ものを書く人間の脳に巣食う狂気の花に、命を奪われる。

言葉を失います。
胸が強烈に圧迫され、潰れてしまいそうな——そんな凄まじいとも言える余韻が、いつまでも残ります。

ある病に侵された美しい女性。
その症状を知るほどに、何か背筋が寒くなる思いがしました。
「消化されずに溜まっていく思考が、頭蓋内に巣食う花の蕾を膨らませる。書き続け、吐き出し続けなければいずれ頭蓋の中で蕾は花開き、患者の命を奪う」——。

もしかしたら、この病はきっと、すべての物書きが患っている。
そんな気がしました。
ただ、それが蕾や花を持たず、主の命を奪う事もない、というそれだけの違いで。
吐き出さなければいられない。突き動かされるような病にも似た何かが、ものを書く人間の脳には必ず巣食っているのではないか——そんなことを思いました。

病に侵された女性は、書き続けます。偶然再会した、彼女に恋心を寄せる後輩の助力を得て。
いずれ尽きる命と諦めることなく、寝食すらを削り。


桜を見上げる度に、きっとこの物語と——最後の瞬間まで物語を書き切った、強く美しい女性を思い出す。
ものを書く人間の一人として。
そんな気がしています。

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