カラヴィンカの祝福

作者 鍋島小骨

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★★★ Excellent!!!

コンパクトにまとまった模範的なファンタジー小説でした。リーダビリティも高く、あっと言う間に読んでしましました。すごくよくできていると思います。細部にわたって設定が練られており、神話の織りなす世界観も読み応えあります。素敵な表紙と挿絵をつけて本にしたいくらいです。本物川小説大賞は深い!
「神は細部に宿る」と言いますが、その世界を際立たせるちょっとした細部の描写がもう少しあると、設定と世界観がより豊かになったような気がします。それは服装、食べ物、髪型、習慣なんでもいいのですが、日常当たり前にあるもので、でも我々には明らかに異質で心を躍らせるなにかがあるものです。
小説では過去の設定や世界観、登場人物をレゴのパーツのように自在に組み合わせて、全く新しく独創的なものを作ることができます。でも、そこにあえて手書きでなにかを書いたり、手作りのものを加えればさらに全体を際立つこともあります。
全くもって個人的な感想ですが、もっとマジックリアリズムに振って『アラビアの夜の種族』みたいなものにしてもおもしろいと思いました。

★★★ Excellent!!!

神話にも似たこの物語はファンタジー小説好きには必見の一話だ。
世界観は短編とは思えないほどに作り込まれており、それでいながらくどさを感じさせない面白さがある。
ギリシア神話や北欧神話が好きな人、上橋菜穂子の『獣の奏者シリーズ』や『守り人シリーズ』が好きな人、クラーク・アシュトン・スミス作品が好きな人にオススメしたい作品。

★★★ Excellent!!!

何よりもまずこの作品で一番好きな一文。

「おれを呪う力を、時には誰かを助けるために使ってもいいはずだ」

忌まわれて故郷を出て、それっきり。
孤独でいることが唯一好きな人に報いる道だと、長い時を独りですごした男が、片翼を見つける物語。

雪と色を使った表現が美しく、引き込まれたまま物語はクライマックスへ。

こう、鍋島作品の魅力は言語化できる物もできない物もたくさんあるのですが、鍋島さんの名付けのセンスがとても好きで、とりあえず冒頭三文字で僕はやられました。

これは願望ですが、主人公が生を全うする能力を獲得したんだったらいいなぁと思ってます。

「今回も良かったぞ鍋島ぁっ!」

という私の心の咽び泣きを添えて、本レビューの締めくくりといたします。

★★★ Excellent!!!

 短い字数の中でよくぞこれほどのドラマと映像美を盛り込めたと思う。
 冷たく凍りつく季節感、謎めいた召し使い、そしてストイックにしてニヒルな主人公。一つ一つの場面の盛り上げ方が実に秀抜で、クライマックスにはファンファーレが鳴り響く。
 短編ファンタジーとして力強く称賛し、勧めていきたい一作。

★★★ Excellent!!!

幻想的な雰囲気から始まるこの作品は、呪われた忌み子であるイールの視点で話が進んでいきます。

彼の呪われた体質とそれを恐れなかった末姉の記憶、人を簡単に殺してしまう冷徹な男である主人公の残酷さが、とある人物を通して変化する過程、変化したあとのカタルシスが美しく描かれています。

呪いと祝福は表裏一体。
絆と呪いが紡ぐ美しい救いの物語でした。

★★ Very Good!!

不意に涙が流れるような、綺麗な出会いの話でした。

報われなさそうな人が報われる話が好きです。救われなさそうな人が救われる話が好きです。それも、積み重ねの先に目指したところにたどり着くわけというではなく、どこか唐突に現れる報いや救いの話が。

そういうわけで、とても好きな話でした。

また、書きたいこととテクニックがうまく噛み合っている印象も受けました。導入部が特にそうなんですが、単なる説明になってしまうのではなく、印象的なビジュアルとキャラ紹介と背景説明が無理なく溶け込んでいる。また、固有名詞を象徴的な単語とルビで飲み込ませるのも、読者に負担があまりかからなくて良い。宝石や色彩のモチーフがある種の王道のファンタジー感の演出としても上手く嵌っていたように思います。文字数の制約がなければもう少し最期が綺麗に「膨らんで」いたのではないかという印象はあるのですが、総じてリーダビリティが高く、満足感のある作品でした。