第二首 バレンタインチョコ 十七句
焼き上がったものを型から取り出し、適当に形を整える。
さて……、多分ここからが大変だ。
おれが全て焼き終えるまで、若紫のつまみ食いを阻止しなければならない。
────思ったそばから……、ほら、早速手を伸ばす若紫……。
「……────本当に美味くなるのは明後日だ。本当に美味しいものを食べたいなら、いまはなるべく手をつけず、ひたすら
「そんなこと……、わちしは聴いておらぬ故、てっきり
ほんの少し瞳を潤ませる彼女を見て、重要なことを伝え忘れていたことに気付く。
若紫に、いま作ってるものを教えていなかった。
いや、教えたところで納得するとは皆目思っていないが。
「あぁ、今日作ったこれは"ガトーショコラ"っていって、作ってから三日目が一番美味くなるんだと。だから、他の料理みたいに、焼きたてが一番美味い、って常識は通じないんだよ。そういや言ってなかったな、悪い。……けど確かにもどかしいよなぁ」
おれもこのもどかしさには覚えがある。だが、三日目が美味いのは間違いないから、結局は三日目に悔いるのだ。一日目に食べ過ぎたことを……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます