第二首 バレンタインチョコ 二句

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「────若紫はさ、甘いものって食べるのか?」

 そろそろ、世にいうバレンタインデーだ。

 本来おれはチョコを貰う側なのだが生憎学校でおれが所属しているコミュニティに、そんな粋なことをしてくれる女子なんて一人もいない。

 ──いや、昔は確かにいた。けれど、どいつもこいつもひと月後ホワイトデーに渡されるおれからのお返し手作りクッキーを食べたいがために、既製品のチョコを寄越すだけだった。

 こんなことが昨年まで、毎年通算六年も連続で起きたいまとなっては、『見返りを求めない本命チョコなんてのは架空のものでしかない』と思い至ってしまっている。

 ちなみに、おれは見返りとして料理を振る舞うような性分は持ち合わせていない。そこまで自分の料理の腕を過信してもいないし、なにより、どうしても料理に対して失礼と思えてしまうのだ。

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