★★★ Excellent!!! その一打に命を燃やして 佐楽 鬼気迫る、とはこのことなのでしょうか。 描写も雰囲気にもけして苛烈な表現は用いられていませんが、物語の裏に確かに鬼が棲んでいました。 美しい、花のかんばせをした鬼が。 タイトルに惹かれて読み始めました。 美しく、恐ろしさも感じる言葉です。 文章が綺麗で読みやすかったです。 言葉に過剰な装飾もなく、淡々とした語り口ながら惹き付けられるお話でした。 レビューいいね! 1 2022年6月16日 12:07
★★★ Excellent!!! 都合の良い奇跡なんて、起こらない。 ハルカ とある奇病にかかった女性の話である。 彼女の脳内には枝が広がっているという。枝の先には蕾(つぼみ)があり、その蕾が花開くとき、彼女は死に至る。 病気の進行を止める手段はただひとつ。 『書き続ける』こと。 そんな彼女を、一人の青年が支える。 彼は、学生時代に彼女へ片思いをしていた。しかしその想いを告げることはできないままだった。 数年ぶりに彼女と偶然の再会をした彼は、彼女の病気について知ることになる。 青年の申し出により、女性は生活を一変させる。 実家を出てアパートを借り、『小説を書く』ための生活が始まる。 青年が家事などの生活サポートをすべて行い、女性はただひたすら『書く』ことだけに集中する。 外出はせず、家にこもり、人ともほとんど会わない。 食事はパンやおにぎりで、熱いものは冷ますのに時間がかかるため、おかずは冷めたものばかり。 力尽きて眠りに落ちるまで、活動エネルギーのほぼすべてが『書く』ことだけに費やされる。 創作をしている方の中には、そういった生活に憧れを抱いたり「羨ましい」と思う人もいるかもしれない。 しかし、凡人である私は「自分ならもっと人間らしく生きたい」と感じた。 さて、この作品の内容をざっと説明させていただいたが、この簡単なあらすじだけで読んだ気になるのはもったいない。 ストーリーもさることながら、『文章そのもの』も魅力的な作品である。 一文一文ごとにピンと張り詰めた空気が漂っていて、読むごとに追い詰められてゆくような緊張がある。 ひたすらに丁寧な美しさが重ねられてゆく。 「風景が頭の中に浮かぶ」というよりは「頭の中にある情景をそのままトリミングして文字に変換している」印象を受ける文章である。 そのため、ひとつひとつの場面が鮮烈で、リアルさよりも美しさが勝っている独特な作風である。 個人的には、 「店内の明るさが階段の行き止まりにこぼれ… 続きを読む レビューいいね! 2 2020年5月4日 23:14
★★★ Excellent!!! 「書く」ことは呪いですか、祝福ですか。 國枝 藍 美しい、と思います。 世界観の妙や筆力の素晴らしさはもちろんなのですが、「書く」ことに対する作者の捉え方がどうしようもなく美しい、と思ってしまいます。 この物語の前では何をどう書いても陳腐な表現になってしまうと思うので、これ以上は書かないし、書けません。 ただ、何かをつくる全ての人の心の深くに刺さる物語だと思います。ぜひ、ご一読ください。 レビューいいね! 3 2020年4月23日 04:23
★★★ Excellent!!! 願わずにはいられない作品 空薇 お願い、もう少し、もう少しだけ。何度そう願ったことか。 これは、先輩と後輩の、切ない恋の物語。 きっと今まで何度も見たことある関係なのに、独特の魅力がある。 それに私は名前をつけるんじゃ無くて、読む人それぞれに感じてほしい。 そう思わせてくれるとっても素敵な物語でした。 レビューいいね! 2 2020年3月15日 02:11
