ジャンル本来のありようが蘇る、本当の意味での本格異世界ファンタジー

紹介文通りまさに「指輪物語」を思わせる、古典的かつ正統派の異世界ファンタジーでした。
もちろん昨今の各種テンプレからは大きく外れますが、異種族を巻き込んだ国盗り合戦、数値化されたバトルではない魔法使い同士の知恵比べと、本来の意味ではこちらこそがファンタジーらしいファンタジーと言える、まさに王道を行くかのような物語だったように思います。マイナージャンルだったファンタジーが、ゲームの要素やアニメ・コミック調の強いキャラクタードラマといった要素を取り込んで一般層に広まっていく過程で、いつしか取りこぼされた、忘れ去られた部分のエッセンスをぎゅっと凝縮したような、そんな往時の物語のありようを本作に見たように思いました。
展開の端々に過去時系列の別の物語がある事を窺わせる局面が多々ありましたが、本作から読んでも置いていかれる事もありませんでした。この作品から読んだのが正解かどうか分かりませんが、過去の経緯をあれこれ想像しながら読むという風に、途中参加ならではの楽しみ方も出来うるだけの物語世界の奥行きが感じられたように思います。

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