第二首 バレンタインチョコ 十三句

 手作りチョコを作るにあたって、板チョコを覆っているアルミホイル製のカバーをひたすら外すという行程は、どうあっても避けられない。

 当然のごとく、指先が徐々にベトベトになっていくわけだが、それに気をとられて逐一手を洗っていては、更に手際が悪くなる。

 全て剥き終わったら、包丁で粗く刻む。どうせこれから湯煎してとろけさせ尽くしてしまうんだ、細かくする必要性は今回はないだろう。

 ボウルに移したときに思い知ったが、一人のために板チョコ八枚は買いすぎだった。

「おれもお裾分けしてもらえばいいか」

 調理場で独り言を呟くおれに、若紫は、まだ実態の見えない料理に興味をそそられ、目を耀かせてこちらの様子を窺っている。

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