★★★ Excellent!!! 形にならぬ花、咲けずともその枝葉は心を覆い 冴月 まこと美しき短篇です。 思考を吐かねば、書かねば死ぬ奇病。共にある男女の機微。始終忍び寄る澱んだ気配……。 どれもこれもに興味を唆られ、それを表す悍ましさと美しさの同居した言葉選びに、ただただ感嘆させられます。 嗚呼、望まれぬ悼みの美しきことよ! 形にならぬ花、咲けずともその枝葉は心を覆い。 忘れ得ぬ花は、彼に根付いて朽ちることはないでしょう。 この感慨と感傷、ぜひご賞味あれ。 レビューいいね! 2 2020年2月6日 15:08
★★★ Excellent!!! 小説を書く人ならば、きっと心に刺さるでしょう…… ふづき詩織 頭蓋の内側に巣食った物語を吐き出したい。その衝動を理解できる人になら、この物語はきっと心に刺さります。そして小説を書くことに取り憑かれた皆さまは、誰しも頭蓋に花を宿していると思うのです。 書くことの苦しさと残酷さに真摯に向き合ったこの物語は、私の心に突き刺さりました。 ご一読をお勧めします。 レビューいいね! 3 2020年1月31日 23:06
★★★ Excellent!!! Du bist wie eine Blume sudo(Mat_Enter) 蕾が開けば、そのあと花が散る。 それは、必然であった。 蕾が開く。 それは、花開くときでもあった。 レビューいいね! 4 2020年1月31日 17:13
★★★ Excellent!!! 美文で綴られる切ない恋物語 雨伽詩音 Web小説で久しぶりにここまでの美しい文章と出会えただけでもうれしいのに、それが幻想的で切ない恋物語だということで、なおさら気持ちが高まりました。ヒロインの書くことに対する切実な想いと、主人公の純朴さがこの物語の太い幹を作り、そこに可憐な花が咲いていると感じました。たしかな表現力と文章力を感じさせながらも、そこに安易に溺れることなく、ストーリーをきちんと完結させる。誰にでもできることではないと思います。久しぶりにいい作品と出会えた幸運をしばらく噛み締めたいです。 レビューいいね! 4 2020年1月28日 17:12
★★★ Excellent!!! 咲くなと、願った まったく読書できてないとうふ【留守です】 枝に付いて膨らむ蕾に、咲くなと願うことがあるでしょうか。 開こうとする花弁を押し留める。それは、命を吸い上げるから。 そんな悲しい花があるでしょうか。 それでも花は咲く。いつか咲いてしまう。 その僅かな猶予に、抗って抗って生き抜く姿に敬意を抱きます。美しく儚く、けれど、眩しいほどに輝いた、そんな命の物語。 あなたはもう、この花を見届けましたか? レビューいいね! 4 2020年1月26日 23:00
★★★ Excellent!!! 圧倒的な描写力により頭蓋に映像満ちる 松尾 からすけ 筆力が違う。一目見た時にそう思った。 躍動感のある展開をしているわけではない。ジャンルは恋愛、燃えるような熱い展開も、危機一髪の状況でハラハラドキドキのスリルを味わう事もない。大きな山も深い谷もなく、淡々と物語は紡がれていく。それでも脳味噌に鮮明な映像を植え付けていった。 発想力が違う。あらすじを読んでそう思った。 花が人を殺す。文字を書き続けなければ脳味噌で美しい花が満たされてしまう。 花が咲くのは「幸福」を暗に示す。そして、花が散ることこそが「死」を意味する。だが、この作品では花が咲くことにより「死」が訪れる。その発想力に鳥肌がたった。 これほどまでに人を惹きつけるのも頷ける作品。短編を書かれている方や短編が好きな方は一度は読んでも絶対に損はしない。 レビューいいね! 5 2020年1月19日 10:54
★★★ Excellent!!! 花は何故咲いたのか? 野良ガエル 蕾が花開くとき、彼女の人生の幕は閉じる。 それは単なる時間切れか。 それとも満足したからなのか。 あるいは、彼を解放するためか。 答えは彼女の頭蓋の中。 我々にはそれを想像することしかできない。 レビューいいね! 6 2020年1月1日 20:22
