第二首 バレンタインチョコ 十五句

 沸騰直前の熱湯を別のボウルに入れ、それよりひと回りほど小さいボウルに入ったチョコを、湯煎にて溶かしていく。

 溶けきったら無塩バターを加えて、更に混ぜて溶かし込む。

 バターも溶けてしまったらツヤが出てくる。そこにグラニュー糖も加え、また混ぜる。

 溶いた卵を三回から四回に分けてそれに加え、その都度混ぜてよく馴染ませる。

 ツヤも出て少しばかりヘラに抵抗を感じるようになってきたら、クッキングシートを敷いた型に生地を流し入れる。

 若紫の口にチョコの欠片を放り投げたとき、もう片方の手でオーブンのスイッチを押しておいた。

 百八十度に予熱したそこに、型ごと入れて、そのまま二十分焼く。

 二十分近くなると、オーブンから甘い匂いが漂ってくる。それにつられて、若紫も調理場に顔を出してはオーブンの中で膨らむそれを眺めていた。

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