圧倒的な描写力により頭蓋に映像満ちる

 筆力が違う。一目見た時にそう思った。

 躍動感のある展開をしているわけではない。ジャンルは恋愛、燃えるような熱い展開も、危機一髪の状況でハラハラドキドキのスリルを味わう事もない。大きな山も深い谷もなく、淡々と物語は紡がれていく。それでも脳味噌に鮮明な映像を植え付けていった。

 発想力が違う。あらすじを読んでそう思った。

 花が人を殺す。文字を書き続けなければ脳味噌で美しい花が満たされてしまう。
 花が咲くのは「幸福」を暗に示す。そして、花が散ることこそが「死」を意味する。だが、この作品では花が咲くことにより「死」が訪れる。その発想力に鳥肌がたった。

 これほどまでに人を惹きつけるのも頷ける作品。短編を書かれている方や短編が好きな方は一度は読んでも絶対に損はしない。

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