★★★ Excellent!!! 新しい感情『花と頭蓋』 詩一 書かなければ死ぬ。 創作家の方ならば共感できるのではないでしょうか。 少なくとも私はそういう感覚が解ります。 しかし物理的にではないわけで。 あまりに感動したので色々語りたいのですが、多分全容を語り尽くしてしまいかねないので内容について触れるのはやめておこうと思います。それくらいに心動かされました。 この作品に触れて、読後感に満たされて、私は新しい感情を持ちました。 心打つ作品は、無かった感情さえも創り得るのだと知りました。 初めての感情ですので、名前はありません。ですが、もしもつけるとするならば『花と頭蓋』でしょう。 私は読み終わったあと『花と頭蓋』に満たされたのです。 みなさんも『花と頭蓋』を感じてみませんか? レビューいいね! 8 2019年12月28日 10:49
★★★ Excellent!!! 書くという病。 美澄 そら 作家ならば、作家だから……このお話に触れて何も感じない人はいないはずです。 優しくて、美しくて、でも緊張感が張り巡らされていて、呼吸をするのも躊躇っちゃうくらい。 お話を書いていてよかった。 この作品に出会えて、こんなに感動できるのだから。 レビューいいね! 4 2019年12月27日 00:15
★★★ Excellent!!! 儚くも美しい物語。 盛田雄介 まず、筆者の技量が素晴らしい。 読んでいて、その場所の情景が思い浮かぶのは、もちろんの事であるが、登場人物の心理描写も素晴らしい。 生命尽きるその前に必死に執筆に取り組むその姿を多くの人にも読んでほしい。 私もこの筆者の様な表現が出来る様に精進していきたい。 読めば、必ず製作の勉強になります。 是非、ご覧ください。 レビューいいね! 4 2019年12月26日 21:51
★★★ Excellent!!! これほどまでに美しく儚い死に際があるのでしょうか 侘助ヒマリ 芸術作品としての写真のように、被写体はもちろんのこと、構図、色彩、全てが鮮やかで艶やかで、残酷なまでに美しい掌編です。 頭蓋に咲き残る桜。 見上げた桜に憧れの先輩の姿を重ねて眺めた彼の心情に胸を打たれない人はいないのではないでしょうか。 レビューいいね! 4 2019年12月26日 12:52
★★★ Excellent!!! 光がつくる物語の影について 湫川 仰角 印象派と評される絵画には、『黒』を置かない、という特徴があると言われます。 もちろん陰影は黒色で表現出来てしまいますが、光の在り方を捉えようとした画家たちは、影をもたらす対象の固有色や補色を用いて、更にはそれらを混ぜずに並べて濁りのない要素として画面に置きました。 そうすることで、明るい部分から乱反射する光という表現を以て総体たる影を表したのです。 物語においても、明暗が重要であることは言うまでもありません。起伏と言い換えても良いでしょう。 本作における明は例えば、束田の健気な明るさであり、坂島先輩の儚い輝きであり、二人が執筆に注ぐ危うげな閃光となって現れます。 これらは要素として物語に置かれ、いたずらに濁りません。 そればかりか、これらの要素は私たちの目の中あるいは脳内において結合し、混ざりあい、一つの物語を紡ぐのです。 そうして紡がれた本物語の総体は、私たちに影や暗を突きつけるかもしれません。しかし、最終的に表現された影は、決して黒一色で表現し切れるものではない。 色のない花弁が落とした影は、スマホを握る手に翳る暗は、黒一色ではありえない。 その陰影を構成する色が何かは誰にも知る術はありませんが、結末という名の影は紛れもなく光によって表されていたと、そう思うのです。 レビューいいね! 7 2019年12月24日 00:28
★★★ Excellent!!! 美しいのレベルが違う きつねのなにか サラサラと小川を流れる水のように入ってくる文章。 憎しみも愛憎も無く、ただただ彼女の夢を叶える、支える語り手。 きっとね、書く人なら一度はなってみたい環境になっているんですよ、この空間。でも、絶対逃れられない時限爆弾が存在していて―― んー私が言葉を紡げば紡ぐほど作品が汚れていってしまう気がしますね。 とにかくストーリーから紡がれる文章から二人の思いから、何から何まで美しいです。これが文芸、これぞ文芸。 レビューいいね! 4 2019年12月23日 18:35
