題名は「半実話」となっております。半分、つまり五割は実話です。これは作者様が冒頭で述べられているように、作者様が聞いた話を脚色して作られた作品集だから、「半実話」となっているわけですが、その怖さは五割どころではない。どの話も、十割怖い。再び題名を見て『半実話あやし奇譚』となっているが、「あやし」とか「奇譚」で括られるような、ありきたりな話は、1話もなかった。
こんな話を常に聞いていらっしゃる作者様は、何者? と思う。
小生が特に怖かったのは、「座敷童」の話と、「飼い犬」の話だった。実はこの二つを読んだ日は、思い出して眠れなくなったほどに、怖かった。一話一話に、最恐の落ちが付いていて、それがまた恐怖を煽る。
「座敷童」も「飼い犬」も、一見穏やかな単語だが、話を読むと全く穏やかではなかった。
果たして、座敷童だと信じていたモノは一体何だったのか?
そして、揺れ続ける首吊り死体と、飼い犬の関係とは?
本当に怖いものをお探しの方、
是非、御一読下さい。
カクヨム公式の特集でも取り上げられている作品です。だから、私が書くのも蛇足な気がしますが、紹介させてください。
ホラーです。
普段ホラーをほとんど読まない私でもすんなり心に入ってきます。
すごく怖いですが。
抑揚をひかえた表現が、静謐な非日常の世界に読者を引きこんでいきます。
そして、耳元で恐怖をそっとささやきます。
構成もさることながら、表現もお上手です。
抑えている、けれども細部にまで意識がちゃんと研ぎ済まされている。そんな文章に感じます。
語られるのは非日常ですが、浮かび上がってくるのは人間の真の本質ではないでしょうか。
一話完結で読みやすい作品です。
本作品では、心温まるものから死にふれるものまで、たくさんの“あやしい”に出会えます。
ジャンルは、怪奇や恐怖を味わって楽しむホラーです。
しかし、数話を読み進めるうちに、わたしの感覚は、与えられた情報から真実を追っていく、ミステリーを読んでいるかのように変わっていきました。
謎が謎のまま終わるお話が多いからでしょうか。
作者・烏目さんが「まえがき」で述べられているとおり、事実をつまびらかにするのは『野暮』で、あえてそうなさっているのですね。
その謎が、読み手の想像力で別のあやしさに変わっていくのが、本作品の面白さです。事実と虚構の境目をさがすのも、楽しみのひとつに。
一話完結が主なので、興味を持った題名から、好きなように読んでいけるのもポイントです。
画面が文字で埋め尽くされておらず、適度な余白があり、難解な言葉・言い回しがないところに、烏目さんの読みやすさへの配慮が窺えます。
五分もあれば一話を読み切れますので、読み疲れは起きません。
気軽にふれられる、あやしい世界。
一度、体験してみてはいかがでしょう。
作者さまがお客さんから聞いた不思議な体験の話に、半分のフィクションを織り交ぜて語っていく、少し不思議なお話を集めた短編集です。
1話1話は短いながらも、イメージを喚起する巧みな語り口で、読み手をすぅっとお話の中に引き込みます。
霊的なものから人的なもの、オチのあるものから原因もよく分からないものまで。
きちんと理屈で説明できることばかりではないのですが、どのお話も肌で感じるようなリアリティがあります。
私自身、霊的な感性は全くないのですが、こういうエピソードを聞くと、この世には不思議な力が存在しているんだろうなと信じたくなります。
この作品集のお話を、朗読劇で聞いてみたいなと思いました。
また更新をお待ちしています!
