第二首 バレンタインチョコ 十四句
「若紫、お前も食うか?」
分量を合わせるにあたって、どうしても、省かなければならないチョコの切れ端も出てくる。
──手渡しだと、若紫のことだし、手の中で溶かしてしまいそうだな……。
「ほれ、口開けて上向いとけよー」
「こうか?」
天井を仰ぎ見るその姿は、最早ただのうがい中の小学生のそれでしかなかった。
若紫の口に板チョコの欠片を放り込む。
「ぬぁっ、あんまい……っ!こ、これ以上……、美味なるものを、みさとはついぞ、作る気か……?!」
「お前の師匠だからな、美味くなるようがんばるよ」
たったひと欠片の"板チョコの端くれ"がこんなにもハードルを上げるものだったなんて……。普段の料理より手間をかける代物とはいえ、若紫の期待の眼差しが痛い。
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