★★★ Excellent!!! これはきっと、そう、何かを創り出す者の宿命。 聖願心理 読了後、儚さ、切なさ、悲しみ。色々な感情が私の中を行き交いましたが、それでも感じてしまったのは、『宿命』『運命』という、ある意味逃げの言葉です。 宿命だから、運命だから、という言葉でこの作品を、物語を、人生を、片付けてはいけないのは、わかっているつもりです。 でも、感じられずには、いられなかったです。 これは、『宿命』なんだと。 『書く』ことが、『生きること』。そうなってしまった先輩の。 あまり言うと、ネタバレになってしまうので控えますが、でもやっぱりこの物語は、『宿命』。決まっていた物語なんだと思います。勿論、良い意味で。 物語という枠を超えた、宿命。人生という名の、宿命。 それを鮮やかに、表現している作品だと思います。 世界観に引き込まれていく、表現に胸を打たれる、そんな作品です。 世界を創っている、全ての創作者に読んでもらいたい作品です。 レビューいいね! 3 2019年12月23日 15:23
★★★ Excellent!!! 書き、生む、物書きの業と言葉の凄み 野々ちえ 小説に限らず、なにかを創り、表現するというのはこういうことなのだろうと、理屈ではないところで納得させられる。レビューであれこれ書くことをためらわせるくらいの凄みがある物語。 まずは本編を読んでみてほしい。書き、生む、物書きの業と言葉の凄み。ラストの余韻が深く胸に届きます。 レビューいいね! 3 2019年12月23日 00:34
★★★ Excellent!!! 花が咲き、空虚な実をつける。 近藤銀竹 「書かなければ死ぬ病気」に罹った先輩と、彼女に焦がれる主人公の恋と奇妙な共同生活の物語。 淡々と物語を紡ぐ先輩と、それを黙々と支える主人公。 病はどうなっていくのか。 想いは伝わるのか。 先を知るのが怖い。しかし、読み進める手は止まらない。 レビューなのに、書けば書くほど作品の色合いや感情移入していた感覚が薄らいでいく。 いや、もうこのレビュー読まなくていいから、早く本編読んで、一緒に胸を締め付けられましょう! レビューいいね! 3 2019年12月22日 16:40
★★★ Excellent!!! ものを書く人間の脳に巣食う狂気の花に、命を奪われる。 aoiaoi 言葉を失います。 胸が強烈に圧迫され、潰れてしまいそうな——そんな凄まじいとも言える余韻が、いつまでも残ります。 ある病に侵された美しい女性。 その症状を知るほどに、何か背筋が寒くなる思いがしました。 「消化されずに溜まっていく思考が、頭蓋内に巣食う花の蕾を膨らませる。書き続け、吐き出し続けなければいずれ頭蓋の中で蕾は花開き、患者の命を奪う」——。 もしかしたら、この病はきっと、すべての物書きが患っている。 そんな気がしました。 ただ、それが蕾や花を持たず、主の命を奪う事もない、というそれだけの違いで。 吐き出さなければいられない。突き動かされるような病にも似た何かが、ものを書く人間の脳には必ず巣食っているのではないか——そんなことを思いました。 病に侵された女性は、書き続けます。偶然再会した、彼女に恋心を寄せる後輩の助力を得て。 いずれ尽きる命と諦めることなく、寝食すらを削り。 桜を見上げる度に、きっとこの物語と——最後の瞬間まで物語を書き切った、強く美しい女性を思い出す。 ものを書く人間の一人として。 そんな気がしています。 レビューいいね! 3 2019年12月21日 18:39
