概要
「――ナナミ。 兄ちゃん卒業したら働くから。だから、お前は大学に行け」
恩師の訃報を受けて20年ぶりに戻った故郷の街は、潮風を受けて何もかもがゆっくりと錆びついていた。三十代になった僕は、そんな街を一人歩き回りながら何気なく思い出を振り返っていく。
一通の手紙が滞在先のホテルに届く。
そこにはボロボロで読めない古ぼけた便箋が一枚と、それとは別に真新しい紙に書かれていた20年前の『約束』が書かれていた。僕と兄、それに20年前に死んでしまった小さな友だちしか知らないその『約束』について書いたのは誰なのか、僕は自分の、そして兄の記憶をたどりながらそれに迫っていく。その過程で思い出されていく、僕と兄の過去。そして、それに交差するように絡み合っていくあの小さな友だちの思い出。――そして8月7日、20年前の『約束』に込められた、僕の知らなかった兄の想いが、目の前に姿を現す。
一通の手紙が滞在先のホテルに届く。
そこにはボロボロで読めない古ぼけた便箋が一枚と、それとは別に真新しい紙に書かれていた20年前の『約束』が書かれていた。僕と兄、それに20年前に死んでしまった小さな友だちしか知らないその『約束』について書いたのは誰なのか、僕は自分の、そして兄の記憶をたどりながらそれに迫っていく。その過程で思い出されていく、僕と兄の過去。そして、それに交差するように絡み合っていくあの小さな友だちの思い出。――そして8月7日、20年前の『約束』に込められた、僕の知らなかった兄の想いが、目の前に姿を現す。