概要
頭蓋に花満ちるとき先輩は死ぬ。無数の、まだ生まれ来ぬ物語と共に。
職を失った僕は平日昼間の住宅街で、かつて憧れた先輩の姿を見る。彼女、坂島栞は“物語を書き続けなければ頭蓋骨のなかを花に支配されて死ぬ”病を抱えているという。
生きているうちに彼女の作品を世に出したい。僕の提案は受け入れられて、彼女と物語、それから彼女の頭の中に巣食う花との暮らしが始まった。
生きているうちに彼女の作品を世に出したい。僕の提案は受け入れられて、彼女と物語、それから彼女の頭の中に巣食う花との暮らしが始まった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!都合の良い奇跡なんて、起こらない。
とある奇病にかかった女性の話である。
彼女の脳内には枝が広がっているという。枝の先には蕾(つぼみ)があり、その蕾が花開くとき、彼女は死に至る。
病気の進行を止める手段はただひとつ。
『書き続ける』こと。
そんな彼女を、一人の青年が支える。
彼は、学生時代に彼女へ片思いをしていた。しかしその想いを告げることはできないままだった。
数年ぶりに彼女と偶然の再会をした彼は、彼女の病気について知ることになる。
青年の申し出により、女性は生活を一変させる。
実家を出てアパートを借り、『小説を書く』ための生活が始まる。
青年が家事などの生活サポートをすべて行い、女性はただひたすら『書く』ことだけに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!圧倒的な描写力により頭蓋に映像満ちる
筆力が違う。一目見た時にそう思った。
躍動感のある展開をしているわけではない。ジャンルは恋愛、燃えるような熱い展開も、危機一髪の状況でハラハラドキドキのスリルを味わう事もない。大きな山も深い谷もなく、淡々と物語は紡がれていく。それでも脳味噌に鮮明な映像を植え付けていった。
発想力が違う。あらすじを読んでそう思った。
花が人を殺す。文字を書き続けなければ脳味噌で美しい花が満たされてしまう。
花が咲くのは「幸福」を暗に示す。そして、花が散ることこそが「死」を意味する。だが、この作品では花が咲くことにより「死」が訪れる。その発想力に鳥肌がたった。
これほどまでに人を惹きつけるの…続きを読む