★★★ Excellent!!! 至宝なる執筆 マスケッター あらゆる点で完璧な文学作品。 小説は、それに触れた人々を作者と読者に必然的に分けてしまう。にもかかわらず、本作は作者と読者がああした形で世の理(ことわり)を超越する。少なくとも私の心の中ではそうなった。 恐るべき衝撃を予期しつつも、早く先を読みたいとかきたてられる筆致には逆らえない。そして気づくのだ、自分自身が主人公と一体化していることに。最初の一文字目を読んだ瞬間から。 必読本作。 レビューいいね! 4 2019年12月20日 23:53
★★★ Excellent!!! 花は宿主を選ぶのか 如月芳美 『書かないと死ぬ』 ドキリとさせられる言葉だ。 モノカキを自称する人ならば、皆一度は経験しているのではないだろうか。 だがこの世界観の美しさよ。 脳のひだの隙間を文字で構成された花の蔓が侵食していき、その先端に蕾を成す。 その花が開いた時に彼女は花に取り殺される。 残された時間の中で、砂時計の砂がさらさらと音も立てずに積もっていくように、彼女の脳の中の花も先へ先へとその身を伸ばしていくのだ。 本当は…… この花は「書く事で成長が遅くなる」のではなく「書いたら書いただけその文章が花として成長していく」のではないだろうか。 彼女が『モノカキ』として生き、また死ぬために、その花は寄生する宿主を自ら選択しているのではないだろうか。 などと、モノカキの端くれは想像してしまうのだ。 レビューいいね! 2 2019年12月20日 01:15
★★★ Excellent!!! 死を扱いながらも陳腐ではなく、完成度の高い文章が散りばめられた傑作。 オレンジ11 コメント欄で語彙を失いました。上手すぎる。 しかも技巧に溺れず、ぐいぐい読ませる構成力。素晴らしい。 視覚的にも鮮やか、心理描写も完璧。 印象的なフレーズはいくつもありますが、一つ上げるならこれかな。 はっとしました。 >統一感のない家々に紛れるように、入り口の小さな喫茶店があった。 レビューいいね! 3 2019年12月18日 17:10
★★★ Excellent!!! 私と、君と、物語。 プラナリア 書き続ける運命の、病。 そんな彼女をひたむきに支える「僕」。 ここには、私と、君と、物語しか無い。 先輩の台詞が、胸に響く。 最後の桜の、美しさ。 こんなにも理解されて、魂を込めた作品ごと愛された彼女は、幸せだと思う。 命を削った彼女の作品は、これからも人々の心を捕らえるんじゃないだろうか。 「僕」は、いつか、物語を書くんじゃないかなって、私は勝手な空想をする。 彼女の物語が、「僕」の中で、花開く。 読み終えた後も、余韻に浸る作品です。 レビューいいね! 3 2019年12月17日 20:16
★★★ Excellent!!! それがわたしたちのサガだから 濱野乱 文章を紡がなければ死を至る病にかかった先輩。僕は見守ることしかできなくて… 我々はここまで必死に何かを伝えようとしたことがあっただろうか。 人生は有限だということを忘れてはならない。 レビューいいね! 3 2019年12月17日 12:40
★★★ Excellent!!! その花は、悲しく、美しい 藤屋順一 偶然再開した憧れの先輩に不意に聞かされる思いがけない言葉、自らのこめかみを指差し、冗談めかして儚い笑みを浮かべ、ここに花の形をした爆弾が埋まっている。と。 その花は開花とともに死をもたらす未知の病、その養分は消化されずに滞留する思考。 未だ蕾のその花の開花を抑える術は、頭蓋の中に渦巻く想いを言葉に綴り続けること。 その開花を拒むため、二人は共に生き、想いを言葉に綴る生業に希望を託す…… 別れのときが迫る中で穏やかな生活を営む二人だけの世界は、手を取り合い懸命に生きる姿を描きながらもどこか退廃的で、迎える結末も甘美で儚い、まさに桜の花のように美しい物語です。 レビューいいね! 3 2019年12月15日 22:41
