それぞれの願いの果てに

壁で隔てられた王都とスラム。「緋色の王様」というキーワードをきっかけにして、少年少女たちの「願い」の物語が幕を開ける。
人々の願いは、大きな力の源。果たして彼らは何を願い、物語にどんな結末をもたらすのか。

この作品の良い点を挙げていけば、きりがないほどです。無駄のない構成、うまく配置された伏線、色の巧みな使い方、個性的で魅力的なキャラクター。
その中でも特にこの「緋色の王様」という物語を輝かせているのは、生き生きとしたキャラクターたちです。全員にきちんと血が通っていて、その思いや願いが交錯する様が、そのまま美しい物語となっていきます。
ダークな世界観ですが、描かれるテーマはとても美しい。物語終盤にて緋色の王様がつぶやくあるセリフが、とても象徴的で素敵でした。この作品のテーマ、そして彼の内に起こった変化を端的に示しています。

適度な描写の読みやすい文章に導かれ、どんどん先を読みたくなるのも魅力です。
読み終えてからもまたこの世界に戻ってきたくなるような、素敵な作品でした。

その他のおすすめレビュー

七海 まちさんの他のおすすめレビュー82