人は、意味もなく忠義を尽くすというのは難しい。
形のない恩義に対して忠義を尽くし続けることは難しい。
得てして、その恩義を別の形にする。
わかりやすい指標として、やはりそれはお金であったり待遇だったりする。
人は、対価をもって忠義を尽くすことがわかりやすくて好きだ。
しかし、動物的衝動を嫌う人間は理性という謎の根性論でお金を汚いという。
騎士は。
騎士はなぜ忠義を尽くし、主のために忠実に働くのか。
いや。
忠実に働きたいと思えるのか。
自身のプライベートが豊かになるなら、私も忠義を尽くそう。
しかしそれがなされないのなら、愚連隊になるしかない。
…盛り場を歩くだけの「懐」もない私は愚連隊にもなれない、か。
白すぎる暗黒騎士になりたくて仕方がないのだ。
さぁ、私という名の昼食のコストを削る暗黒騎士の出陣だ。
冒頭から引き込まれます。
別府の温泉につかっていたはずなのに、いつのまにか見知らぬ場所にいた主人公。
見慣れない生物の出現。
ひしひしと感じる、身の危険。
――そして、暗黒騎士の登場。
不可解な状況に戸惑う主人公の様子に、何が起こったのかとドキドキしながら読み進めました。
やがて、とんでもないことに気付きました。
「あっこれギャグだ」
とても文章が巧いです。
テンポが良い。状況の描写もわかりやすい。
そして、なにより「間」の取り方がめっちゃうまい。
同じパターンを繰り返しつつ、豊富なバリエーションを見せ、最後はスケールが大きい話になってゆく。
笑わせ方がうまいなあとつくづく感心しました。
わずか3分で読める短いお話です。
そして、読後は温泉につかった後のようなリラックス効果がもたらされます。
忙しい方にこそ、ぜひ読んでいただきたい作品です。