★★★ Excellent!!! 余韻に浸れる幸せを、皆さんにも是非! 夜野 桜 発想が一味違うこの作品の魅力はなんといっても読み終わった後の余韻です! この作品を読んだ自分は電子書籍にもかかわらず、本を閉じてはぁーと息をはく あの幸せを錯覚しました。 もう感無量です。 切なさ溢れるこの作風には、もちろん合う合わないがあると思いますが 皆さんにも是非読んでいただきたいです! レビューいいね! 3 2019年12月15日 18:53
★★★ Excellent!!! 詩的な着想から広がる物書きの業とその果てに待つもの 一田和樹 書き続けなければ死ぬというのは、ある意味物書きの業と言えそうです。着想の奇抜さと描写の美しさが主人公と先輩の儚さを際立たせ、切ない運命が胸に迫ります。丁寧に重ねられた言葉も魅力ですが、なんといっても着想が秀逸です。 きれいにまとまった花の病の物語を堪能いたしました。 レビューいいね! 3 2019年12月13日 23:35
★★★ Excellent!!! その想いは花となり、いつかはだれかに届くだろうか。 眞城白歌(羽鳥) 9000字弱の文字で描かれた、絵画のような映画のような物語。 架空の病を扱ってはいますが、それに向き合う姿は現実味をともなって、読む私たちの心へと迫ってきます。春に咲き誇る桜の花を見て、私たちは二人を想い出すのでしょう――、 と、ここに私は物語を『届かせる』ことの真髄を感じました。 だれもが夢を叶えられるわけではない現実の中で、物語が、あるいは絵が、そういう想いがあふれて、窒息しそうになることもあるでしょう。きっと、だれだって。 書き続け、描き続けることで、それはいつかだれかに届くかもしれない。 多くの方に読んでいただきたい、美しい描写に彩られた凄絶な物語です。 レビューいいね! 4 2019年12月13日 12:59
★★★ Excellent!!! 紙面に咲き誇る彼女の花 彁はるこ 憧れの先輩との再会。気軽い問いをするつもりが、返ってきたのは予想もできない一言。そこから始まる二人の同棲生活。 衝撃的な架空の病気を美しく、激しく、丁寧に、リアルに描いていて、それに蝕まれる人間の内側と、それに寄り添う人の想いを緻密に繊細に綴ったお話は読みながら胸が潰れるほど熱くなりました。 先輩の文字に込める激情の生々しさは、まさに命を散らして書いていると……。このお話は物語であると同時に、彼女が生きていた証でもあるでしょう。読みながら泣いてしまいました。悲しいわけではありません。先輩は最後まで激しく美しい方でした。だからこそ、胸が熱くなり涙しました。ただし、あくまでもこれは私が感じたことです。きっと、このお話は読む人によって感じ方が異なると思います。 物語ですが、人生です。 彼女の人生と、彼の想いと、残されたものを見て感じることは人それぞれ変わると思います。ただ明確なのは、彼女が確かにそこにいたということ。そして彼の想いの深さ。 二人が過ごした日々は、綴られた想いは、残された想いは、是非ご自分の目で確かめてください。この儚くも豪快に咲き誇った壮絶な人生は、きっと美しい花を見た後のように頭蓋の内側に印象深く残るでしょう。 レビューいいね! 3 2019年12月12日 13:01
★★★ Excellent!!! 花の頭蓋に、男は何を言えばいいのか。 有澤いつき 頭蓋に花が満ちていき、それが埋め尽くされたときに彼女は死ぬ。衝撃的な病が冒頭に示されて、美しい病状と残酷な死のコントラストが印象的でした。効果的な治療はなく、延命の手段は脳内の言葉を吐き出していくことくらい。文字として吐き出し小説を紡ぐ先輩の姿は、物書きとしての苦悩をまざまざと見せつけられるかのようです。書かなければ生きていけない。生きていけないが産み出せない。 頭蓋に花が満ちる、そこまでの二人の日々に尊さや儚さを感じますが、個人的に印象に残っているのは最後のシーンです。何を言えばいいのか、どう返事をすればいいのか。そこに彼の思いが詰まっている気がして、胸を抉られる思いです。 レビューいいね! 3 2019年12月11日 23:36
