月を題材にした夢のような幻想小説

夏目漱石の『夢十夜』のような、幻想的な短編集です。
巧みな筆致の中、夢のような不条理さと神秘が全編を貫いています。

月という「時代や空間に関係なく、夜空を見上げればそこにあるもの」というモチーフが、この世界や人の命に関する普遍的な謎を象徴しているようで、あたたかい雰囲気の中にほんのりとした怖さも感じます。

全体を通した月の優しさに、ちょっとだけアンデルセンの「絵のない絵本」を思い出しました。
心が洗われるような、とてもすてきな作品です。

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