これは作者が、お店に来るお客さんから聞いた不思議な話をあつめた短編集である。
年間700人という初対面の人に会う職業柄、いろいろなお話を聞けるというのだが……。
恐ろしい話。不思議な話。ほっこりする話。
しかも、読んでいて、それがどっちに、どこへ転がり、どう落ちてゆくのか全く予想がつかない。
内容はさまざまだが、すべてこれ怪談の範疇に含まれるものばかり。その怪談に、作者が多少のファクションを交えて語っているとのことだが……。
不可思議にして奇怪。そしてオチがない。
なぜそうなるのか? どうしたそうなったのか? それに対する解答は、ひとつも明示されない。
それは、ミステリー小説に例えるなら、犯人はつかまえたが、その殺人の動機が一切判明しない。そんな不気味さがある。
そしてその不気味な事案を、作者は淡々と、ときに畏れつつ、ときに冷静に、まるで歴史家のように語ってゆく。
ああ、われわれの住む世界は、怪奇なことでこんなにも溢れているのか……。すべて読み終えたあとも、なにか得体のしれない恐怖が自分の周囲に揺蕩っているような、そんな気がしてならない。
実話ベースの怪異譚には必ず、きちんとしたオチのつかない座りの悪さがあって、それがリアリティにもなるのだが、このシリーズにはさらに独特の距離感がアクセントとなって同型ジャンルの作品群から突出する魅力となっているように思う。
これらの話が誰かからの伝聞であっても、その誰かについては直接見知っているという設定上、どこか完全には客観的になり切れず、語り口に終始「半歩踏み込んだ」感じが付き纏うのである。
そこには体験者の人柄や風貌を忍ばせる温もりめいたものがある。
個人的にはお地蔵さんの話が好きだ。幽霊の後を尾つけて迷惑がられるという成り行きはどこかユーモラスで恐ろしいというよりは笑ってしまう。これもなぜ男の霊が寺のお地蔵さんを目指して歩くのか、その因果は解けないままだ。
かまって欲しがる霊が多い中、放っておいて欲しい霊がいるというだけでも不意を突かれる面白さがある。完全な創作ではむしろ定型にハマってしまう幽霊像がここでは崩れ去る。半実話ならではの爽快さを堪能できます!
怪談というと、合理主義のこのご時世、錯覚だの脳内現象だと切り捨てることは簡単ですが、人間の奥底の恐怖や好奇心は変わらない。形を幾度も変えて私たちの前に現れてきます。
古くは根岸鎮衛の「耳袋」、昭和だと松谷みよ子の「現代民話考」、平成だと「新耳袋」などが好きな方なら楽しめることでしょう。
学術的な文献に残りづらい物語を収集するのは根気のいる作業で、著者には頭が下がります。
また、話によっては下手な作者だとスプラッタな流血になりがちなところ、抑えた表現でまとめているのは特に好感が持てます。
「半実話」といいつつ100%創作では書けないリアルなエッセンスが散りばめられていて、一種独特な語りの妙味があります……ありそうでなさそうな。
でも、体験談の話者にとっては「あったること」であり、読者もこの物語を読むことでその世界を垣間見ることができるのです。
すでに四十話を超えていますが、どこから読んでも面白いです。
『半実話あやし奇譚』というタイトルでオカルト一辺倒と思った私は甘かった。
この作品は様々な方から聞いた話が元になっているとのことですが、確かにオカルト要素もあれどそれだけではない。人間のあやしい性質も含まれています。
とは言え、ただ『あやしい』の一言で済まない深さがある。怖い話、不思議な話、ホッとする話、ホロリとする話……それらが巧みな文章により纏められ素晴らしい作品に仕上がっています。
成る程公式に紹介されるだけあり完成度は高い。そして人の心を惹き付ける作品でした。
あなたも『半実話あやし』の世界を堪能してみては?
半分実話という、一話完結型の奇譚。恐ろしいお話や背筋がゾッとするお話、気味の悪いお話に、腑に落ちないお話……綺麗に終わりきらないお話も多く、この妙に喉元に残る感覚がよりリアリティがあって読み終えた後になんとなく周りを気にしてしまいます。中には心が温まる物語もあって、そういうお話に出会えた時は自然と頬が緩みました。
職業柄様々な方と接することが多い作者が聞いたお話を丁寧に整え直して書いている物語ということで、その前情報を得てから読むとさらに内容に入り込めてリアルに感じます。それもお話の導入の仕方が大変巧みです。ご本人も個人情報ゆえと仰っていたので仮名だとは分かりますが、それでも最初に話を聞いた人……つまりは物語の主人公となる人物の名前をフルネームで語ってからお話が始まるので、そこがこれまた生々しさを演出し、リアルに感じられます。また、半分実話という謳い文句が良いスパイスになっていて魅力が倍増しますね。
こわいお話は時に信じたくないと思ってしまうのですが、語られる不可思議の中には確実に否定しきれない立体感が存在します。読み終えたあと、これはきっと起こったのだろうな……と妙に納得してしまう自分がいました。
ちなみに私が一番好きなお話は『第12話 枕もとのメモ』です。こちらは心が温かくなるお話です。優しさに触れたい方にはとてもオススメします。すごく好きです!
半分実話というこの話達を是非ご自分の目で確かめてください。そこにはどうしても否定しきれないナニカが存在しています。