★★★ Excellent!!! 最後の問いかけのせつなさ kattern@5/20書籍発売 短編作品にはユーモアを求めて読み漁っているのですが、タイトルにつられてぽへぽへと軽い気持ちで読みだしたら、表題の通り最後に持っていかれた。問の内容自体はなんてことないのだ。ただ、ストーリーも逸れることなく、練られた設定をそつなく活かし、見事な文体でしむきっての、そこから放たれたむせ返るような独白からの問いなのだ。作中、どこか幽鬼のような静けさを貫いていた主人公が、まさに人間性すべてをさらけ出して、あの言葉を紡いだのだと思うだけで、もう切ない。 レビューいいね! 3 2019年12月11日 22:36
★★★ Excellent!!! やさしく、美しく、壮絶な物書きの一生 松宮かさね 非常に美しい文章と描写で綴られる、とある物書きの女性とそれを支える男性の物語です。 久しぶりに憧れの先輩に会った主人公が、「いま、何してるんですか?」と問えば、彼女はこう答えます。 「死ぬ準備、かな」 そこから、死にあらがうための、もしくは死を完全なものにするための同棲生活が始まります。 タイトルになっている「花と頭蓋」のイメージが鮮烈です。言葉で説明するのがレビューなのですが、己の拙い文章力では言い表せない感情を頂きました。 たとえば美しい花や景色を見たとき、100人いれば100人が違った感じ方をすると思います。この物語の描写の美しさ、凄まじさも、言葉にしてみたらどれも何か違う気がしてしまって、うまく表せません。 ぜひ実際に読んで味わっていただきたいです。 死と真っ向から向かい合う女性の話ですが、壮絶ではあれど、悲惨さは感じませんでした。 愛を持って彼女を受けとめ、支える主人公の存在があったからです。 美しくて、切なくて、やさしくて……。とても栞のような壮絶な生き方はできませんが、地獄の底で芽吹いた花のような、ふたりのやさしい関係性には憧れを抱いてしまいます。 レビューいいね! 4 2019年12月10日 20:46
★★★ Excellent!!! もし自分が侵されたら ソルティ 自分の頭の中には、曖昧な状態で眠っている沢山の物語があります。 しかし怠惰な自分には、それらすべてを出力するような気力はありません。きっとそのほとんどは、ただの妄想のまま朽ちていくことになるでしょう。 この作品のヒロインは、“物語を書き続けなければ頭蓋骨のなかを花に支配されて死ぬ”病を抱えています。 だから、書きます。好調だろうがスランプだろうが、献身的な主人公の助けを借りて、どれだけコンクールに落選しても、とにかく書き続けます。 力尽きて眠りに落ちるまで、食事中ですら書き続けます。外界との繋がりを遮断し、昼も夜もなくただただ書き続けます。 それでも少しずつ少しずつ、「花」は成長を続けます。頭の中の物語を養分にして、彼女の脳を残酷に蝕んでいきます。 もし自分がこの病に侵されたら。そんな想像を否が応にもしてしまう、物悲しくも素晴らしい作品です。執筆経験のある方には、特に強くおすすめすます。 レビューいいね! 3 2019年12月10日 19:14
★★★ Excellent!!! 言葉にならない物語がいつか、わたしを《殺》すだろう 夢見里 龍 頭のなかに溜まり続ける物語が、言葉が、いつかあなたを殺すとしたら、あなたはどうしますか。 数年振りに再会した大学時代の先輩は、「いま、何してるんですか?」という《僕》の他愛ない問い掛けに、こまったように微笑んだ。 「いま、ね。死ぬ準備、かな」 彼女を侵す病。それは言葉にならない物語が、頭のなかに溜まり続け、死に至らしめるというあまりにも幻想じみたものだった。 頭蓋骨のなかに溜まり続ける、思考。膨らみ続ける言葉の莟が咲いたとき、《彼女》は息絶える。延命措置はひとつ。小説を書き綴ることによって、それらを頭の外側に吐きだすことだけ。 