超絶美幼女らしいこの姿に似合わない
「それは私が古道具屋で手に入れたものだ! 誰にもやらん!」
男はあくまでも自分の所有物だと強弁する。
いや、私が水晶を加工して作ったのだから、私の物に違いない。見覚えの有るキズもあるしな。
では、流れを整理してみよう。
まず、私が所持していた物を、光るものが大好きな鳥が持っていく。次に、鳥がどこかに落っことす、または冒険者にやられる。
手に入れた冒険者がしめしめと自分の物にするが、怨念水晶の力に引き寄せられる厄介な連中に辟易し、古道具屋に売る。それも恐らく買い叩かれて安値で。
で、古道具屋の日当たりの良い場所で浄化、それを見つけたこいつが購入し、怨念を注入し現在に至ると。
しかし、怨念水晶の存在を知っているなど、かなり危険な輩に違いない。勿論ナサリアに魔法使いとして一般常識だ、的な事を言ったのは誤魔化すためだ。悪魔には一般常識だが、人間はそうではないだろう。
コイツはどうせ、黒魔術の書みたいなものを読みふけっていて知ったのだろうが、アブナイ奴であることは間違いない。悪魔として、こういう輩を下僕にするのはやぶさかでないが、今こんなのを連れて歩く気にもならない。超絶美幼女らしいこの姿に似合わないのは間違いない。
言っておくが、元の姿は超・超絶美女だがの。
「何をブツブツ言っている! 聞いているのか?」
あー、いつもの癖が出た? 心の声が漏れとった?
「こいつを悪用したせいで、困っとった連中が居る。要するにお前さんは原因。犯人ってとこじゃな」
この怨念水晶も、一度は鳥に持っていかれて諦めたモノだ。今更、再度手放す事になろうがどうという事は無い。
「人聞きの悪い事を言うな! 私は実験をしていたのだ!」
だから、その実験が駄目だと言っておるのに分からんのか。これだから魔法研究者とかそういう類の連中は……。そこは悪魔も人間も変わらんということか、覚えておこう。
「あー、これは明日以降の私の飯代に変わる。ついでにおまえさんも突き出せば、もうちょい報酬上がるかの?」
この理解力の足りない男を黙らせるにはどうしたら良いだろう。
お馬鹿さんめっ、って特大火球をぶつけてやりたい。
そう、街中で火球だの雷撃だのをぶっ放すのはやぶさかではない。……というかやりたいが、そこをぐっと堪えて……。
何気に私、忍耐力上がってないか? いや、そもそも悪魔に忍耐力って必要か?
「だから、何をブツブツ言っている! 聞いているのか?」
あー、また癖が出た? あんた何か言ってたの?
まあ襲ってくる様子も無い相手に強力な魔法をかけるほど、悪魔も見境なしではない。……多分な。とはいえ……。
「だー! めんどくさい!
私の魔法が瞬時に発動すると、淡い水玉のようなものが男を包み込み、そのまま抗うことなくその場に倒れ込んだ。
最近予備詠唱無しで、テキトーに魔法を使うことが多くなったな。いかんいかん。
人間と対峙したときには、威厳を持って恐怖心を煽るように詠唱せねばならんというのに。これは父上の教えじゃ。ちなみに、戦闘で緊迫しているときにはそんなの気にせんでええ、と言われておる。テキトーだな、父上も。
うるさい男が眠ったところで、後始末をしようとしたのだが。
「しまった。男を眠らせたはいいが、この体(幼女)ではどうにもならんではないか」
私も後先考えないな……。反省。
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