★★★ Excellent!!!
都合の良い奇跡なんて、起こらない。 ハルカ
とある奇病にかかった女性の話である。
彼女の脳内には枝が広がっているという。枝の先には蕾(つぼみ)があり、その蕾が花開くとき、彼女は死に至る。
病気の進行を止める手段はただひとつ。
『書き続ける』こと。
そんな彼女を、一人の青年が支える。
彼は、学生時代に彼女へ片思いをしていた。しかしその想いを告げることはできないままだった。
数年ぶりに彼女と偶然の再会をした彼は、彼女の病気について知ることになる。
青年の申し出により、女性は生活を一変させる。
実家を出てアパートを借り、『小説を書く』ための生活が始まる。
青年が家事などの生活サポートをすべて行い、女性はただひたすら『書く』ことだけに集中する。
外出はせず、家にこもり、人ともほとんど会わない。
食事はパンやおにぎりで、熱いものは冷ますのに時間がかかるため、おかずは冷めたものばかり。
力尽きて眠りに落ちるまで、活動エネルギーのほぼすべてが『書く』ことだけに費やされる。
創作をしている方の中には、そういった生活に憧れを抱いたり「羨ましい」と思う人もいるかもしれない。
しかし、凡人である私は「自分ならもっと人間らしく生きたい」と感じた。
さて、この作品の内容をざっと説明させていただいたが、この簡単なあらすじだけで読んだ気になるのはもったいない。
ストーリーもさることながら、『文章そのもの』も魅力的な作品である。
一文一文ご…
続きを読む