【第29話:依頼】
オレは冒険者ギルドの購買窓口で振り返ると、
「それで……何でお前らまでついて来てるんだ?」
3人の邪魔者にそう問いかける。
何故か剣術の練習が終わっても、デリーとゲイル、それにサブギルドマスターのドグランまでもが、冒険者ギルドの中に入ってもずっとオレたちの後をついてきていたのだ。
「ふはははっ。お前ら面白そうだからな! 何の依頼を受けるのかと思ってよぉ」
暇なのかサブギルドマスターって……。
オレはかなり呆れた顔で抗議の視線を送るのだが、豪快な性格のドグランには通じなかったようだ。
「はぁ~……オレらは、とりあえず携帯食の補充に来ただけだよ」
「なんだ~? 面白くねぇなぁ。何かついでに依頼を受けて行けよ?」
「面白い、面白くないで依頼受けねぇよ」
ドグランとそんなやり取りをしていると、そこへ後ろで黙っていたゲイルが割って話しかけてくる。
「本当に依頼を受けに来たんじゃないのか? テッドたちについて行ったら色々学ぶものがありそうだと思っていたのだけれど。依頼受けなよ? それでちょっと僕も仲間に入れて欲しいんだが?」
「そ、それなら俺も連れってくれよ! 俺だってB級冒険者だ! 絶対役に立つぞ!?」
そしてそれに便乗するデリー。
オレが二人に心底うんざりしていると、
「ふふっ。テッド、モテモテね♪」
と言って、後ろから笑いを堪えならがリシルが揶揄ってくる。
「他人事だと思って笑いやがって……そもそも依頼を受けるなら、リシルも一緒なんだぞ?」
「えぇぇ? ゲイルさんたち連れていくなら私は観光でもして待ってるわよ?」
「くっ!? そう来たか……」
オレがぐぬぬと唸りながら、どう言い返してやろうかと考えていると、待ちきれなくなったギルド職員さんに、
「あの~!! ドグランさん
そう言って何故かオレが怒られるのだった。理不尽だ……。
~
必要な数の携帯食を買ったあと、オレはある事を思いついて、リシルと二人で打ち合わせスペースで相談をしていた。
その間、デリーとゲイルの二人には、トリエンティーが飲める飲食コーナーで待っててもらっている。
ちなみにドグランはさぼっていたのがバレたようで、怖そうな女性ギルド職員に首根っこを掴まれて連れられていった。
何してるんだか……。
「それでテッド。ナイトメアの
そう。オレは一緒に依頼を受けるのではなく、二人に依頼を出す事をリシルと相談していた。
「あぁ。ナイトメアはかなり強力な魔獣だ。倒すならともかく、
とりあえずナイトメアがいるかどうかは、テグスの勘を信じるしかないので置いておくとして、いた場合には万全の態勢で臨みたい。
そう考えた時に、やはり二人で全て対応するのは中々に難しい事になるだろう事はわかっていた。
しかし、二人が一緒に依頼を受けたいと言うなら話は別だ。
中々癖の強い二人だが、A級とB級の冒険者の協力を得られるなら、そんなものいくらでも我慢するべきだと思ったのだ。
「ん~。とりあえずテグスさんとデリーさんが、絶対に喧嘩になると思うんだけど、そこのところはテッド
しかし、オレたちの事ばかり考えていて、テグスとデリーの仲が最悪なのをすっかり忘れてしまっていた……。
「うっ……そうだった。すっかり忘れてた……」
結局、とりあえずゲイルを誘い、デリーがどうしてもと言う場合は、テグスと絶対に喧嘩しない約束をして貰う事になった。
もちろん罰則付きで、正式に依頼の内容に組み込む事も忘れない。
厳しく感じるかもしれないが、まだ知り合って間もない冒険者に、口約束なんて意味はないと思った方が良いからな。
~
オレとリシルは、案外仲良さそうに話しているデリーとゲイルの元に移動すると、
「待たせて悪かったな。ちょっとリシルと相談したんだがな……」
そう言って、先の依頼の件を二人に説明していく。
「僕はもちろん受けさせて貰うよ。でも、本当にナイトメアなんているのかい?」
ゲイルは依頼を受ける事は二つ返事で引き受けてくれたのだが、それよりも本当にナイトメアがいるのかと言う所の方が心配なようだった。
「オレはいると信じているし、だからこうやって依頼の話をしている。だが、最悪見つからなかった場合でも依頼料はしっかり払うから、そこは安心してくれ」
「そうか。それならば僕も信じてみる事にしよう。面白そうだしね」
これでゲイルの方は確保できた。
さっき少し手合わせした感じだと、対人ならともかく、対魔物戦なら今のオレよりも期待できる。
A級冒険者としてはまだ下の方なのだろうが、ステータスも高そうだし、十分な実力が垣間見えた。
それに使っている剣も『対の契り』こそ出来ないらしいが、かなり良い魔法剣だったし、正直、ゲイルの協力はかなりありがたかった。
あとはデリーの方なのだが……やはりテグスとは何か因縁でもあるようで、無い頭を使って悩んでいた。
「それで、デリーはどうするんだ?」
しかし、デリーは頭をかきむしると、
「そ、その依頼受けさせてくれ! テグスにはちゃんと俺の方から謝る! それで文句ないだろ!?」
そう言って依頼を受ける事に決めたのだった。
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