かに見せていたように感じました。
とにかく個々のキャラクタや物語世界そのものに、書き手の思い入れの強さが感じられる作品だったように思います。

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