それも、ほんとうに延命がかなうかはわからない。 それでも、学生時代から彼女のことを好きだった《僕》は、その僅かな望みに賭けると決めた。昼夜問わず、物語を書き綴る彼女の側について、その作業を支え続けようと。 「ここは静かだよ。私と、君と、物語しかない」 これは物語に蝕まれ、言葉に侵された、ひとりの物書きの幻想譚です。 静かな物語でありながら、最後には激しく胸を揺さぶられます。書き続けることでか細い息をなんとか繋いでいるような、それでいて、いき急いでいるようでもある先輩の背中が、読後しばらく経っても目蓋の裏に焼きついて離れません。 とても美しい幻想文学です。 是非ともご一読いただきたいです。 レビューいいね! 3 2019年12月7日 21:21
★★★ Excellent!!! これは世に広まるべき作品だ。これは広い海に漕ぎだしてしかるべきだ @kuronekoya 作中の文言を、そのままレビューの言葉に使わせてもらいます これは世に広まるべき作品だと。これは広い海に漕ぎだしてしかるべきだ、と 少し、不思議 けれど、どこかの短編文学賞の最終選考作と言われても違和感のない文芸風味 よい作品を読ませていただきました レビューいいね! 3 2019年12月6日 23:07
★★★ Excellent!!! 咲かずにいて欲しい花もあるのです。 keijing 憧れていた先輩と再会した主人公が、いま何をしているのかと軽い気持ちで訊ねたところ「死ぬ準備」というとんでもない返事を頂いてしまったところからお話は始まります。 死期の近い先輩の頭の中には花に似た爆弾があり、いつかその花に埋め尽くされて死ぬという。 主人公は先輩に寄り添い、花満ちていく彼女の頭の中から紡ぎ出される数々の物語を世に出す手伝いをするように。 文字という名の花にまみれて二人で過ごす日々、その描写の至るところまでが究極に美しく、それでいて儚い。 最後にはじんわりとこちらの心にも寂しさを残して散っていく、そんなとても素晴らしいお話です。 どうかご一読をば。 レビューいいね! 4 2019年12月6日 14:51
★★★ Excellent!!! 彼は自ら、喪失に飛び込んだ 浪間丿乀斎(なみまへつぽつさい) 断言しよう。 読者の心を映す鏡となる物語である、と。 主人公の束田は、 愛し、尊敬する先輩、坂島を喪う。 「それだけの物語である」。 敢えて、そう申し上げたい。 ただ、それだけの結末の先に、 一握りの未来が示される。 その未来を、 読者であるあなたがどう描くのか。 それらはあなたの心が、気持ちが、 ここまで生き、過ごしてきた境遇が、 この静謐で、はかなく、 どこか艶めかしくさえある物語に触れ、 どう響き、揺れ動いたか、による。 読み終えた時、ああ、と唸った。 それは、散りぎわの桜を 眺めるがごとき心地だった。 レビューいいね! 4 2019年12月4日 10:54
★★★ Excellent!!! 切ない物語。だけど読み耽ってしまいました。 ばびぶ@転生王女の書記官7月3日完結済 あらすじにもある通り、ヒロインは死の病を抱えています。そんなヒロインと主人公のやり取りはとても切ないのですが、それと同時に美しさも感じました。 物語中の状況描写がとてもお上手で、私もこんな表現力が欲しい! と思いながら、思わず読み耽ってしまいました。 もっと読んでいたいと思える作品でした。 レビューいいね! 3 2019年11月30日 21:45
★★★ Excellent!!! その花を、二人が並んで見ることはない 南雲 皋 短編、さらりと読める物語でありながら、一本の映画を観たような重厚な物語。 彼女を蝕んだ花を、それと同じ花が現実世界にも咲き誇る様を、彼女の携帯に掛かってきた番号を、彼はどんな気持ちで見つめるのか。 息を止めて一気に読み干してしまうような、そんな苦しくも美しい短編です。 レビューいいね! 4 2019年11月30日 08:38