奴らは倒せんわい
「ここに責任者……、例えば司祭とかはおらんのか?」
「司祭様ですか?」
一瞬、修道女は困ったような素振りを見せる。
「ええと……、私達はギルドにあった依頼を見てここに来たんです」
「ああ、依頼は私が出しました。その……、司祭様は先日お亡くなりになったばかりで、助祭様が居られるわけでもないので、新しい司祭様が来られるまで私が代理を勤めております」
なるほど、ということはあの強力な結界のようなものは、司祭のものではない、という事になる。では、他に誰かが居るという事か。
下手をすれば正体を見破られる可能性もあるので、安易な行動を控えなくてはならない。
「で、ご依頼の件なのですが……」
「ああそうでした! 司祭様がお亡くなりになる少し前から、邪悪なものがこの教会に現れるようになりまして……。それを退治して頂きたいのです。なに分、私一人では出来る事も知れておりますので」
「ん? 私一人、と言ったか?」
私は即座に聞き返した。
「教会の者は私のみ。他に手伝って下さる方が二人と、孤児が三人です」
するとその中の誰かが、危険人物という事になる。
「ああ、すまんの。話しを続けてくれ……」
「随分偉そうだな、つるぺた」
「いや、元からこういう話し方なんじゃから、変えろと言われてもできん」
フィリアは納得したように苦笑いして、引き下がる。
「あの、よろしいですか……?」
「はい、お願いします。その……邪悪なものっていうのは」
「お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、既にこの教会に居るのです」
私の事ではないな? 多分。
「居る?」
フィリアが慌てて周囲を見回す。
「先程からずっと、あちこちから気配がしておるが、アレじゃな?」
「アレでございます」
修道女の眉間にシワが寄る。嫌悪感丸出しな反応だった。
「アレって何さ?」
ポンコツエルフには理解できなかったようなので、私は無言で壁を指差した。
「ふぎゃーーーーーーーーー!」
視線をやったポンコツエルフが悲鳴を上げた。
「ああ、邪悪なるもの!!!」
修道女は祈るかのように手を合わせる。瞬間に、凄まじい聖のオーラが発せられた。
その勢いに私は一瞬たじろぐが、持ちこたえた。あの力は、この修道女によるものだったという事か。私は驚くと同時に、苦笑した。恐ろしいほどの聖の力を引き出しているが、あの邪悪な者には無駄な抵抗でしかない。
「その力では、奴らは倒せんわい……」
はあ……とため息をつき、聖の力に気圧されそうになりながら、足を踏ん張る。あまり長時間この力に晒されていては、私の方が持たない。
「ナサリアが受けてきた依頼じゃからの、本人に責任を取ってもらうしかないな」
「え? なに? 邪悪なものって何?」
ナサリアは理解していない。奴等の正体に。
「教えてやれ、ポンコツエルフ!」
「こっんの、ナサリアの馬鹿ーーーー! この依頼、全部あんたに任せた!」
「は? え?」
「敵は……アレだっ!!」
フィリアが指差した先、そこに存在したのは壁を走る小さな黒い物体。
「ぎゃーーーーーーーーーーー!」
ナサリアは目視した瞬間、絶叫した。
ほれ、ムカデのほうがマシじゃったろ?
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